実践レポート③

アドバイジングの背景

このアドバイジングは別の話をしていたときに偶発的に起こったアドバイジングです。アドバイジングを行ったPさんは交換留学生として日本の大学で学んでいました。1年の留学期間に1番上のレベルの総合日本語やSpeaking・Writingに特化した技能別クラスを受講していました。Pさんと話す中で、Pさんは自分のアクセントやイントネーション、とばの選択や日本語の話し方が持つ独特の癖が、日本に来て母語話者と話す環境にいれば少しは良くなるかと思ったが、全然変わらないことに悩んでいたということが分かりました

概要

学期途中に偶発的に起こったアドバイジングと学期の終わりに聞き取りを兼ねて再度アドバイジングを行いました。1回目のアドバイジングではPさんの悩みの種を探り、それを少しでも取り除く方法を考えること、2回目のアドバイジングでは実際にその方法をすることができたかどうか、できていないのならなぜできなかったのか、できていたらやってみてどうだったのかを聞き、次につなげるための対話を行いました。

Pさんの日本語学習における目標

①対話で見つけたPさんの悩みの種:

論理的な説明をする場面(アカデミックな場面)で、言いよどんでしまうときのことばのつなぎ方だったり、音がどうしても韓国語っぽくなるのが気になる(日常生活レベルの会話では何の問題もない)。

Pさんとの対話:Pさんはアニメやドラマが好きだということだったので、好きな声や話し方人はいるかという話から初めて、話し方や話の運び方がうまい思う人が身近にいるか探っていくと、それは1人の教師だということが分かり、その先生の話し方を真似してみては?ということになりました。

Pさんの問題:「ということで」のような短いフレーズであっても、まねをするのは失礼なのでは?と思っているようでした。

解決策:言語習得なんて真似をすることが基本だし、モデルにされることを嫌がる先生はいないということを話すとともにの先生にもいちおうこっそり伝えておきました。

やってみること:先生の話し方をしっかり観察し取り入れてみたいフレーズをメモし、実際に使ってみると決めてくれました。

②2回目の対話:

自分ではうまくいったのか、身についたのかは実感はないけれど、気になった時に書き留めていくことで、自分にはないフレーズを集めることができたということです。その先生はお話することはもうないが、帰国後もそのフレーズ集をもって必要な時に参照するとともに、新しいモデルを見つけてアップデートしていくということになりました。

Advisor's Reflection

  • 1番上のレベルのクラスに在籍していて、日本人とのディスカッションなど見ていても、何らそん色のないコミュニケーション能力とディスカッションのスキルを持っていると思っていたPさんにも、悩みがあることに驚いたことに加え、それが「日本人らしい」話し方というものが目標になっていたことを残念に思いました。そのあたりの意識についてもいろいろ話しましたが、今回は何もできませんでした。

  • 先生の話し方を真似するのは、「おちょくっているみたいで失礼」と思っていることにも驚きました。話を聞いていると、先生はいろんな知識を教えてくれたり、自分に足りない点を指摘するとともにそれを補ってくれる人であり、先生自身をそのリソースにするという認識はなかったと言っていました。

  • Pさん自身がこっそり作っていた小さなノートのフレーズ集を見せながら話している様子から、彼女が自身の話し方に対して持っていた「コンプレックス」から少し解放されたのではないかと感じました。