土の中から掘り出される昔の家や道具。
発掘調査の「現場」では、モノが見つかった状況をさまざまな方法で記録します。
掘り込まれた穴の形、埋まった土の特徴など、「現場」でしか得られない情報を詳しく観察し、それらの情報を記録するのが「現場」の仕事です。
ひとたび土を掘り返すと、遺跡はもとの姿には戻りません。
そのため、まるで現場検証のように、発掘現場では図面や写真によって記録をとりながら遺跡をトコトン調べているのです。
竪穴住居の屋根はどんな材質でどんな形をしていたの?
このギモンに答えることは、実は難しいのです。掘り込まれた穴とは違い、屋根は年月を重ねるうちに朽ちて消えてしまうからです。
そんななか、有力な手がかりが古墳時代のとある竪穴住居跡から発見されました。
TN No.200遺跡の41号住居跡から、火災にあった屋根の一部が黒焦げになって奇跡的に発見されたのです。
表面の土を慎重に取り去ると、組み合った住居の柱に加え、茅(かや)で葺かれた屋根材まで見つかりました。
古墳時代の人びとが住んでいた竪穴住居の茅葺屋根。
その貴重な姿が「現場」に残されていました。
TN No.200遺跡の41号住居跡では、657点の遺物が見つかりました。
①の甕は、住居中央の炉に埋められていました。
また②の甕の脚台部は、住居東端の床面に立った状態で出土しました。
ここに示した遺物はカケラばかりですが、その1点1点の出土した場所、すなわち遺物の「住所」が記録されています。
こうした「現場」でしか得られない情報を記録し、その場にいない多くの人に伝わるように提示することが、「現場」のもっとも大切な仕事です。
① 土師器(はじき) 甕(かめ)
② 土師器 甕(脚台部)
③ 土師器 器台
古墳時代前期 TN No.200遺跡(町田市小山ヶ岡)