〈聖教新聞 ヒューマン〉 「いわい生花」代表 岩井正明さん 2023年10月19日
七色のかすみ草――
視点を変えれば
脇役も主役に。
〈白いかすみ草をレインボーカラー(七色)にした「ロマンチックかすみ草」というヒット商品がある。これを開発したのが栃木県で生花店を営む岩井正明さん。
経営危機を乗り越え、現在、年間 56万本のかすみ草を販売する〉
――開発のきっかけは?
ある日、かすみ草農家の方が農家を辞めたいと言いに来ました。いわく、かすみ草は花束でも脇役になることが多いので、市場でもなかなか買い手がつかず、廃棄されるケースが多いとのこと。なんとか力になりたいと、私の店に全て仕入れることにしました。
しかし、きれいだねと言っても買う人は少ない。お客さんの立場に立って、花を買う時の気持ちを考えた時に、選ぶ楽しさがあることに気付きました。本来、白しかないものに他の色を付けたらどうかと思って挑戦しました。
――たくさんの色がありますね。
これが本当に大変だったんですよ。色を付けようと色水を吸わせても、発色が弱い上に、真水に戻すとすぐに色が抜けてしまう。そんな時、服の色が落ちないことに注目し、さまざま工夫をしてみました。
企業秘密なので詳しくはお話しできませんが、4年かかって特殊技術を開発し発色が良く、花自体も、より長持ちするものが出来上がったんです。同じ色でも季節によって濃淡を調整して、108色まで出せるようになりました。
――SNSでも話題になっています。
主役級の花として、ネットでの注文も多くなりました。でも、実際には買いに来てくれる人の方が多いんですよ。花は、直接手に取って色や香りを感じるのが一番です。そうして、お客さんが笑顔になってくれるのを見るのが、私も好きなんです。
――花のもつ不思議な力ですね。
花があるところには、必ず笑顔があると思います。花を見て怒る人はいない。花を届けるとどんな人でもありがとうと笑顔になります。朽ちていく様子を見れば愛おしく感じるし、花も人間の感情に合わせるように咲いては散っていく。花を見る時の感情と笑顔は、言葉は通じなくても世界共通だと思うんです。
口下手であれば、花に思いを託して贈ることもできるでしょう。一人でも多くの人に花を届けて、世界中に笑顔を広げていきたいと思います。(姫)
〈プロフィル〉 1969年、栃木県生まれ。“街の花屋”として地元に根差す「いわい生花」の2代目。
商品の質と鮮度にこだわり、廃棄率約30%といわれる生花業界において、0.2%という驚異のロス削減も実現している。
〈MEMO〉 花の魅力を地元・鹿沼市から発信したいと話す岩井さん。来年、市内に、フラワーショップやカフェ、マルシェ、ガーデニングなどの機能をもつ複合施設「いわい・フラワービレッジ」を開園させる予定だ。花と共に、多くの人がにぎわう場所になるだろう。