Ⅲ.白色塗料を塗る
地塗りについて
絵具を使って絵を描く場合、その土台となる支持体の表面の性質に大きく左右される。最も、絵具は水性、油性と様々だが、油性の地に水性の絵具を重ねることは困難である。しかしその逆は可能で、重ねやすくなじみが良い。このキャンバスの実習においては、油絵具の特性を活かせる地にするため、水性の地塗りを行う。油絵具は描画する表面の吸収性や凹凸に影響されやすく、多くの画家はその地を工夫している。接着力に優れていて、柔軟性に富む絵具であるが、極めて平滑で吸収性の無い地に塗り重ねることは難しい。油絵具が画面に固着するためには、油絵具に含まれる油分が程よく地に吸収され、そのまま固まることが理想的である。逆に前述した地に塗った場合には、油絵具が固まった後、はがれてしまう危険性が高くなる。保存状態や塗り重ねる表現にこだわるならば、歯車と歯車がかみ合うように、絵具と地がきれいに連結することが大切である。
この実習で行う白色地塗り用の塗料は、吸収性の良い地となる。また、主成分は以下の通りである。
膠水 1容量(800CC)
重質炭酸カルシウム 1容量(800CC)
チタニウムホワイト顔料 1容量(800CC)
水 1容量(800CC)
*100号サイズ2枚程度を塗れる。
現在市販で手に入るキャンバスは、上記のように、動物性の膠水を成分とするものはほとんど存在しない。なぜならば、膠が腐ってしまったり、品質の安定性、柔軟性に欠けたりするからである。そのため、市販の画布は、合成樹脂を主成分としている。また、販売する関係上、ロールとして巻いてしまうため、高い柔軟性を要し、合成樹脂の成分を強くしている。その分だけ絵具の吸収性は低くなる。この実習で扱う地塗り塗料は、吸収性が高く、固まると硬い性質の地になる。そのため一度塗ってしまった麻布は、はがしてロール状に巻くことはできないが、作品としてそのまま保存してしまう分には特に問題ない。油絵具を多く重ね塗りしたり、ペインティングオイルを多く使用したりする場合には吸収性に富む地が適している。また、絵具を重ねれば重ねるほど、安定性が増し、絵具の乾燥するスピードも速く、翌日かその日のうちに安定する。表現に用いる描画材料、描くペースなどに合わせて、地を選ぶことを勧める。
2. 塗料の調合
で用意した材料を用いる。大きめのバットに膠水を先に入れ、そこに粉を振り入れる。それをヘラなどでゆっくりとかき混ぜ、粉のかたまりが無くなるようにする。膠を事前に塗っておいたキャンバスの4つ角ではみ出した麻布は、内側に折り込んできれいにする。ガンタッカーの針で固定する。
3. 塗料を塗る
白色塗料を塗るときには、一列ずつ同じ作法で均一に塗る。1層目で麻布の目にくい込ませるように塗り、できるだけピンホール(塗料が塗られていない小さな穴)をつぶす。このとき、刷毛を立てるように持ち、毛先で塗料を刷り込む意識で塗る。3層程度塗る。あまり多く塗りすぎると、ヒビが入る危険性がある。麻布の目を無くし、平滑な地を求めるならば、この塗料は向かない。キャンバスは伸び縮みしたり、動いたりすることを前提につくられているためである。厚塗りをする場合には、油分を加え、柔軟性を持たせた塗料にする必要がある。(乳濁液地。その方法はここでは記述しない。)
4.乾燥
水平にしたまま完全に乾くまで待つ。
ここまでで約2時間程度要した。3日目終了。