3) 痛みの受容に関わる温度センサーの種間多様性
3) 痛みの受容に関わる温度センサーの種間多様性
唐辛子の辛み成分「カプサイシン」に対するTRPV1の感受性は動物種によって異なる
TRPV1のような高温の受容に関わる温度センサー分子が活性化されると「熱い」と感じるのに加えて、「痛み」も感じられます。私達ヒトが唐辛子を食べた時に灼熱感や痛みを感じるのは、唐辛子に含まれるカプサイシンがTRPV1に結合し、活性化させるためです。ところが、カプサイシンのTRPV1に対する作用は動物種によって違いがあります。カプサイシンはヒト、マウス、イヌなどのTRPV1を強く活性化させますが、一方で、ウサギ、ニワトリ、ネッタイツメガエル、ゼブラフィッシュのTRPV1をほとんど活性化させません(または、ごく弱く活性化させる)。そのため、例えば、ニワトリは唐辛子を食べても刺激を感じていないと考えられます。
このようなTRPV1のカプサイシンに対する感受性の違いは2か所のアミノ酸が動物種間で異なるために生じていることが分かっています(図の赤い矢印のアミノ酸)。これらのアミノ酸はTRPV1とカプサイシンが結合する際に相互作用することが報告されています。