以下のようなことに興味を持って研究しています。現在はカイメン動物の発生生物学を対象としていますが、生物種やアプローチ、手法にとらわれず、生命進化の謎や生物そのものの自然誌などに幅広く挑んでいきたいと考えています。
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興味1:生物の進化予測
地球上には過去数億年の進化によって、数百万種もの生物が存在しています。それらは実に多様な表現型(形態や代謝様式など)を示し、これらには、生息環境や食物、種間/種内競争などの外的要因や遺伝的浮動の効果などが大きく関わっています。一方、そうした表現型はランダムだったり、または完璧に効率的(と思われる)であるわけではなく、系統ごとにある程度決まっていて、分類群の階層によった普遍性も持ち合わせています。そして、6本脚の昆虫から8本脚の生物が現れたり、神話や漫画に登場するようなキメラ生物が現れないように、このような普遍性は生物の進化における何らかの縛りや方向性の存在を示唆しているように思われます。これらの原因を個体の発生システムやその進化によって説明しようとする分野は進化発生生物学と呼ばれています。しかし、表現型の多様性や普遍性を生み出す仕組みにはまだまだ未解明な点が多く、それらを統合して理解し、複雑な生物における進化を予測するといったことはできていません。私は、特に動物など複雑な生物の形態に着目し、発生過程という内的要因と環境や種間/種内関係といった外的要因、さらに遺伝的浮動などが、どの程度、どのように相互作用することによって普遍性を保ちつつ多様な表現型が進化してきたのかを明らかにすること、また、形態進化を予測することに興味があります。さらに、それらを、過去にいた生物を予測し進化の道筋をより詳細に推測することや、系外惑星における生命の探索・生命進化の可能性の議論に応用することを考えています。
興味2:多細胞性の獲得と、形態形成機構の初期進化
地球上の生物では、単細胞性の生物から多細胞性をもつ生物(生活環の一部に多細胞性をもつものを含める)が数10回も独立に進化したとされています。その中で胚発生を経て複雑な形態をつくり、爆発的に進化した系統は動物や植物など数系統に限られます。特に後生動物(動物)においてどのように多細胞性が獲得されたのかについては、動物に近縁な単細胞生物を用いた研究が近年急速に進みつつあります。しかし、動物の中で最初期に現れ、神経や筋肉を持たないカイメン動物ではまだ未知のことが多く、多細胞性の獲得、胚発生システムの獲得、ボディプランの進化などには未解明な部分が多く残されています。
また、動物以外の単細胞生物も環境条件では多細胞性を獲得することや、その分子的仕組みが明らかにされてきています。しかし、多細胞性獲得には、系統によらない一定の内的/外的条件があるのかや、多細胞性を維持する機構には共通性があるのか、さらに、動物や植物で見られるような、ある程度限られた形態パターンやその形成機構がいかにして現れ、存在し続けているのかについてもまだまだ未解明です。
私はこれらの興味のもと、現在、カイメン動物という、多細胞の進化の最初期に分岐した分類群を用いて、多様性と普遍性を生み出す仕組みや、その起源・初期進化の解明に取り組んでいます。
現在進行中の研究1:カイメン動物の骨片骨格形成機構に関する研究
多くのカイメン動物は、骨片と呼ばれる、ケイ酸塩または炭酸カルシウムからできた微小な物質を多数使って立体的な骨格を形成しています。私は、ケイ酸塩性骨片を持つカワカイメンを対象に、体内の多数の細胞と骨片がどのように相互作用することで、骨格が拡張されていくのかを明らかにしようとしています。
現在進行中の研究2:動物が共通してもつボディプランの初期進化に関する研究
多細胞動物の最も基本的な形態的特徴ーボディプランーは、外胚葉(表皮)、内胚葉(消化管など)、中胚葉(筋肉など)からなる体の多層構造です(胚葉性)。ヒトを含む左右対称動物は外胚葉、内胚葉、中胚葉を全て持っている一方、より進化的に古い刺胞動物は一部の分類群を除いて外胚葉と内胚葉しか持っていないことから、3胚葉性は進化上、一部の刺胞動物以降で獲得されたと考えられています。しかし、動物進化の最初期に分岐したカイメン動物での知見が乏しく、動物の起源的なボディプランや胚葉性の初期進化はまだまだ未解明です。私は、カイメン動物におけるボディプランをその細胞分子レベルでの形成メカニズムを含めて再考し、それを他の動物との比較することで、この謎に迫ろうとしています。
詳しくはこちら。
興味3:カイメンの生物学
カイメン動物は、動物の中で最初期に分岐した動物門であり、動物の初期進化や多細胞性獲得の仕組みを理解する上で重要な分類群です。また、成体でも幹細胞を維持し、極めて高い再生能力を持つことから幹細胞システムや再生研究のモデルとしても有用です。骨片を用いた興味深い骨格形成を行う点でも着目されています。さらに、カイメンは他の様々な生物と共生関係や、生物ポンプとしての役割など生態学的側面からも研究が進んでいます、近年では、環境DNAの回収源や有用物質の抽出源としても着目されています。このようにカイメンは古くから、様々な分野で興味を持たれ研究されてきました。しかし、その分子生物学的理解は他の分類門に比べて遅れています。特に発生生物学や分子生物学の研究グループは国内外でも数少ないのが現状です。
私は、カイメンの分子生物学的理解を推し進めると共に、国内におけるカイメン研究全体の発展に寄与したいと考えています。
現在進行中の研究3:カイメンにおける分子遺伝学的手法の開発
カイメンにおける分子遺伝学的手法の開発を行っています。
また、このページでカイメン動物に関する論文や書籍を紹介しています。興味がある方はぜひ見てください。
興味4:科学や研究への理解に向けて
私たちの日々の生活は、飲み水やスマホから医療まで科学の発展の上に成り立っているといっても過言ではありません。裏を返せば、科学研究の方向性は我々の生活や生存に直結しうる問題でもあります。しかし、研究という営みそのものや、研究者という職業、研究環境の諸課題、研究の重要性/面白さなどについては必ずしも、その姿が正確に伝わり、多くの人々の理解を得られているとは思えません。それは研究者の堅いイメージや、学術政策に対する関心が一部に留まっていることにも現れていると思います。
また、学部生や大学院生が、どのような研究領域があるのかを知ることや興味の近い人と交流することは、研究への関心を持つ上で重要であると考えられます。大学生や若手研究者同士の交流などを目的とした若手の会が様々な領域に存在しますが、どのような若手の会があるのか知ることは、特に周辺に興味が近い人がいない場合には容易ではないのが現状です。
私は、科学や研究に関する理解・関心が少しでも高くなるような活動が出来ればと思っています。また、大学や周辺の環境によらず、全ての大学生が興味のある分野や人と繋がる機会をもてるようにできればと思っています。
現在行っている活動
・京都大学総合博物館 子ども博物館 講師
(子ども博物館は、京都大学総合博物館が実施している、大学院生が研究分野に関連した子ども向けの出し物を行う対話型解説イベントです。)
・Evo-Devoの集い 立ち上げ・運営
・発生生物若手の会 運営
・YoungBioNet 立ち上げ・運営