佐保川の蛍とは?
佐保川の蛍とは?
佐保川とは、春日山原始林内の鶯の滝を源流とし、大和川に注ぐ、19 kmの一級河川です。
室町時代に選定された奈良市内の景勝である「南都八景」の1つに「佐保川(の)蛍」が挙げられ、古来よりその光景が人々に愛されてきました。しかしながら、近年の河川開発や水質汚染により蛍(ゲンジボタル)が減少し、その姿を見かけることは少なくなりました。
「大和名所図会」秋里籬島著 春朝斎竹原信繁画 寛政3年(1791)(奈良市文化財課資料保存館より提供)
佐保川の蛍とは、佐保川流域に分布棲息するゲンジボタルの個体群です。ゲンジボタルとは、本州以南に生息する日本固有のホタルのうち代表的な種です。
近年の都市化や農業の近代化に伴う生息場所の減少・悪化はゲンジボタルに直接悪影響を与えるだけでなく、餌生物のカワニナの個体数を減少することで間接的に悪影響をもたらしています。
初夏に蛍が飛び交う風景は夏の風物詩であるため、現在は各地で保全活動が行われており、販売個体の飼育・放飼が実施されています。
しかしながら、地域的な遺伝的分化がみられるため、遺伝的多様性保護の観点に基づき、別地域からの移植ではなく、同一流域における個体群の増大が必要です。