瀬尾悠希子

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大学生のときに日本語教育実習や卒論研究を通して、日本語を学ぶことの意味や学習スタイルは人によって様々なのだと知りました。その後、海外や日本国内のイマージョンキャンプ、高等教育機関、生涯教育機関、継承語教育機関、地域日本語教室などで、いろいろな日本語学習者たちと出会い、各々が望む日本語との関わり方を支援することの重要性を確信。現在は東京大学で日本語教育に携わっています。

アドバイジングが必要だと思う理由

ことばを学ぶ目的や方法は人によって違うし、同じ人でも変わっていくのだから

当たり前のことですが、ことばを学ぶ人々はそれぞれの人生を生きていますそのため、日本語を学ぶ目的人によって違いますそして、どんな方法で学びたいか、どんな方法が適しているかというのも様々です。さらに、これらは同じ人の中でも時間が経つにつれて変わっていくこともあります。

学習者が自分自身の学習目的や方法を決めて学習を進めていくことができれば、日本語学習のプロセスはより自分にフィットしたものとなるでしょうただ、日本語を学ぶ目的をはっきりと自覚したり、どのように学んでいくのがいいかを一人で考えることは難しいときもあります。自分一人では思い込みにとらわれたり、限られたアイディアしか思い浮かばなかったりもします。そんなときに、アドバイジングという考え方は役に立つと思います。

豊かな社会を作ることにつながるから

上で述べたことは、アドバイジングが言語学習の成功にどのように役立つかという、どちらかと言えばプラクティカルな視点からの理由でした。私がアドバイジングが必要だと考えるもう1つの理由は、もう少し理念的です。

私は、豊かな社会の条件の1つは、そこに生きる様々な人々が自身の望む生き方を自分自身で選び取ることができ、その選択を実現するために必要なリソースや環境や周囲のサポートが得られる社会であることではないかと考えています。そのような社会の一端を言語教育も担うのであれば、学習者ひとりひとりの選択を十分に尊重し支援していくことが不可欠でしょう。言語学習アドバイジングは豊かな言語学習、ひいては豊かな社会を作っていくことにつながるのではないかと思います。