イサダ

(ツノナシオキアミ)

【イサダとイサダ漁について】

イサダ(ツノナシオキアミ)は北太平洋に生息するオキアミで、体長2cmほどの比較的小さなオキアミで、植物プランクトンを食べて育ちます。小魚をはじめとする、多くの海洋生物はオキアミを餌として育っており、イサダは北太平洋の生態系を支える生物です 世界中の海にオキアミが生息していますが、数万トン規模でのオキアミ漁場が形成される海域は世界に数カ所しか見つかっていません。春にイサダの大集団が形成される岩手県沖から茨城県沖にかけての海域は、世界的に貴重なオキアミ漁場の1つであり、1970代からイサダ漁が行われてきました。水揚げされたイサダは、養殖魚の餌や釣り餌として利用されてきました。あまり知名度のないイサダですが、実は古くから日本の漁業や養殖業を支えてきた生物です。 しかしながら、養殖業とレジャー産業の変化のため、餌としてのイサダの需要は減少の一途を辿っています。東日本大震災後は、中国産オキアミに養殖餌のシェアを奪われた状況が続いています。

【イサダの食品利用について】

イサダは室温では傷むのが早く、-20℃保存でも長期保存では黒変してしまう素材のために、流通が難しく地元でのみ食べられる食材でした。しかしながら、2010年頃から岩手県と宮城県で、食用の乾燥イサダ製造が始まったことで、乾燥エビの代替品やふりかけの具として全国的に流通するようになりました。最近は、首都圏のスーパーでもパック詰めされたイサダが並んでいるのを見かけます。スナックや煎餅に乾燥イサダを加えた商品も開発されました。製造開始当初の乾燥イサダ出荷量は多くありませんでしたが、需要は年々増加しています。香ばしく美味しい食材で、お好み焼きや焼きそば、ラーメンなどのトッピングとして大活躍しますので、お近くのお店で見つけたらぜひ手に取ってみてください。

【イサダオイル】

イサダには、2-4%の割合でオイルが含有されています。イサダオイルには、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アスタキサンチン、8-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(8-HEPE)、アルキルリン脂質が含有されています。EPA・DHAは青魚のサラサラ成分としてよく目にする機能性成分で、脂肪燃焼促進作用、脂質合成抑制作用、抗炎症作用を有する成分です。DHAは脳に必須の成分であり、DHA欠乏が脳機能の低下に関連することが知られています。イサダオイルに含まれるEPA・DHAの大部分はリン脂質型のEPA・DHAで、トリアシルグリセロール型のEPA・DHAと比較して、吸収性に優れることが知られています。アスタキサンチンは、光酸化を効果的に抑制する色素成分です。8-HEPEは、脂肪燃焼促進作用、動脈硬化抑制作用、LDLコレステロール低下とHDLコレステロール増加作用を有した成分です。アルキルリン脂質は、細胞膜を酸化から保護するプラズマローゲンの前駆体です。プラズマローゲンは加齢に伴って減少する脂質成分で、プラズマローゲン減少と脳機能障害との関連性が報告されています。

【イサダオイル素材開発】

機能性脂質成分を豊富に含むイサダオイルを機能性食品やサプリメントの素材として活用することで、イサダの新規需要創出につながると考え、複数の企業と共同で開発に取り組んできました。8-HEPEを含有するイサダの精製オイルが、健康食品素材を取り扱っている2社から製品化され、消費者向けのサプリメントも販売されています。また、イサダの全利用を目指して開発した、遠心分離によるイサダオイル粉末素材製造技術は、岩手県大船渡市の企業で実用化され新工場が大船渡市に完成しています。イサダオイル粉末素材は、2022年から一般向けに販売予定です。

【イサダミール、イサダエキスの活用】

イサダ全利用プロジェクトにおいて開発した、イサダミール(主に蛋白質とキチン質で構成)とイサダエキス(イサダをタンパク質分解酵素で処理した液分)の活用方法についても検討を進めています。イサダミールは動物性蛋白源として、ヒトも活用可能な素材です。イサダエキスは、調味液や調味料として活用可能な素材です。共同研究や共同開発に興味のある研究者や企業の方がいらっしゃいましたら、是非ご連絡ください。

快適な睡眠と記憶力をサポートするイサダオイル粉末素材の開発