実践レポート④
日本に転勤することになったEさん
アドバイジングの背景
Eさんは香港で日本語を中級まで勉強した後、日本で3年間マーケティングの仕事をしました。日本にいる間に話したり聞いたりする能力が上がったと感じたそうです。でも、その時のクライアントは外国企業ばかりだったので、日本語を書く機会はなかったということでした。
一度香港に戻り、転職をしました。そして、また日本に転勤することになりました。次の職場では日本企業とのやり取りが多くなるため、Eさんはビジネスメールを書くことに特に不安を感じていました。
アドバイジングセッションは計2回、オンラインで行いました。
1回目のアドバイジング・セッション
〈困っていることを把握する〉
まず、ビジネスメールを書くときにどんなことで困っているかを詳しく聞きました。
Eさんは、一般的な挨拶や定型文を使うことはできますが、自分の仕事の分野でよく使われる表現や、実際の状況を簡潔に書くことが難しいと感じていました。そのため、インターネット上にある定型文のまとめや市販のビジネスメールの教材は、自分が学びたいことには合っていないと感じていました。
〈リソースを考える〉
インターネット上のまとめや市販の教材を使うことには気が進まない様子だったため、それ以外に役立ちそうなリソースが周りにないかを一緒に考えていきました。その結果、①仲の良い日本人の友人、②同僚、③地域の日本語教室が候補に挙がりました。
〈リソースの活用方法を考える〉
日本人の友人になら協力を頼みやすいというEさんの意見から、日本人の友人にどのような協力をお願いするかを考えました。
友人はEさんが文章の添削を頼んでも、遠慮のためか、あまり直してくれないということでした。だから、Eさんがビジネスメールを書く状況を説明し、その友人にも同様の状況を想定してメールを書いてもらうことにしました。そして、それをEさんが書いたものと比べてみるということを始めることに決まりました。
同僚と地域の日本語教室は、日本に引っ越した後に可能性を探ることになりました。
2回目のアドバイジングセッション
1回目のセッションの後、Eさんは日本に引っ越して働き始めていました。
その間に友人に協力してもらいながら、何度か1回目のセッションで決めたことをやってみたということでした。同じ状況を想定して友人が書いたメールを読むことで構成や表現などを学んで、実際に仕事で書くEメールに応用できると感じていました。しばらくこの方法を続けてみるということでした。
Advisor's Reflection
事前のやり取りでビジネスに必要な日本語を学びたいということを言っており、私自身はビジネス日本語に特化して日本語を教えた経験がないので不安でした。でも、Eさん自身が学びたいことを明確に持っており、友人にも協力してもらえそうということなどから、心配していたよりはEさんの今後の学習につながるセッションになったと感じました。
アドバイジングで、学習方法をこちらからどこまで提案すればいいか迷いがありました。方法を3つ提案し、それぞれの可能性を一緒に考えるという感じで進めていきましたが、もう少しEさんから引き出せることもあったのではないかと思いました。
Eさんとのアドバイジングセッションは2回で終わりました。Eさんから次のアドバイジング・セッションの連絡が来なかったからです。来日前はいろいろ不安があったようですが、実際に日本で働き始めて様子が分かってきて不安が減った様子だったので、それ以上のアドバイジングは必要がなかったのかもしれませんが…。