本ページでは、私が過去に作問した早押し問題を例に挙げて、「短文標準」に従った問題を紹介しています。また、作問意図・作問傾向についてもできる限り詳細に説明することを試みています(ペーパークイズの傾向については、「アーカイブ」の「問題集・ペーパー」を参照)。
主催紹介
「主催挨拶」のページに掲載することも考えましたが、私のパーソナリティが一番反映されている要素は、問題群ではないかと考えたので、このページに大まかな自己紹介を掲載します(2024年7月時点の情報です)。
主催者 :三谷幸聖
クイズ歴:4年、京都大学クイズ研究会(Mutius)→フリー
好き :旅行・観光、神社仏閣、博物館・美術館、日本文化、ドラマ・映画・アニメ、読書
無意識によく作るジャンル:文学、地理、公民、芸能
無意識に作らないジャンル:(教科書的な)日本史・世界史、スポーツ
簡単な自己紹介は以上です。得意ジャンルについては、「好き」で紹介されているものが大体当てはまるものと考えてください。また、「よく作るジャンル」と「作らないジャンル」はあまり気にする必要のない情報です。「1・2・3」の問題群を用意するに際して、特定のジャンルに出題が偏らないよう各ジャンルから満遍なく出題する方針のためです。加えて、特定のジャンルだけ難易度が高く、全体のバランスから見て歪になるようなことは避けるよう意識します。そのため、「作らないジャンル」の問題でもある程度深い知識が問われる可能性はあります。
以下、約6000文字にわたって例題について説明しています。時間がない人は問題だけ見ても差し支えありません。それで、「面白そう!」と思った場合は参加することをおすすめします。
1.全体の概観
大ジャンルは以下の13個です。
「理系」「文学」「言葉」「日本史」「世界史」「地理」「公民」「芸術」「漫画・アニメ・ゲーム」「生活」「産業」「スポーツ」「芸能」
基本的にはクイズ大会・abcのジャンルとほぼ変わりません。但し、abcで「生活」に振り分けられている「企業・商品」問題を「産業」として分離させています。「産業」ジャンルには、その他に「第一次産業」や「第二次産業」などの小ジャンルがあります。
2.大ジャンル
大ジャンルごとに例題と問題傾向・作問傾向について説明しています。
なお、例題で紹介している問題は、「短文標準」の問題傾向で行なった『1・2・3』と『からくれなゐに 水くくるとは』から抜粋、一部改題したものです。
注意点
・「半径3mに広がる好奇心と探究心」と説明した「短文標準」の具体的なイメージが湧くよう、「半径3m」が色濃く出ている問題をα、「好奇心」が色濃く出ている問題をβ、「探究心」が色濃く出ている問題をγとして、大ジャンルごとの問題傾向・作問傾向について説明しています。また、私の作問で全体的に貫かれている考え方などについてもある程度提示しています。
・「半径3m」「好奇心」「探究心」は完全に独立している概念ではなく、複雑に絡み合っている概念です。私も3つを厳密に区別して作問しているわけではなく、あくまで問題傾向・作問傾向の説明として区別しているだけです。そのため、例題をミックスした難易度傾向がそのまま「1・2・3」の難易度傾向になるわけではない点にご留意ください。
理系
α:一般的な6面サイコロにおいて、目の掘り方で重心が中央にならないために、一番出やすくなる目は何でしょう?
A. 5
β:ルビーやサファイアで見られることが多い、宝石の表面に2本以上の交差した光の筋が現れる現象を何というでしょう?
A. スター効果/アステリズム効果/星彩効果
γ:沖縄県ではリュウキュウマツ、北海道ではシラカバが主なアレルゲンである、医学的には「季節性アレルギー性鼻炎」と呼ばれる病気は何でしょう?
A. 花粉症
高校教育までの題材よりは、日常生活で出会う題材の方が気持ち多めなジャンルです。αは典型的な例ですが、βもこれに該当します。「『【推しの子】』の星野アイの特徴的な目の描写には元ネタがあるのかな?」と興味を抱いた際に見つけた題材がβです。βは作問ソースが見えづらい成分化になっていますが、題材によっては作問ソースがそれとわかるような成分化をすることもあります。
文学
α:作中では「好奇心の猛獣」と評されており、好奇心に駆られると「わたし、気になります」という決まり文句を放つ、米澤穂信の〈古典部〉シリーズのヒロインは誰でしょう?
