クイズに絶対的な共通認識はない。
私はそう考えています。
SNSでクイズ論が提起される度に、ああでもないこうでもないと様々な意見が飛び交います。そして、それは数日後にスクロールの海に投げ出されています。私はSNSでクイズ論を提起することがほとんどないため、一連の流れに参加することはないですが、それでも様々な意見が流れる度に心の中で思うことは多くあります(私をよく知っている人からはかなり怖い論客として知られている程度には考えています)。
私がクイズ大会「1・2・3」を開催する理由は、私の考えるクイズの魅力と理想の形を広めるためです。
クイズの魅力と理想の形を広めることと、クイズ論に何の関係があるのかと困惑する人も多いかと思います。それは、私の考える「クイズの魅力と理想の形」そのものが、私がクイズというものに対して押し付けている意見のようなものだからです。意見というよりも、こう言い換えてしまう方がいいかもしれません。私が求めるクイズの正しいあり方です。
私は普段、面白いものや興味深いものを見つけると、メモをする癖があります。そのメモから私の視点に基づいて、企画や大会のための題材を選んでいます。こうした題材の選び方に対して、問題集や大会で出題されたことのある題材の中から選ぶ。いわゆる既出から選ぶというスタンスもあります。それ自体、問題を適正な形で再出題するという段階を踏んでいれば問題ないと思いますが、私はそうした題材の選び方に対して疑問を抱いています。「なぜ、世界は広いのにわざわざ既出というフィルターを一度通して選ぶのか?」と。私は作問者がありのままに見た世界から、新しい世界を知りたいです。そのため、私はここで「クイズは既出という観点に囚われることなく、作問者の視点から出題するべき」という理想を押し付けてしまっているわけです。
ここで留意してもらいたい点は、私が何も既出という題材を嫌っているわけではないということです。私がこれまでに作った問題の中には、ベタ問と呼ばれる頻出の題材もありますし、私自身が既出の形にあまり詳しくないので、「新作と思っていた題材が実は既出」ということはよくあります。また、abc対策など、何かしらの目標に向けての企画や大会においては、対策という観点から既出を出題することは自然なことなので、問題文をほぼそのままコピペするような形でないなら、既出を参照することは何ら問題ないと考えています。ただ、私のクイズ観では、限られた問題を出題する中で、わざわざ「既出であるから」という理由で問題を採用することはしないということです。
私が既出という観点を意識している理由はもう1つあります。既出という考え方がクイズ界を覆っている限り、「何を知っているか」ではなく、「何を知らないか」が重要視されてしまいます。そのため、「あの大会に参加していなかったから、あるいはあの問題集を買っていなかったから、正解できなかった…」という不安感を取り除くために、多くの人がいわゆるベタ問や短文基本が多く掲載されている問題集を買い続け、ひたすら座学を続けるという状況が生まれているのではないかと私は考えています。「何を知っているか」を肯定するわけではなく、「何が抜け落ちていないか」を肯定するクイズほど悲劇的なものはありません。ただただ世界は面白い、興味深い、美しいと礼賛するようなクイズ大会があってもいいのではないでしょうか。そうした私のクイズに対する一種の押し付けから生まれたのが、「1・2・3」というクイズ大会と「短文標準」という問題傾向です。
私の考えるクイズ論に対して、意見のある方もいると思います。
「早押しクイズに面白さや興味深さはいらない。真剣勝負こそ早押しクイズだ」
「既出を出題するからこそ、クイズの実力を最も妥当に反映できるはずだ」
こうした意見ももちろん理解できます。だからこそ、クイズというものに対して絶対的な共通認識はないと私は考えています。クイズというものに対して、人は様々な感情を込めるからです。ある人は純然たる競技を、ある人は好奇心を満足させるための娯楽を求めます。私の場合は好奇心と探究心と競技を求めています。考え方は千差万別で、クイズに対する前提条件が異なっているわけです。絶対的な共通認識が生まれるわけがありません。
だから私は、「1・2・3」を開催します。「1・2・3」というクイズ大会で、私の考えるクイズの魅力と理想の形を広めることを目指します。皆さんもあなたのクイズ論から企画や大会を開いてください。様々な傾向のクイズ大会が休日に全国各地で開催されることで、クイズの可能性が様々な方向に広がってほしい。皆さんの考えるクイズの魅力と理想の形から、新しい世界を私は知りたいです。
「好奇心」「探究心」「競技」の3拍子揃ったこのクイズ大会は、誰かの次の一歩になるようにという思いを込めて、「1・2・3」という大会名にしました。
楽しめる問題を用意します。
多くの人が参加してくださると嬉しいです。