2019年夏合宿

2019年聖学院高校美術部・ハイワイ部合同古美術研修(夏合宿)8月21日~23日

 古美術研修をテーマに、京都を起点として京都・大阪・奈良の3つの街を訪れた。京都は平安京、奈良は平城京として古い歴史があり、仏教の文化が現代にも息づく昔ながらの風景が広がる。一方で大阪は西の都として繁栄を続け、東京に並ぶ巨大都市へと進化を続けている。それぞれの街の繁栄の形を見比べることができた実りある研修であった。

 1.8月21日(水)京都(三十三間堂・清水寺・二条城)

 京都について最初に三十三間堂を拝観。千手観音の1000体並ぶ光景にまず圧倒される。建物内は蒸し風呂のように暑かったが、近代の産業にはあらわせない日本人の技に見とれた。

 「人が本気で心に込めたものが数百年前から今に伝わっている、そんな気がしました。千躰もの千手観音が並ぶ光景は他では見られない神秘的なものでした。今の創作物が”動”を意識してつくられることが多いのに対して、”静”の姿勢にもかかわらず今にも動き出しそうな迫力を持ち、作者の執念を感じました。」(高Ⅰ)

 清水寺は外装工事中のため、本来の優美な姿は見ることができなかったが、京都市内の美しい風景を一望することができた。

 一行は大政奉還で有名な二条城へ市バスを使って向かった。2年前の合宿では台風のため臨時閉場していたため見ることができなかったので、今回は久々の入場であった。とにかく敷地内の大きさに驚いた。想定外に見学に時間を要したが、襖絵の美しい金箔の輝き、松が美しく彩られた庭には感動した。

 天気予報は外れて1日天気が良く、暑かった。長ズボンのジーパンが汗でむれてしまい、気持ち悪かった。夕食はそれぞれ京都市内でとることにした。私を含めて数名のグループは四条堀川にある「元気や」で250円弁当を購入し、宿へ戻った。宿はケイズハウス京都というゲストハウスで、外国人がよく泊まる場所である。急に英語で話しかけられて驚いている生徒もいれば、気さくにコミュニケーションをとっている生徒もいて良い経験値になったかと思う。

 2.8月22日(木)大阪(万博記念公園・EXPO70・国立民族学博物館・新世界・通天閣・道頓堀)

 大阪は2025年に万博開催が予定されている。1970年に万博があり、日本の高度経済成長時に大きな原動力になったわけだが、2020年の東京オリンピックをステップにさらにどのように日本が変容していくのであろうか。それはさておき、万博跡地は現在公園になっていて、岡本太郎作の太陽の塔が我々一行を出迎えてくれた。寺で見てきた仏像とは違い、存在感は異様であった。

「資料館内の様々な展示やアートから、当時の人たちが未来を思い描き、生きていたのがわかりました。」(高Ⅰ)

 万博記念公園には、EXPO70(万博記念資料館)、国立民族学博物館があり、それぞれに時間をとって歴史や文化に触れた。博物館については1~2時間程度では見きれないくらい物品が多く規模がすごかった。世界の様々な文化や様式に触れられるよい場所だった。

「箱型祭壇、という人形がたくさん箱の中にいるものがあり、興味をそそられた。」(高Ⅰ)

 万博公園を後にし、いよいよ大阪の街のひとつ「新世界」へ。通天閣を中心に昭和な街並みが広がっていた。当然のことながらそこでの昼食は串カツやたこ焼きを選択。大阪の代表的な味もかみしめた。

 通天閣は大変多くの外国人の観光客が列を作っていた。待ち時間にはガチャガチャやビリケンの賽銭箱が置いてあったりと様々な工夫がされており、お金をさらに使ってしまうような誘惑仕掛けになっていた。さすが大阪であった。

 一日の最後に道頓堀を訪れた。そこには西の画材店大手「笹部画材店」がありちょっと寄り道。生徒も私も活き活きしていた。カニ道楽のある通りを人をかき分けながら進むと、有名なグリコの看板の前に出る。記念撮影する人が群れていた。我々も同じ流れにのった。

