FAQ

よくいただく質問をまとめました。

(2022年版)


現在、ノルウェーではどんな研究をされていますか?

進化生物学を専門としています。私の研究の目標は、ゲノム情報から、多様な生物種が進化してきた過程を明らかにすることです。有益な遺伝的変異を統計的・実験的に特定し、それらがどのように進化に寄与したかを理解することに興味があります。


進化生物学に興味をもったきっかけを教えてください。

もともと科学にも芸術にも関心があり、進路選択の際には文系に進むか理系に進むか迷っていました。進化学を学ぶことで、自然そのものと、自然の歴史の背後で起きた可能性のある物語の両方を科学の目から調べていくことができると思い、進化学を専門にしました。



博士課程に進んだきっかけを教えてください。

上記のような興味を持って大学院に入っていったものの、修士までの段階では十分にその分野で研究を行ったという実感が得られませんでした。これは振り返れば当時の研究環境が合わなかったのもあったと思います。とにかくもっと研究をしてみたいという思いで博士課程に進みました。日本学術振興会の特別研究員(博士課程学生)に採択されたというのも大きな後押しでした。


どのような経緯で米国でポスドクをしたのですか?


私は元来あまり社交が得意ではなく、どちらかと言うとひとりで本を読んだり、虫や植物を観察していたり、空想にふけっていたりするような子供でした。そうした内向的な性格のため、中学や高校の頃には海外に行くどころか、外国人と交流する勇気も強いモチベーションもありませんでした。英語の授業を受けながら、「英語を実践で使う機会はまずないだろうな」と思ってさえいました。


博士課程当時、私が研究していた遺伝子の数の個人差・個体差に関する研究は、日本ではまだあまり進んでいませんでした。そんな折、現代人で観察される「遺伝子欠失多型」のうち、古代人類(ネアンデルタール人、デニソワ人)においても観察される多型を報告した論文を見つけました。そこで、この研究室で解析手法を学びたいと思い、論文の責任著者であるOmer Gokcumen博士にコンタクトを取ると非常に好意的な返事をいただけました。幸いに、博士課程教育リーディングプログラムの留学奨励金を受けることができ、2016年(博士課程3年)の5 ~ 7月にバッファロー大学に滞在しました。その後、アステラス製薬の留学奨励金をいただいてポスドクとして、バッファロー大学での研究を始めました(なお、日本学術振興会の国内ポスドクフェローシップ、海外ポスドクフェローシップは計三回落ちて諦めました)。


研究のやりがい・課題・夢を教えてください。

研究のやりがい:面白い発見をした時です。


研究の課題:色々な人がいる研究チームを率いるのがなかなか大変です。人によって、「何を面白いと思うか」「何を前提とするか」などの思考枠組みが違って戸惑うことも多いです。


研究における夢:研究者以外の人にも面白いと思ってもらえる発見をすることです。また、研究以外の、全然違う仕事をしている人とコラボレーションすることです。


なぜノルウェーに来たのですか?/現在の所属機関を選択した理由は何ですか?

世界中の機関に応募し、最初にオファーを頂いたのがCIGENEでした。研究関心がマッチしたことが一番ですが、研究のレベルが高く、サポート体制が強力で、街も様々な面で暮らしやすそうだったので決めました。アメリカ(ニューヨーク郊外、シカゴ)でポスドクをしていた時は、研究環境は良かったのですが、個人的には、治安や多様性に関わる問題、政治にまつわる不安定さがあり、あまり安心して暮らしたり研究したりすることができないと感じました。


【参考】:World Values Survey Wave 6 (2010-2014)

「雇用が少ないときは、雇用主は移民よりもその国の人々を優先すべきである」

「賛成」と答えた人の割合:北欧14.3%、米国50.0%、日本62.1%、


「雇用が少ないときは、雇用主は女性よりも男性を優先すべきである」

「賛成」と答えた人の割合:北欧2.0%、米国5.7%、日本30.0%、

スウェーデンのデータのみ記載あり)



ノルウェーの研究環境はいかがですか?

個人の経験なので一概には比べられませんが、研究をサポートする体制、人材の豊かさに驚かされました。サーバー管理、実験室管理、アドミンなどそれぞれに、高い意欲と専門性を持った担当者が揃っています。教員会議はURA(リサーチ・アドミニストレータ―)が事前に議題を整理し、短時間で終わります。また、着任早々、外部研究費担当者(ノルウェーの学振相当組織の勤務経験者)がやってきて、欧州の研究費システムについて説明をしてくれ、申請書にもコメントしてくれました。