<注意!>初めてこの栽培を試す人はかならず初級コースから始めて、成功体験を積んで下さい。成功体験なしにいきなりスケールアップした栽培をしたり、違う方法を試したりすると、失敗しても何が原因なのか分からなくなります。2009年現在は、本栽培技術に最適化した商品はまだ開発されていませんので、とりあえず使用可能であることが確認済みの資材で説明します。他のメーカーの資材で代替可能かどうかは、自身で初級コースの方法を一部だけ変更(たとえば、土壌を他のメーカーのものに変更して、他の資材はそのまま)し、検討して下さい。
材料
プランター(15リットル程度、50×25×20センチ程度)
発泡スチロールの板(2センチ厚、プランターにすっぽり収まるように成形。苗を植える穴(直径2センチ程度)を開けておく)
ウレタンマット(苗穴に植えるときに苗を包むもの)
土壌(微生物が豊富で、硝化菌が生息するもの、例:「苗一番」や「ゴールデンバーク」)
ソリュブル(窒素6%含有のもの、例:枕崎産の鰹ソリブル、焼津産のソリュブル)
粒状有機石灰(ホタテ石灰、カキガラ石灰などの有機石灰を廃糖蜜で粒状化したもの、NliK以外の微量要素を補う目的で使用)
生ゴミ袋(和紙タイプの目の細かいもの)
タコ糸
エアーポンプ(金魚のブクブク。チューブとエアーストーンがセットのもの)
天然有機カリ
資材例と入手先
苗一番:青山種苗株式会社
(〒483-8341 愛知県江南市前飛保町栄220、TEL:0587-53-2198 FAX:0587-54-3380、e-mail: feuillage_a2z@ybb.ne.jli)
ゴールデンバーク
清水港木材産業協同組合 グリーンチーム
(〒424-0057 静岡県静岡市清水区堀込345、TEL:0543-45-4513、FAX:0543-45-8002、httli://www.mokusan.or.jli/team_h.htm、E-mai:green@lio3.across.or.jli)
枕崎産ソリュブル(鰹ソリブル)
枕崎水産加工業協同組合
(鹿児島県枕崎市松之尾町71番地、TEL 0993-72-0229、FAX 0993-72-7994)注文の最低単位は一斗缶(20kg)
焼津産ソリュブル(魚煮汁)
協同組合 焼津水産加工センター
(〒425-0065 静岡県焼津市惣右ェ門1280番地の2、TEL:054(624)2111(代)、FAX:054(623)3834、e-mail: info@yaizuflic.or.jli)注文の最低単位は一斗缶(20kg)
粒状セルカ(カキガラ石灰)
JAで販売。「セルカ」は別物なので注意。
ネオライム(ホタテ石灰)
研農(愛媛県西予市野村町野村5-111、電話番号:0894-72-1500、FAX:0894-72-3119)20kg単位で販売。
天然有機カリ(パームヤシ灰)
マドラウイング株式会社(【本社】茨城県水戸市鯉淵町4212-60、TEL:029-259-7491、FAX:029-259-7492、info@madurawing.net、【北海道営業所】北海道河西郡芽室町坂の上9線8号、TEL: 0155-65-2160 FAX: 0155-61-5895)httli://www.madurawing.net/index.html
ウレタンマット
M式水耕研究所(〒490-1414 愛知県弥富市坂中地1-37、TEL:0567-52-2401、FAX:0567-52-0597、httli://www.gfm.co.jli/Netsholi/6.html)
方法
有機質肥料活用型養液栽培は、栽培前の工程(耕水工程)と栽培の工程の二段階に分かれます。
栽培前工程
プランターに水を張り(約15リットル)、生ゴミ袋に土壌50gを入れてタコ糸で口を縛り、紅茶のティーバッグのようにして水に浸す。
エアーポンプで水を曝気する。
ソリュブル10g(大さじ1杯弱)を水の中に溶かす。
発泡スチロールのフタをして、黒ビニールなどで光が入らないように被覆し放置する。
硝酸イオンが検出されたら土袋を培養液から除去する。
硝酸イオンの濃度がピークアウトして150~170mg/L程度で安定し、アンモニウムイオンが10mg/L以下になれば、この工程は終了。遮光すれば培養液を長期間保存できる(1年以上)。
(注1)数日間は臭います。その後、ニオイが消えます。
