四度目のイギリス (2) 実践編-1: Lake district~Oxford
Manchester へは Amsterdam, Schipol 経由で到着.ついたのは午後6時頃だが,summer time であるうえ,緯度の高いイギリスの夏は薄明るい.車を借りるのにも,カウンターのおばさんは一人しかいないし,のんびりしているし,だいぶ待たされてようやくMondeoのハッチバックを借りた.地図はRACの全国版と,Windermere のホテルが送ってくれたものがある.車に乗り込んで,地図を家内に渡してナビゲートしてもらい,空港を出た.ところが空港を出たところでGreater Manchesterの外環道路からWindermereと逆の方向に出てしまい,さっそくround aboutのお世話になった.Mr.Beanのようにround about を一周して元来たルートを戻り,Bowness-on-Windermereへ.途中でドライブインに入り,軽い夕食を済ませた.宿へ着いたのはManchesterを出てから1時間半ほど経ってからだった.とにかく安堵.宿にチェックインして寝るので手いっぱいであった.
翌日,朝食はホテル自慢のダイニングでお食事.イギリスの朝食はとにかく豪勢.卵とハム,三角でカリッと焼いたトースト,black pudding,sausage,などなど.まず,席につくと飲み物(tea or coffee)と卵の調理の好み,パンの種類(white or wheat)を聞かれる.一通り注文すると,ヨーグルト,フルーツ,シリアルの好きなものを取りに行き,その間に件の品々が乗った大皿が運ばれてくる.何といっても絶品だったのは sausage だった.スパイシーで太目の,いわゆる腸詰めで,家内もこの味はかなり気に入っていた.ただ,black puddingだけは受け付けなかったようだ.
とにかくまずは南北に長い湖を一周してみようということになり,宿から出発して小雨の降る中,湖の東沿いに車を走らせた.途中,船着き場のあるAmbleside, Keswick といった小さな町に車を留めながら,車を降りて歩き,イギリスの地方小都市の風情を楽しんだ.西沿いに車を走らせて南下させていくと,Peter Rabbit の著者である Beatrix Potter の住んだ Hawkshead の町に着いた.この町にはまた改めて訪れることになる.
渓谷に水がたたえられた形の湖だけに,南北には非常に長く東西は短い,まるで川のような湖である.それだけに対岸が見えていながら渡れないのがもどかしく思えるのだが,それは洋の東西を問わないようだ.水深が深くて架橋が難しいのか,近代的な橋を掛けるのに reluctant なのか,湖の南端近くで艀が湖を横切るように渡る仕掛けがある.湖を一周して,あとは対岸に回ればあがり,というところで艀の待ち行列に並ぶ羽目になった.ウンともスンとも動かない.皆車を降りて歩き回っている.地図を詳細に見ると,細いながらも湖岸に道があり,それを辿ると別の橋に行くではないか.その道の入り口とおぼしき所から時々車が出入りする.そこで,家内に地図を見てもらってそのの道へ入った.うまく抜ければ湖の北側の橋へ抜けられるはず…と思ったら,途中から極めてnatural(!?)なデコボコ道に変化した.とてもふつうの車が 10 km/h や 20 km/h で走れるような道ではない.車の腹を打たないように注意して走ると,人が歩いているのと同じくらいの速度になる.冷や汗をだらだらかきながら,途中,修学旅行の学生とすれ違い,ガンバレーと言われながら,10分か15分か,そろりそろりと走り続け,ようやく平らな道に抜けた.それでもまだ安心できない.道幅が異常に狭いのである.車一台がやっと.対向車が来たらどこかまで戻ってすれ違わなければならない.しかも,イギリス人の運転する車のスピードは非常に速い.小さなアップダウンがあり,垣根と林で見通しは効かず,左右に曲がりくねった道を2~3台の車が連なって,日本では考えられないハイスピードで走る.リチャード・バーンズやコリン・マクレーなど,イギリス人ドライバーがラリー競技で速いわけがわかる.まだ冷や汗が引く間もなく,さらに北へ進んだ.結局,問題なく湖の対岸へ回る道にたどり着き,何とか宿まで帰った.
ところが,宿に戻るとどうも車が傾いているような気がしてならない.空気が抜けたのか?ガソリンスタンドで空気を補充しようとしたが,空気圧計のリミットに当たって注入が止まる.つまり空気は十分に入っているということになる.しかし,異国の地で事故では新婚旅行もへったくれも無くなってしまうので,RAC のサービスを呼んで見てもらった.RAC のお兄さんは電話から 30 分程で,真っ赤なピカピカのロードサービス車に黄色の回転灯を回して来てくれて,車の前輪をなで回したり,ハンドルを左右いっぱいに切ったりさせながら様子を見てくれた.特にパンクの様子もないねぇ,空気圧見てみる?と言いながら,シリンダー式の旧式な空気圧計を出してきて,四輪の空気圧を計った.そしたら,右の前輪だけ空気圧が低い.たぶん,件のデコボコ道を走っている間にタイヤがぐっと押し込まれて,少し抜けたのだろうと言う.ガソリンスタンドで補充しようとしたんだけど,という話をしたら,あんなイージーな機械の気圧計なんかいい加減だから信用しちゃダメ,と一笑に付された.結局,彼曰く "High-tech" 装置の足踏み式ポンプで空気を補充して帰った.所定のサービス料(約6,000円)は取られたが,結局,その後は全く問題なかったし,安心料としては安いものだった.私も日本で同型の足踏みポンプを持っていたので思わず苦笑したが,その思い出が忘れられず,今でもその足踏みポンプと手動の気圧計のペアを愛用している.
