透析中の合併症とその対策
透析治療は、腎臓の働きを代行する重要な治療法ですが、長期間にわたる治療のため、いくつかの合併症が起こりやすくなることがあります。しかし、それぞれの合併症には適切な対策があり、日々のセルフケアや医療機関との連携で、そのリスクを減らすことができます。
ここでは、代表的な合併症と、その対策についてご紹介します。
1. 貧血(腎性貧血)
腎臓からは、血液を作るホルモン(エリスロポエチン)が分泌されていますが、腎臓の機能が低下するとこのホルモンが十分に作られなくなり、貧血が起こりやすくなります。
- 症状:
めまいや立ちくらみ
息切れ
だるさ
- 対策:
注射: エリスロポエチンを補充する注射を定期的に行います。
鉄剤の補充: 必要に応じて、鉄剤を内服または注射で補給します。
食事: 貧血の改善には、鉄分を多く含む食品(レバー、ほうれん草など)を意識して摂取することも大切ですが、リンやカリウムにも注意が必要です。栄養士の指導を受けながら、バランスの取れた食事を心がけましょう。
2. 骨の病気(骨・ミネラル代謝異常症)
腎臓の機能が低下すると、体内のカルシウムやリンのバランスが崩れ、骨がもろくなることがあります。
- 症状:
骨や関節の痛み
骨折しやすくなる
- 対策:
薬の服用: カルシウムやビタミンD製剤、リン吸着剤を服用し、体内のミネラルバランスを整えます。
食事管理: リンを多く含む食品(乳製品、加工食品など)の摂取を控えます。リンの自己管理が、骨の健康を守る上で非常に重要です。
3. 皮膚のかゆみ
透析患者さんの多くが、皮膚のかゆみを経験すると言われています。これは、体内にリンや尿毒素が溜まったり、皮膚が乾燥したりすることが原因とされています。
- 症状:
全身のかゆみ
皮膚の乾燥、湿疹
- 対策:
保湿: 入浴後、保湿クリームなどを塗って、皮膚の乾燥を防ぎます。
適切な透析: 十分な透析時間を確保し、体内に溜まった老廃物をしっかり取り除きます。
薬の服用: 医師の指示のもと、かゆみを抑える薬や、乾燥を防ぐための薬を服用します。
4. 高血圧
透析患者さんの高血圧は、主に水分の取りすぎや、透析で取りきれなかった水分が原因で起こることが多いです。
- 症状:
頭痛
めまい
- 対策:
水分管理: 医師や看護師の指導に従い、一日の飲水量や塩分摂取量を適切に管理します。
塩分管理: 塩分を摂りすぎると、のどが渇いて水分を摂りたくなります。食事の塩分を控えめにすることが、水分管理にもつながります。
降圧剤の服用: 水分・塩分管理だけでは血圧が十分に下がらない場合、医師の指示に従い、降圧剤を服用します。
定期的な血圧測定: ご自宅でも定期的に血圧を測り、日々の変化を把握することが大切です。
日々のセルフケアと医療機関との連携が大切
これらの合併症は、早期に発見し、適切な対策を取ることで、症状の悪化を防ぐことができます。
日々の観察: ご自身の体調の変化(だるさ、痛み、かゆみなど)に日頃から注意を払い、気になることがあればすぐにスタッフに伝えてください。
情報共有: 食事の内容や飲水量、服薬状況などを正直に話すことで、より適切な治療計画を立てることができます。
当クリニックでは、月二回の血液検査など、患者さんの状態を定期的に確認し、合併症の予防と対策に努めています。何かご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。
参考文献・関連リンク
- 日本透析医学会
透析治療に関する専門的な情報が掲載されており、合併症についても解説されています。
- 日本腎臓学会
腎臓病全般に関する情報が網羅されており、腎性貧血や骨病変についても詳しく解説されています。
- 腎臓病なんでもサイト(日本腎臓財団)
腎臓病患者さんやご家族向けに、食事療法や透析に関する分かりやすい情報を提供しています。
- 日本高血圧学会
高血圧に関する専門的な情報が掲載されています。