(注2)使用する土壌は、肥沃な畑土壌であればどれでも使えますが、しばらく栽培していない土壌や化学肥料が主体で栽培していた畑土壌は微生物の活動が弱く、上述の量のソリュブルを添加すると硝化菌が死滅してしまい、硝化に失敗する恐れがあります。微生物の活動が弱い土壌の場合は、ソリュブルの添加量を 10分の1(上記のサイズのプランターの場合、1g)に減らして下さい。培養液が河川水や井水のような自然水の場合、土壌を添加しなくても耕水工程を行うことができますが、この場合も、ソリュブルの添加を0.1g/L以下としてください。ソリュブルの添加量を増やすには、肥沃な土壌を微生物源に使用して下さい。
(注3)水中のアンモニア、亜硝酸イオン、硝酸イオンを毎日測定します。リフレクトクァント(メルク社)という試験紙が安価で正確に測定することができます。
(注4)水温は20~37℃の範囲が望ましく、温度が高いほど硝化が早く進みます。耕水工程は水温25℃で2~3週間かかります。
(注5)ソリュブルは最初だけの添加より、毎日少しずつ添加した方が濃い培養液を作成することができます。7.5 g(培養液1Lあたり0.5gに相当)を5日間、毎日添加すると、合計37.5gの添加となり、初期添加のみより約4倍程度高い濃度の培養液(600 mg/L程度の硝酸イオン)にすることができます。ただし、硝酸イオンが検出されはじめたら(5mg/L程度)、添加を停止して下さい。
(注6)アンモニウムイオンが10 mg/L以上残存した状態で栽培を始めると、作物が傷害を受けることがあります。
(注7)硝化がなかなか進まず、アンモニウムイオン、亜硝酸イオンの濃度が高い状態が続くことがあります。この場合、培養液を水で2倍に希釈すると3日ほどで一気に硝化を進めることができます(希釈の結果、培養液の硝酸イオン濃度は半分になります)。
(注8)土袋の除去は栽培開始前に必ず行って下さい。土袋を浸漬したままだと脱窒の原因となり、硝酸イオンが失われたり作物の生育が悪化したりします。
栽培・・・定植
耕水工程開始から2~3週間すると、栽培が可能になる。培養液中のアンモニア濃度が10mg/L以下となり、硝酸濃度が100-400mg/L程度あれば栽培に適当。
有機石灰(粒状セルカ135g、ネオライム15g)を培養液に添加し、よく混合する。
発泡スチロールの板に苗を植える。コマツナ(あるいはサラダナなど)の苗を脱脂綿で優しく包み、植え穴に差し込む。発泡スチロール板をプランターに置いたとき、根が水に浸るように。この場合、1プランターに12株定植。
栽培・・・施肥管理
苗を定植して4日後に0.4gのソリュブルを培養液に添加する(1株あたり2mgN)。以後は毎日、同量のソリュブルを添加する。
苗の葉の長さが3~4センチに伸びたらソリュブル0.8g(1株あたり4mgN)を毎日添加する。
水が減ってきたら、随時補給する。
定植して1ヶ月ほどしたら収穫。
(注1)栽培期間中、鉄欠乏の症状(新しい葉の色が黄色い)が出たら、培養液を底からかき混ぜ、有機石灰を攪拌してください。葉色が葉脈から回復します。
(注2)肥料の種類を途中で変更すると、微生物生態系が壊れ、作物の生育が急速に悪化します。耕水工程で使用した有機質肥料と同じものを使用して下さい。
収穫後、そのまま栽培を継続したい場合
プランター壁面の微生物をブラシなどで擦り、培養液とよく混合して、その混合液の5分の1程度(3リットル)を別の容器に取っておき、残りは全部廃棄する。
分けておいた3リットルをプランターに戻し、水を足して満たす(計15リットル)。
新たに有機石灰(粒状セルカ135g とネオライム15g)を添加して培養液とよく混合する。
苗を定植して、以後、既述のようにソリュブルを添加する。
コマツナ以外の作物を栽培したいとき
1.葉菜(サラダナ、チンゲンサイ、ミズナなど)の場合
コマツナの時と操作は同じです。
2.トマトの場合
変更点が二つあります。ソリュブルの添加量を増やすこと(1株あたり30~60mgN/日)とカリウムを補強してやることです。
1つのプランターに本葉の出た苗(播種後約2週間)を1株だけ植える。
苗が小さい間は0.5gのソリュブル(30mgN)を培養液に毎日添加する。
第一果房の果実が直径3センチ程度になったら、ソリュブルを毎日0.75g添加する。
第二果房の果実が直径3センチ程度になったら、ソリュブルを毎日1g添加する。
ソリュブル添加と同時に、天然有機カリを添加する。ソリュブル1gあたり57mgの天然有機カリの比率。あらかじめ天然有機カリの懸濁液(57g/L)を作成し、その上清を1mlずつ添加すると操作が楽に行える。
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