2日目にいよいよ Beatrix Potter の家を訪ねることになる.今度は湖の南端から艀で対岸に車ごと渡り,2台がすれ違うのがやっとという道を経て目的地に到着.ただ,例によってへそ曲がりの私は,車を留めてpublic foot path を散策して,Beatrix Potter の家に戻ってこよう,という案を提案した.せっかくこんな風光明媚なところに来ていて,天気もいいのに建物の中でうろうろするなんてもったいない,という私の意見を通し,丘の反対側まで歩いて回り,いよいよpublic foot path に入った.一応,入り口の表示と「こっち」という指示は出ているのだが,付近のfoot path の地図も手に入れていた.順調なら 30-40 分くらいで出られるはずだった.ところが,数日来降っていた雨がたまっていたのか,途中から道に小川のように水が流れて下ってくる.水をよけるとそこはグチャグチャの土で靴がズブッと入ってしまう.ううむ,foot path 要注意だ.しかも,私も家内もそれほどトレッキング対策の装備をしていなかった.この辺でごたごたしている間に時間が経ってしまい,結局元の道を戻る羽目になった.家内は National Trust のショップで Beatrix Potter グッズを買って何とか機嫌が直った.
3日目は家内の待望の湖のクルージングをした.まぁ,風に吹かれながらぼんやりと湖を眺めていると言うのも乙なものである.船に乗っている間だけは車の運転から開放されるので,結果として私が一番好きな,ボーっとできる時間を得ることができた.家内は逆に陸ではボーっとするのを許してくれないので,ボーっとしたい時は船に乗るというのは一案かもしれない.
4日目にいよいよ Manchester を経て Birmingham (Stoke on Trent) を目指すことになった.夕方までには Oxford に着きたかったので,Stoke on Trent で昼を取ることにして Windermereを午前中に出発した.ところが,Manchester の手前あたりからものすごい土砂降りの雨が降り出して,ワイパーがまるで効かない.左右の車を見てもスピードを落とす気配はない.前の車はジャガーだし,ぶつけるのはいやだし,ぶつけられるのもいやだし,とにかくおそるおそる,しかし驚くべきスピードで走った.豪雨の時間は結構長く続いた.イギリスは山脈がないから海の天候がそのままやってくる.ともあれ,何とか雨は脱し,Birmingham を通る頃には空は晴れていた.
Stoke on Trent は洋食器の Wedgewood の本拠地である.食器好きの家内にとっては聖地のような場所であり,付近を通るのに外すわけには行かない場所らしい.私も工場見学は好きなので,つきあうことにした.Motorway を下りた所から工場の方向を示す矢印が立っている.周りはすでに田舎道然としていて,芝生がきれいだった.工場の敷地はゲートから建物までがはるか遠くで,最初は延々と並木道を走り,ここに車を停めていいのかなぁ,という所が結局ゲスト用の駐車場だった.工場を見て,博物館を見て,工場直結のショップで買い物をして,遅めのお昼を食べた.
Wedgewood の工場で面白かったのは,ハンドペインティングのデモで,細かい釉薬の塗装作業をするのに,腰のない太めのダボダボの筆を使っていたことである.私も以前飛行機の模型をさんざん作ったクチなので,筆を使った塗装の経験は結構豊富である.細かい作業の時には少し腰のある細い筆を使っていた.ただ,細い筆は塗料をあまり含まない.つまり,薄く塗るのには良いが,釉薬のように厚く塗るのには適していないのだろう.しかも,腰のある筆を使うと,筆が塗料を掃いてしまう.食器の場合,釉薬が薄くなってかすれが出たりすると商品価値が下がるので,腰のない太めの筆を,ダボダボと揺らしながら描くのだろう.これはなかなか意外だった.
Oxford の宿は英国的旅行指向のために決めていなかったから,夕方4時~5時ころにOxford について B&B を回ることにしていた.ところが,到着したらすでにほとんどの宿が一杯で,一カ所だけ空室があったところは最上階のスイートルームだけだった.それでもいいから泊めてくれ,という気分になり,部屋を見せてもらったら,B&B だからそれほどゴージャスであるわけでもなく,値段も程々だった.ただ,ベッドは四隅に柱が立っていてカーテンが恭しく下がっているような,ちょっとゴージャスな雰囲気を漂わせた作りだった.窓のカーテンは電動.階段をちょっと下がると,非常に広いバスルームがあり,8畳くらいのだだっ広いタイル敷きの部屋の隅にシャワーを浴びるガラスの扉の箱があり,便器とビデとが恭しく並んでおいてあって,一番壁際にバスタブがあった.いずれもが,きちんと並んでいたのが印象的だった.
ともあれ,ここで3泊して Oxford の町と Cotswalds を回ることになった.
(part4-3 へつづく)