日本では、2022年12月に有人地帯での目視外飛行を指すドローンのレベル4飛行が可能になった。しかし、一人称視点と呼ばれるドローンから見る視点は、樹木や電線を切断する等の事故が報告されている。その原因の1つとして、ドローンと周囲の障害物の距離感がつかみにくいことが挙げられる。原因解決のために、操縦者が操縦しやすい視点映像として、三人称視点と呼ばれるドローンを含む周囲が見える視点が有効であることが示されている。ドローンの三人称視点を実現するために、物理的な手法を用いると安全性に問題があるため、仮想空間での三人称視点を提案する。本研究では、現実と同じ環境を仮想空間に構築し、ドローンに搭載したGPSから座標情報を取得することで、ドローンの三人称視点を仮想空間で表示するシステムを開発した。測定の結果、平均1秒の遅延が発生しており、これが三人称視点操縦にどのような影響を与えるのか、今後評価する。
現在、解体工事業就業者の高齢化が進行しており、高齢技能者の大量離職が見込まれている。このことから次世代への技術継承が早急に必要であるといわれている。そこで、実際の作業現場を再現したVR技能訓練シミュレータを活用して、熟練技能者から若手技能者に技術教育を行うことを提案する。これにより、教育における時間と場所の制約を軽減し、技術継承の短期化を目指す。本研究では床面研磨作業を研究対象とし、3Dモデルによって作業現場と研磨機を再現する。画像データから被写体の3Dモデルを立ち上げるフォトグラメトリに、動画を使用することでモデル作成の手間を削減し、実用性の向上を図った。本シミュレータの有効性について技能者にアンケートを行った結果、大まかな現場把握には有効性が認められたが、技術継承には精度上の課題があることがわかった。
国内では、2022年12月より有人地帯での目視外飛行を指すレベル4のドローン飛行が可能となり、ドローンの導入が積極的に行われている。ドローンの導入が進むことで、生理現象や急用などで人間が操作を継続できない場面が想定されるが、現状有効な対策は為されていない。ドローン操縦をリアルタイムで引き継ぐことが有効な対策であると考えられるが、交代時の安全性に課題が残っている。本研究ではこの課題を解決するために、ドローン遠隔操作時に模擬操作を用いて現操縦者と操作を同調させることで、安全に操作権限を移譲する方法を提案する。飛行時間や飛行経路の検証の結果、ドローンの操作を同調させて引き継ぐ提案手法は、直接引き継ぐ方法よりも安全面において有効であることを示した。
近年、マイクロプラスチックが社会問題化しており、その原因となる海洋ごみをAIで解決しようという取り組みがされている。しかし、それらのAIに必要となる海洋ごみの画像認識モデルと学習データは、一般的に入手することは困難である。そこで本研究では、海洋ごみの画像認識モデルを作成するための学習データを、効率的に収集するためのWebゲームの開発を提案する。具体的には、海岸の空撮画像から海洋ごみを収集することを目的とした2Dのアクションゲームを開発し、効率的に学習データを集めるとともに、ゲームを通じてユーザの海洋ごみへの関心も高めることを目的としている。ゲームプレイヤーのユーザ評価の結果、ゲームを通じて海洋ごみに対する関心を高めることはできたが、ゲームから海洋ごみの画像認識モデル作成のための、有効な学習データを得ることはできなかった。
2022年12月に、ドローンにおける有人地帯での遠隔操縦を可能とするレベル4の飛行が解禁になった。しかし、遠隔操縦での衝突や墜落の事故があり、その原因の一つとして、操縦者がドローン周辺環境を正しく認識できなかったことが挙げられる。安全な遠隔操縦を実現するには、操縦者の空間認知能力を高める必要があるが、そもそも操縦者の空間認知能力が把握できていない。そこで本研究ではドローン遠隔操縦時における操縦者の空間認知能力の数値化を目指す。NIST sUAV-STMのコースを参考に作成したテストコースを被験者に飛行させ、ActiveCubeを用いた空間認知能力の評価実験を基にドローン操縦時の空間認知能力の測定を行う計測方法を開発した。評価の結果、空間認知能力の数値化をすることができたが、被験者の空間認知能力の正しさを証明するまでには至らなかった。
近年、日本ではインフラ設備の老朽化が問題になっている。人手不足などですべての施設の点検が追いつかなくなると考えられている。これは身近でありながら設備数が多い電柱でも同じである。そのため、効率的な電柱の点検システムが求められている。この課題を解決するために、ドローンとMMS(Mobile Mapping System)と呼ばれる、車両を用いて地形等の3次元データを取得するものを組み合わせたデータ収集手法と高精細3Dモデルの活用を提案した。本研究では、ドローンを用いた効率的な飛行ルートの検証を行った。そしていくつかの飛行パターン、撮影パターンで効率と精度を評価した。その結果、電柱を画角の中心に置きながら直線的に飛行する方法が、最も効率的に詳細な3Dモデルを作成できることが判明した。
歩行者や自転車の飛び出しなどの事故はなくならない。特に乱横断と呼ばれる横断歩道外の横断や、横断歩道でも信号を無視して渡る行為は、車両の安全装置でも回避できないため課題となっている。本研究は、物理的要因に基づくベイジアンネットワークによって推定される乱横断の発生確率をリスクマップとして可視化することを提案する。また、有用性を確認するために目視調査を行った結果、今回作成したリスクマップは、要素や推定が不十分であったため有効な結果を確認することができなかった。交通量などのリアルタイム情報を追加することでリスクマップの精度を向上させることができると推測する。
国内での高齢歩行者の死亡事故件数はいまや全体と比べて半数以上となっている。そして、この背景には高齢者の心理的要因や身体的要因が深くかかわっている。本研究は、高齢歩行者の交通事故による死亡者数を減らすために、音を用いて高齢歩行者に回避行動を促し、半ば強制的に回避行動をとってもらうことを目指す。そのために、独自性のある複数の音源を候補として選び、被験者に実際の音源を用いた実験に協力してもらった。その結果、音源ごとの差はあまりなかったが、音によりユーザーの注意を大きく引けることが分かった。