1.慢性疼痛に関する研究
指を切ったり、熱いものに触ったりすると痛みを感じます。 このような痛みは、人が生きていくために必要な感覚ですが、体に何も異常がないのに痛みを感じることは、日常生活の質を低下させます。 このような痛み=慢性疼痛は、全世界で2,500万人の人たちを苦しめています。 慢性疼痛の有効な治療法は未だ見つかっていないため、多くの人がその治療法を求めています。 私たちは慢性疼痛の動物モデルを作り出し、慢性疼痛では痛みが伝わりやすい状態になっていることを明らかにしました。 痛みは気分によって感じかたが違うことから、脳の中でどのような処理が行われ、痛みが感じられるかについて研究を進め、不必要な痛みを制圧すべく研究を進めています。
2.がん悪液質のメカニズム解明
がん患者には末期を象徴する症状として極度の痩せの状態が見られます。 この状態はがんの進行の自然な成り行きとされていましたので、治療法の確立は十分に行われていませんでした。 しかし、がん患者に特異的なやせ細りはがん悪液質とよばれる栄養不良の結果であることがわかりました。 がん悪液質では、食事で得た栄養を体が利用することができなくなってしまいます。 これによって腫瘍組織に栄養がたくさん供給され、がんの進行をより加速させます。 もし、がん悪液質を制御できたら、元気な状態で体を維持できますので、抗がん剤を使った治療を長く続けたり、末期の状態でも美味しいものを食べたり、旅行ができるかもしれません。 私たちは、末期がんにみられる苦痛の根本に悪液質があると想定し、がんが悪液質をおこすメカニズム解明と治療を可能にする薬を探索しています。
3.漢方薬の作用メカニズム解明の研究
漢方薬は、飛鳥時代に中国から導入され、平安時代より日本独自の発展をしてきた薬物です。中国の伝統的な医学である「中医学」とは異なり、日本人の体質に合わせて発展してきた医学です。江戸時代に西洋医学である蘭学と区別をするため漢方と呼ばれるようになりました。つまり、漢方薬とは、日本独自で発展してきた医学です。西洋医学とは異なり、漢方の視点では、生体をシステムとしてみなし、臓器ごとに疾患を区別しません。そのような概念を持つため、これまでの基礎研究では、作用メカニズムを解明することは困難でした。当研究室では、複数の臓器の活動を同時に計測する技術の開発を行っており、漢方薬の作用メカニズムを解明するための応用も行っています。特に、がん悪液質や高齢者フレイルに対する作用発現メカニズムの解明を目指して、中枢ー末梢臓器連関の関係から、漢方薬の作用発現メカニズムを探っています。