熊谷 貴

現在:寄生虫学・熱帯医学分野 助教(医学部内講師)

最終学歴 :名古屋市立大学博士課程医学研究科(医学博士)

出身:北海道札幌市

専門:住血吸虫(日本、マンソン、メコン)、その他の蠕虫全般(広東住血線虫、旋尾線虫タイプX、アニサキスなどなど)

所属学会:日本寄生虫学会、日本熱帯医学会、日本生体防御学会、日本セトロジー研究会

研究者情報(research map): https://researchmap.jp/TakashiKumagai
個人Youtube(寄生虫動画):https://www.youtube.com/channel/UCNdVzfSpLX3-mV7tL6WK3YQ
個人twitter:
https://twitter.com/env_parasitol

過去のラオスでの研究内容:https://youtu.be/fQpNFNnYaaM

住血吸虫の分子生物学的研究からフィールド研究へ

共同研究募集中!

日本住血吸虫、マンソン住血吸虫を使った研究

薬剤試験ー成虫、幼虫(シストソミュラ・セルカリア)、感染貝を使ったin vitro、in vivo試験

診断開発ーDNA、抗原、感染者血清を用いた新規の診断開発

比較生物学実験ーRNAi法を用いた遺伝子ノックダウンによる機能解析

感染免疫実験ー住血吸虫感染マウスによるTh2モデルの構築と免疫学的解析

旋尾線虫を使った研究

診断開発ー幼虫、成虫を使った新規の診断法開発

感染源探索ー終宿主である鯨類への感染源となる海産魚・イカからの幼虫探索と分子系統解析

その他動物由来蠕虫を使った研究

遺伝子解析ー野生動物等から得られた寄生蠕虫の遺伝子系統解析など

その他、蠕虫を使った面白そうな研究があればサポートします。

問い合わせは、tkuma.vip@tmd.ac.jpまで

*現在の共同研究先

理化学研究所、(株)キョーリン、国立科学博物館、ラオスパスツール研究所、岩手県立博物館など


現在行っている研究

・カルパインを介した細胞外小胞コミュニケーションと産卵誘導

住血吸虫は他の吸虫とは異なり雌雄異体です。元々は雌雄同体であった吸虫から進化し、住血吸虫はオスとメスという二つの性別を獲得したことになります。そのため、他の吸虫類とは異なる生殖様式、とりわけ、雌雄のコミュニケーションを必要としていると考えています。これまで当研究室で、住血吸虫の持つ”細胞外小胞”の研究を行なってきました。細胞外小胞は多くの生物に見られる細胞間コミュニケーション分子であり、多くのタンパク質、脂質、そして核酸を他の細胞、組織、個体に伝播しています。住血吸虫においては、雌雄のペアリングと赤血球の摂取という二つのイベントが、この細胞外小胞の分泌を強く誘導することが見つかりました。また、細胞外小胞の分泌に関わる分子の一つであるカルパインを阻害したところ、細胞外小胞の分泌と産卵誘導が強く抑制されました。このことから、カルパインを介した細胞外小胞での雌雄コミュニケーションは産卵に関係があることが示唆されています。

現在、細胞外小胞の分泌や産卵誘導に関与するカルパインファミリー遺伝子発現をRNA干渉法を用いてノックダウンすることで、担当分子の同定と、それに関わる機能について調べています。

・クラシカウダ症(=旋尾線虫症)の生活環の解明、並びに新規診断法の開発

クラシカウダ症(=旋尾線虫症)はホタルイカに寄生している幼虫の経口感染によって引き起こされる皮膚爬行症や腸閉塞を指す。この幼虫によって引き起こされる事は分かっていたが、この生活環に関しては不明な点が多かった。最近我々は、国内に漂着したアカボウクジラ科の鯨類の腎臓から回収したCrassicauda giliakianaが成虫であることを示し、国内近海での分布について初めて明らかにした。アカボウクジラ科の胃内容物からホタルイカがあまり検出されないことから、現在、このクジラへの感染源となる海産生物の同定を行なっている。また、現在、クラシカウダ症の診断に用いる材料が枯渇していることから、新規診断法の開発も行なっている。

・メコン住血吸虫感染リスクマップ作成のためのLAMP法の開発

メコン住血吸虫の流行地であるラオス国において、フィールド研究として現地の住民や中間宿主貝を採取し、住血吸虫DNAを検出するLAMP法から診断を行い、流行地でのリスクマップを作成しました。特に、糞便を用いたLAMP法は、従来の糞便検査法であるKK法よりも高い感度でありました。また、中間宿主貝の感染をマスでの簡易DNAを抽出を利用したLAMP法により、短時間での貝の陽性率の測定を行うことができています。今後は、感染がどのような環境要因で変化するかについてを調べるツールとして役立てていく方針です。

メコン住血吸虫の中間宿主貝Neotricular aperta

メコン川での中間宿主貝採取風景