A. 千反田える(ちたんだ・える)
β:安西冬衛の詩で、「鰊が地下鉄道をくぐって食卓に運ばれてくる。」と「てふてふが一匹韃靼海峡を渡って行った。」に共通するタイトルは何でしょう?
A. 「春」
γ:ニューディール政策に対する配慮からか、ディズニーが同時期に制作した短編映画では飢え死にのバッドエンドが回避されている、有名なイソップ童話は何でしょう?
A. 『アリとキリギリス』
文学や映画などの創作物に関する問題は、現代のクイズ界で成分化のアプローチが色々と議論されていることと思います。「裏表紙にあるあらすじ」「賞レース、キャスト、主題歌などの記号的な情報」「作品の裏話」「触れたことのある人が共感できる情報」など、様々なバリエーションがあります。私は様々な創作物に出会うことが好きなので、「触れたことのある人が共感できる情報」の切り口からの出題が、他の作問者に比べて若干多くなるとは思います。しかし、それ以外の切り口も積極的に出題しようと考えています。そのため、出題の型はないと考えていただいて大丈夫です(急に有名ブロガーの書評から作品名を問う問題が出題される可能性もあります)。
また、私の文学ジャンルの特徴として、作者名より作品名を問う問題が多いことが挙げられます。作品によっては、αのように作品名から一歩踏み込んだ問題を出題することもあります。
言葉
α:物語の最後でよく使われる「はっきりわからない」という意味の言い回しを、「何として知れない」というでしょう?
A. 杳(よう)として知れない
β:第2回十字軍を推進したクレルヴォーのベルナルドゥスが書き記したと伝わるヨーロッパのことわざとは、「地獄への道は何で舗装されている」でしょう?
A.善意
γ:ラテン語で「歩き回る」という意味の言葉を語源とし、時代が進むにつれて「野戦病院」「負傷者を運ぶ車両」「救急車」と意味が変遷した英単語は何でしょう?
A. ambulance
小説や新書をよく読むので、書き言葉で頻出の表現を積極的に出題する傾向にあります。そのため、一切活字を読まないという人には若干厳しい難易度の題材も多くなるかと思います。
日本史
α:【並び替えの問題です】「日本と中国」「日本と韓国」「日本とソ連」の3つの組み合わせを、国交正常化の早い順番に並び替えるとどうなるでしょう?
A. 「日本とソ連」→「日本と韓国」→「日本と中国」
β:1925年に詩人の萩原朔太郎が「キズだらけのレコードをかけてる時にそつくり」と揶揄したものは、同年3月22日に日本で始まった何のことでしょう?
A. ラジオ(放送)
γ:豊臣秀吉の下に死装束の姿で現れて切腹を免れたという逸話も有名な、「独眼竜」の異名を取った戦国武将は誰でしょう?
A. 伊達政宗
世界史
α:暗殺される数日前に自身の葬式が行われている夢を見たという逸話が残る、1865年にワシントンのフォード劇場で暗殺されたアメリカの大統領は誰でしょう?
A. エイブラハム・リンカーン
β:「ドージェ」と呼ばれる元首の下で1000年以上繁栄が続き、「アドリア海の女王」と称された、歴史上最も長く続いた共和国は何でしょう?
A. ヴェネツィア共和国(△:ヴェネツィア)
γ:書き言葉としての英語がほぼ消滅し、英語の文法が簡略化するきっかけになった、11世紀にイギリスで起こった歴史的な出来事は何でしょう?
A. ノルマン・コンクエスト
世界史のαは前フリの逸話と後フリの事実が暗殺という1つのテーマで貫かれています。前フリと後フリでまったく別の切り口を提示するより、1つのテーマで貫く方が題材の切り取り方としてスマートに見えるので、そのような問題を多く作りたいと考えています。但し、強引に1つのテーマとして貫くことは行わない方針です。それは、最低限の補足を加える一方で、題材をどう解釈するかについては受け手に委ねるという意味です。
私は問題文を「雑談」として捉えています。「雑談」というのは、家族や友人との会話で、「そういえば、◯◯って、△△もしていたらしいよ」というフレーズを様々な会話の中でさり気なく提示する形です。これに対して、「強引」というのは、「◯◯って、△△もしていたらしい!マジで□□やな」というフレーズをいきなり俎上に載せ、会話のメインに据える形です。もちろん、そうした会話の形もよくありますが、そうした会話の形は聞き手が話し手の解釈に満足してしまい、新たに生まれる好奇心や探究心を妨げてしまうのではないかと考えています。また、競技を志向する問題群を両立させたいという考えもあるため、題材に対するプラスな情報もマイナスな情報も比較的フラットに提示する方針です。
日本史・世界史ジャンルについては、教科書的な歴史も一定数出題します(例題では日本史のα)が、教科書であまり取り上げられない歴史(日本史では戦国時代、世界史では三国時代など)や逸話・エピソードを取り上げる問題を積極的に出題したいと考えています。また、全体的な作問傾向として、横断的な出題も心がけています。世界史のγを例に挙げると、題材そのものは間違いなく世界史ですが、前フリでは言語学の話題を取り上げています。このように、大ジャンルを横断した問題も積極的に出題する方針です。
地理
α:ゆりかもめの芝浦ふ頭駅とお台場海浜公園駅の間には一回転する場所がありますが、これはこの区間にある何という橋との高低差を解消するためのものでしょう?
