ESL63の名前は、ピーター・ウォーカーの手による最初のアイディアスケッチの日付が 1963年であることに由来します。 発売は1981年なので、初期のアイディアスケッチの段階から18年もの間、 慎重な開発がされてきたのでしょう。
製品化に至るまで、しっかりした開発を行い、目先の変更は行わないのが、 QUAD社の基本方針です。ESL63がフィリップスの録音モニターとして使われていたのをうけて スタジオモニター仕様のESL63Proが発売されたのが1986年になります。その後、資本が変わったQUADはESL988/989, Vintage, 2805/2905と後継機を出し続けていますが、エレメントは同一構造ですし、ESL → ESL63の時にあったような革新的な進歩は一切ありません。
余談ですが、QUADの66Pre用のリモコン、66Control Panelは非常にすばらしい操作性です。 これは、開発者が試作機を自宅に持ち帰り、使い勝手をチェックしていたそうです。 おそらく、オーディオ開発者だけでなく、利用者である家族も含めて、使い勝手の良さを追求したのでしょう。 日本のメーカーのエンジニアにも見習って欲しいやりかたです。
当方のESL63は現在要メンテナンス状態で放置中です。Gradientのウーファーも併せて、早く復活させてやらねば…
ユニット構成
ESLでは3つのエレメントを使い、うち2つを低域、1つを中高域と高域の2Wayとして使用して、 全体としては3Wayスピーカーとしていました。。
ESL-63は、エレメントは4枚ですが、同軸ユニットの様に動作するように、同心円上に、 電気的に8分割されていて、球面波が出るようになっています。 (リングの外周になるにしたがって、高域成分を落とす工夫をしているので、 ESLは3WAYだがESL-63はフルレンジという表現は、必ずしも正しくないように思います。)
ESLが平面波を発する事に対して、ESL-63は自然界の音に近い、球面波が出るように工夫されているのである。これが、最大の違いであり、設計者のピーター・ウォーカーがもっとも注力し新型機でESLを置き換えた意味なのです。
保護回路の徹底。
過大入力により壊れやすかったESLと比べて、保護回路を徹底することにより、相対的に壊れにくいスピーカーとして仕上がっています。
寸法比
横長のESLに対して、縦長のESL-63と、部屋の設置条件は随分かわりました。 ステレオで部屋の中に2台置くために少しでも設置場所を減らす工夫をしたのではないでしょうか? (ESLが発売された時期は、まだ、モノラル時代でしたから、スピーカーは部屋に1個でした。)
Philipsの要望でESL-63をレコーディングモニターとしてより適した仕様に変更したものが1985年発売のESL-63Proです。 私が使用しているのがこちらのタイプです。 私のESL63ProにはPRO-63というシールが貼っているので、こちらが本国での呼び名かもしれません。
ESL63ProのESL-63からの変更点は以下のとおりです。
エレメントを保護するパンチングメタルがアルミからステンレスに変更。強度の向上と共に、パンチングメタルの開口率をアップ。
フレーム強度の向上、及びキャリー用の取っ手を装備
過大入力時の保護回路を、音をシャットダウンするタイプから、歪ませても音を出すタイプに変更。録音モニターとしては必須の仕様です。