「初めてのハイワイ部の合宿は中学3年~高Ⅰにあがる春休みの京都合宿でした。部員は僕とH君だけでした。この部活はただ旅行をしているだけではなく、色々な場所に行って土地の文化に触れて新しい考えを深める部活です。ハイワイ部は聖学院の中でも古い部活でもあるのに今は4人しかいません。少しでも興味があれば入部してください!」(高Ⅱハイワイ部部長)

3.8月23日(金)奈良(興福寺・東大寺)・京都(東寺)

 奈良と言えば東大寺の大仏だが、興福寺の阿修羅も有名。阿修羅像の物悲しくも見える顔の表情に自分の心を重ね合わせてしまう。奈良公園の鹿とも戯れた。途中、バケツをひっくり返したような雨にも見舞われたが、東大寺につくころには雨が止んだ。東大寺の大仏は圧巻だった。そして寺の大きさに驚く。疫病や飢饉、飢餓などがあり、それを払拭するために祈りを込めて建立したとあるが、一方で財政破たんしてしまったという言い伝えもあり、複雑な心境で奈良の大仏を見上げた。

 一行は奈良で半日を過ごし、近鉄奈良線を使って京都へ戻り、東寺を見学した。東寺の立体曼荼羅はとてもすばらしい造形美と空間演出だった。

「今回の合宿で一番思い出深かったのは、仏像です。特に印象に残ったのは東大寺、東寺です。何体も並んでいて、どれも独特の個性を持っているものの、全体でみると統一感がありました。統一感の中に独特の個性を持たせることで見飽きることがありません。こういう見せ方もあるのだと感動しました。」(高Ⅱ)

「国の安定のために人々が力を合わせて大仏や寺社を作った当時の人々の団結力の高さに驚かされました。今の時代は自分がよければいいという考え方が多い気がします。いつからこのように時代が変わってしまったのか昔の人が今を見たらどのように感じるのか疑問に思いました。」(高Ⅱ)

「寺や仏像などの文化財を見る期会があまりなかったので、今回の京都・奈良の寺巡りはとても面白かった。仏像の衣服の彫り方や顔の表情の描写が繊細で驚きました。寺や大仏を撮る構図や色彩設定を考えながらとったので、写真を撮る勉強にもなりました。バラモン教やヒンドゥー教の宗教の事も勉強できたので、世界史的な見方もできて楽しかった。」(高Ⅱ)

「今回で3回目の参加になるハイワイ合宿。第1回は京都、第2回は沖縄、第3回は京都、大阪、奈良となった。今までの中で最も行動範囲が広かったため、色々な食べ物を食べたり、建築物、展示見ることができた。その場所によってそれぞれが文化の特徴をもっていることに気づくことができた。人々がいままで受け継いできた伝統を私たちが後世に残していく事がどれだけたいせつなのかを考えさせられた。」(高Ⅱ)

It was an honor to be a part of the Art / Hi-Y collaboration club trip to Kyoto, Osaka, and Nara. It was my first time to visit Kyoto and Nara. I realized that there are many more places, so I am looking forward to going again. I would say that the highlight of the trip for me was going to NIJO-JO. I really like history and so this was of high interest to me. Anyone visiting could possibly spend a whole day at this location. There is so much to see and learn about that time in history in Japan. I am also very interested in Japanese carpentry so one very impressive feature for me was that the corridor floor is constructed in such a way that it produces a "Nightingale" sound as a person walks.

The second point of high interest for me was the ethnology museum in Osaka. Having lived in Africa and hearing drums being used there brought back many memories as I walked through the Africa section. Once again, for me, there was not enough time to really invest my time in each display.

Thank you for the opportunity to see and learn more about various world heritage sites in Japan.

(ハイワイ部顧問)

 高校美術部・ハイワイ部の合同合宿は7年ぶりだった。お互いに社会を見てゆく観点が似ているということから、ハイワイ部前任の田中定仁先生とともに研修をしたのがきっかけであった。この研修を通して生徒が社会や文化の中で生きる知恵やヒントを見つけ出してくれることを期待している。(高校美術部顧問・ハイワイ部顧問)