A. レインボーブリッジ
β:アメリカの州で、ペンシルベニア州、マサチューセッツ州、バージニア州、ケンタッキー州の公的な表記は、「州」にあたる英単語を何としているでしょう?
A. commonwealth
γ:様々な意匠を凝らした石垣があることから「石垣の博物館」と称される、江戸時代に前田氏の居城として栄えたお城は何でしょう?
A. 金沢城
abcでは「地理」というジャンルを地域ごとに細分化していますが、私は「地理」を「自然地理学」「人文地理学」「観光地理学」の3つに大きく分けて題材のバランスを取ることを意識しています。これは、私が大学で地理学を専攻していた際に、地域ごとに地理ジャンルを捉える視点があまり芯を食っている視点に見えなかったためです。但し、特定の地域に題材が偏らないようにはします(関西での開催なので、関西の題材が気持ち多くなることはあります)。
公民
α:「きれいな空気を吸う権利」や「自由にできるお金をもつ権利」などの権利をどれから捨てるかを話し合う、小中学校の道徳で取り扱われる題材は何でしょう?
A. 権利の熱気球/権利の気球
β:第1項で禁じた国権による戦争や武力行使以外の目的であれば、自衛のための戦力を持てる解釈を開いた、「芦田修正」によって、日本国憲法第9条第2項の冒頭に加えられた文言は何でしょう?
A. 「前項の目的を達するため」
γ:ムスリムは「同じ季節のものを人生で2度経験する」と言われる、日の出から日没までムスリムが断食を行う月を何というでしょう?
A. ラマダン
時事・社会問題、社会運動・事件、経営・経済などの小ジャンルの題材を作問することが多いです。また、βや「天上天下唯我独尊」などのように、解答対象の文字列にインパクトがある場合、つい作問してしまう傾向があります。
芸術
α:「永和九年、歳(とし)は癸丑(きちゅう)に在り。」の一節を書道で臨書することが多い、東晋の書家・王羲之(おう・ぎし)の有名な作品は何でしょう?
A. 『蘭亭序』
β:江戸時代には歌舞伎役者が芝居小屋と新たな契約を開始する月にあたり、役者の顔ぶれを披露する顔見世興行は「芝居国(しばいこく)の正月」と呼ばれていた、現在も銀座の歌舞伎座で顔見世興行が行われる月になっている月は何月でしょう?
A. 11月
γ:1855年のパリ万博への出品が拒否されたことを受けて、世界初の個展を開催したと言われる、代表作に『オルナンの埋葬』 や『画家のアトリエ』があるフランスの画家は誰でしょう?
A. ギュスターヴ・クールベ
αのように「半径3m」が色濃く出ている問題は、日常生活と題材のリンクからそのまま出題する傾向があります。βのような文字数の問題を出題することもあります。そもそも私の問題には一定数、修飾が複雑な問題があり、文構造を理解した上でないと、問読みが難しいという側面があると考えています。そのため、「1・2・3」というクイズ大会においては、作問者の私が修飾のわかりやすい問読みを心がけることで、機能美だけではない、知識を味わうクイズを表現できたらと考えています。また、βの問題では、「契約を開始する月」と顔見世興行の関連性を明らかにする「芝居国の正月」に関する情報をクッションとして入れることで、問題の切り口の方向性を示し、早押しのポイントを多様にすることも狙っています(問読みの課題については、Hayaoshiを使うことで解決されるとは思いますが、Hayaoshiを使う問題群はまた別軸で開催したいとぼんやり考えているので、開催する際にはよろしくお願いします)。
漫画・アニメ・ゲーム
α:【説明してください】人生ゲームの自動車ゴマには8つの穴がありますが、人物ピンを差し込むことができるのは6つの穴に限られています。残り2つの穴は何のためのものでしょう?
