■検証すること
良秀は、芸術を優先し娘さえ犠牲にする人物とみなされることがある。作品中において、芸術のために人命を犠牲にするようなことが描かれているのか?
■作品は何といっているのか?
地獄変を描くにあたって良秀は弟子をモデルにしてデッサンをしています。弟子が危険な目にあった場面が2つ作品中で描かれています。それぞれについて検証してみます。
(1) 弟子を鎖で縛った場面
ハ節から九節にかけて鎖で縛った弟子の場面が描かれています。九節では鎖で縛られた状態で身動きできない弟子に蛇が近づき危険が迫ります。以下に抜粋します:
ポイントを整理します:
良秀は文句を言ってはいるが、良秀がとった行動は絵よりも弟子の身の安全を優先している。
(2) 弟子をミミズクで襲わせた場面
十節には弟子をミミズクで襲わせる場面が描かれています。以下に抜粋します:
ポイントを整理します:
人に良く馴れている鳥なので、傷はつくかもしれませんが、命に係わるほどのことはありません。
この場面について十一節の先頭で語り手は以下のように述べているが、上記に整理したように殺されるという表現は当てはまりません:
■結論
良秀は芸術のために人命を犠牲にするような行動はしていない。