有機質肥料活用型養液栽培は、有機質肥料のみで養液栽培を行うことができる世界で初めての実用的な技術です。
この栽培が実現した最大の理由は、水中での硝化を成功させた点にあります。
作物にとって最も重要な肥料成分は窒素です。しかし窒素であればなんでもよいというわけではありません。硝酸態と呼ばれる形態の窒素でないと、作物はうまく育つことができません(特に野菜作物は多くが好硝酸性植物に分類され、硝酸態窒素以外だとうまく育ちません)。それ以外の窒素成分、たとえば有機態窒素ばかりでは根が傷害を受けますし、アンモニア態窒素だけではアンモニア過剰障害が発生します。窒素ガスになるともはや通常の植物は利用することができません。野菜をうまく育てるには、効率よく硝酸態窒素を供給してやる必要があります。
本栽培技術では、水中の微生物が有機質肥料を分解して効率よく硝酸態窒素を生成します。そのような水中微生物を培養するには、栽培前の工程として「耕水工程」(水づくり)を行う必要があります。それには、次の三つの手順を踏みます。
微生物源として、土壌を少量加える(5g/L程度)。
#培養液が100Lを超える場合は1g/L程度。
有機質肥料を毎日、少量ずつ加える(0.1~1g/L/day程度)。
#硝酸態窒素が検出されたら添加を中断。
2週間以上曝気する。
#アンモニウムイオン、亜硝酸イオンが検出されなくなるまで曝気する。
耕水行程(水中微生物の培養)
本栽培の大きなメリットは、根部病害の抑止効果です。フザリウム病や青枯病の病原菌を接種しても、根部病害の発生を抑えることができます。これに対して従来の養液栽培では、根部病害がしばしば発生し、大きな被害をもたらしてきました。根部病害の抑制効果は、養液栽培にとって大きなメリットです。
このほか、本栽培技術は培養液を循環利用するため、廃棄による環境負荷がなく、環境に優しい栽培技術となっています。
「有機質肥料活用型養液栽培マニュアル」に、初心者および実用規模のマニュアルを紹介しています。
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