A. 誤飲時の窒息防止
β:東山奈央(とうやま・なお)の歌う『初恋』『夏祭り』『未来へ』などの楽曲が挿入歌として流れた、川越市を舞台に中学生の純愛を描いたアニメは何でしょう?
A. 『月がきれい』
γ:128人のマリオが画面内を走り回るゲームの技術が引き継がれたという、ホコタテ運送のベテラン社員・オリマーを主人公とするゲームシリーズは何でしょう?
A. 「ピクミン」シリーズ
αの人生ゲームの問題や日本史のαのように、解答形式を指定している問題がある程度あります。βは創作物の出題範囲を示すために例題に加えました。ベストセラーの作品や覇権を取った作品以外からも、時代を超えて残るような作品、未来の誰かの古典となるような作品を出題する方針です。本屋大賞の「発掘部門」に近いです。
生活
α:イベントなどで支援を行う「協賛」と「後援」のうち、主に資金援助を行うのはどちらでしょう?
A. 協賛
β:大型の立体駐車場では露出していることも多い、耐震性を高めるために柱と柱の間に斜めに入れる部材を何というでしょう?
A. 筋交い/ブレース
γ:2014年に錦織圭が「食べたい」と発言したことで知名度が上がった、「日本海の赤い宝石」や「白身のトロ」と言われる高級魚は何でしょう?
A. ノドグロ/アカムツ
生活ジャンルは日常生活から生まれる問題が多いからか、題材を素直にまとめていることが多いです。
産業
α:王貞治をCMに起用していた頃はパッケージの三重丸にボールの縫い目があしらわれていた、ギネス世界記録にも認定されている大塚食品のレトルトカレーは何でしょう?
A. ボンカレー
β:リーマンショックまで、日本が四半世紀にわたって世界一の生産高を誇っていた、「機械を作る機械」を何というでしょう?
A. 工作機械
γ:江崎グリコの社名は「グリコーゲン」に由来しますが、この社名にまつわる逸話でグリコーゲンが含まれる食べ物として登場し、同社の看板商品「グリコ」にもエキスが含まれている海の幸は何でしょう?
A. 牡蠣
αを出題した当時、ボンカレーがギネス世界記録に認定されたばかりだったので、こういう成分化になっています。時事やトレンドの問題は、西暦に関する情報を提示することなく、さり気なく出題することもあります。
スポーツ
α:3人制バスケの「3x3(スリーエックススリー)」は、何点を先取すると勝利になるでしょう?
A. 21点
β:東進ハイスクールを展開するナガセの事業の1つである、入江陵介や大橋悠依を輩出したスイミングスクールは何でしょう?
A. イトマンスイミングスクール
γ:ブラジルで使われる辞書には「比類のない人物」を表す形容詞として掲載されている、同国をW杯で3度の優勝に導き、「サッカーの王様」と称された人物は誰でしょう?
A. ペレ
αのように成分化のアプローチによっては無味乾燥な問題が多くなってしまうスポーツジャンルですが、できる限り面白さや興味深さに焦点を当てた題材を出題したいと考えています。
芸能
α:2016年に「花摘み」と呼ばれる購買運動で売上枚数が300万枚を突破した、作詞・作曲を槇原敬之(まきはら・のりゆき)が手がけたSMAPの楽曲は何でしょう?
A. 『世界に一つだけの花』
β:演じた役柄に、『JIN-仁-』の勝海舟、『真田丸』の豊臣秀吉、『コンフィデンスマンJP』のリチャードがある俳優は誰でしょう?
A. 小日向文世
γ:同年公開の『グレムリン』と共に、アメリカの映画のレーティングである「PG-13」が最初に適用された作品である、心臓を取り出す儀式や猿の脳みそのシャーベットが登場する映画は何でしょう?
A. 『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』(おまけで◯:『インディ・ジョーンズ』第2作)
芸能などのエンタメジャンルを扱う際には、ついついコンテンツ単位で題材を取り上げてしまいがちですが、「ドラマ史」「映画史」「アニメ史」などの歴史を踏まえた視点から重要であると判断した題材についても積極的に出題したいと考えています。
「例題」の説明については以上です。