1995年より、現在の芸術地域デザイン学部の前身である教育学部美術・工芸課程の講師として着任。2020年より本学部の学部長を務めている。専門分野は美術史。学部や学内の変化を見続けている吉住教授に芸術地域デザイン学部の設立や本学部のこれまでとこれからについて話を伺った。
Q1. 芸術地域デザイン学部という文化教育学部からの変革に踏み切ったきっかけは何でしょうか。
A.国立大学は、国や地域の要請によって、絶えず変革を求められていますが,文化教育学部(以下、文教)の改組が決まった時は、文教の美術・工芸課程がこれまで、作家や教員、デザイナーなどを輩出してきたことが大きなポイントとなりました。そして,美術・工芸課程のリソース(伝統・遺産)を新学部の土台にしようということになりました。これに加えて、これまた、特徴的な課程であった,文教の国際文化課程と人間環境課程を取り込み、発展させた他にはない形の芸術学部をつくっていくことになりました。また、現在,日本や世界が抱える大きな問題の一つが「地域活性化」や「地域創生」であり、地域に貢献することが地方国立大学の使命でもありますので,芸術と並び,「地域」を新学部の柱(コンセプト)とすることも決定しました。加えて,新学部には文教だけではなく、全学からもさまざまな分野の教員に入ってもらうことで、学際的、領域横断的な学部となることを目指しました。以上のように、これまでの実績と国や地域からの要請を踏まえ、この学部がつくられました。
Q2. 芸術地域デザイン学部は多彩な分野で構成されていますが、この学部ならではの特色はどのようなところにあると思いますか。
A.文教の特長をさらに広げた”他にはない芸術系の学部”です。すなわち,自然科学分野や博物館学、文化財保護,都市デザイン、考古学、そして,ミクストメディアなどの新しい芸術表現分野といった多岐に渡る領域で構成することによって,他の芸術系の大学や学部との差別化が図られていると思います。
Q3. (これまでの10年を振り返って)これからの10年、どのように変化していくと思いますか。
A.日本の大学は、常に変革を求められています。だからこそ、新学部では新しい芸術を追及する教育の姿勢を大事にしたいと思います。また,学部名にある「地域」とは「地域=地方」ではなく、海を超えた地域との関わりも含まれると捉えていますが,グローバルな問題は今後ますます重要性を増していくと思われます。現代社会が抱える問題に耳を傾け,他者について考える力や方法論をもつ人材を育成すること,私はこれからの大学教育において,それが最も重要なことの一つであると思います。「リベラルアーツ」いわゆる基本的な教養を身につけることは、時代を問わず欠かせないものですが,その意味で,今後,基本教養教育の重要性は再認識されていくべきだと思います。芸術地域デザイン学部の中に,歴史,経済・経営,異文化コミュニケーション,アートと科学に関わる領域分野等を置いている理由もそこにあります。
芸術地域デザイン学部のスローガンである「芸術で,地域をひらき、世界をひらく」には,以上,述べてきたような様々な思いがこめられているのです。
Q4. 在学中の学生や、これからこの学部に来る学生に一言
A.今以上に魅力的な学部にするために、魅力的な学部であり続けるために私たちは努力していきます。アートは自分のものであるとともに,みんなのものでもあります。広い視野を持って、いろいろな人の話を聞き,コミュニケーションをとっていく中で,新しいアートの在り方や表現方法を考えていきたいと思います。また,アートの視点や方法論をもって,様々な社会の分野で貢献できる人材の育成にも一層力を注いでいきます。