NIEを始めよう

1.NIEを始めるにあたり

NIEの話をすると、「教育に新聞を活用することで子供たちが変わる!と言われても、どうすればいいのかわからない」という声をよく耳にします。さらには、「具体的にはどう新聞を使うの?」、「子供のどんな力が伸びるの?」、「難しそうだし、面倒くさい!」、「忙しくてそれどころではない!」、「そもそも、自分が読んでないし、どう読ませればいいのか分からない!」等々。

正直私もそうでした。教員は、クラス経営、登下校指導、教科指導、給食指導、進学指導、部活動指導、課外授業、放課後の会議、家庭訪問等々で追われる毎日で、息つく暇などありません。「何か新しいことを始めようかな?」などとゆっくり考える暇など全くありませんでした。

しかし、「できることでいいから。できるときでいいから」というアドバイスをいただき、少しずつ始めました。例えば、クラス経営なら朝のSHRでコラムを配って感想を書かせる、教科指導では天気予報を使って「比較」を指導する、進学指導ではコラムや社説を読ませて小論文を書かせる、部活動指導では各種大会で優勝したチームの監督やキャプテンの談話を読ませる等々。既に、実践されている先生もいらっしゃるのではないでしょうか。

実践を始めて、最も実感したNIEのメリットは、「タイムリーかつ旬の素材が、生徒の興味・関心を刺激」することにありました。教科書はいわゆる「加工品」です。タイムリーかつ旬の素材はほとんどありません。終わってしまった世界的規模のイベント(オリンピック等)、すでに忘れられた著名人の活躍等々、デジタル・ネイティブ世代(生まれたとき、また物心ついた時からインターネットやパソコンのある環境で育ってきた世代)の生徒にしてみれば、時代遅れの教材に物足りなさを感じるのは当たり前です。

しかも、ICT化が進み、オンラインですぐに視聴でき、資料は加工・保存しやすく、何度でも再現でき、アレンジが容易で、さらにペーパーレスで環境にもやさしく、教員の負担軽減が可能です。

いかがでしょう。明日からでも始められるNIEを、生徒と一緒に楽しんでみませんか?

2.いつ、何から手を付ける?

「よしわかった、やってみよう!」と思った先生。そうです、「やりたいこと」を「やりたいとき」に始めればいいと思います。無理は禁物です。私の場合は、以下のような場面から手を付けてみました。

授業の導入で・・・その日の新聞の第一面を持っていき(できればカラー写真が大きく掲載されたもの)、それを黒板にマグネットで張り付け、生徒に「~を見ましたか?」、「~を知っていますか?」と(英語で)聞いた後で、ペアを作り、その事実を説明し合ったり、感想や意見を話し合わせたりしました。

・授業の帯活動で・・・「Word of the day(一日一単語)」として、授業の最初の5分間を使い、英字新聞からキャッチーな単語(時にはフレーズも)を紹介する(教える)という活動をやりました。それを使って、生徒に即興で例文を作らせ、発表させるのも面白いです。可能であれば、ALTに語を選んでもらい、活動を進行してもらうと効果は倍増します。

・大きなイベントや事件・事故の直後に・・・オリンピックやワールドカップは4年に一度なので外せません。また、ノーベル賞やサミット等々その気になれば一年中話題が尽きることはありません。

・定期考査前後に・・・新聞には、学習、学び、勉強法、脳科学等々「教育・受験」に関する記事が多く、それを読ませることで生徒のモチベーションを刺激しました。教師の根性論や経験論は時代遅れのものが多く、最新の科学的知見に基づいた記事を読むことで、生徒は時代のトレンドを知ります。また、これらの記事は入試で扱われることが非常に多いのです。

・学年・進路指導部の行事で・・・新聞社から記者を派遣してもらい、新聞記者のライフキャリヤを話してもらいます。

・総合的な探究の時間で・・・これは、高等学校で行われる教科や科目の枠を越えた横断的・総合的な学びの時間のことです。 特定の教科の枠にとらわれず、生徒たち自身が主体的に課題を設定し、成果や研究結果を発表することを狙いとしています。この課題設定や調べ学習で最も有効かつ信頼性が高いのが新聞記事です。ただし、紙媒体を使うのは非効率的なので、新聞社のデジタル版やデータベース(有料)を使うと効果的に情報収集ができます。

3.生徒の学力は伸びるのか?

ご承知の通り、教育に「特効薬」はありません。ただ、新聞を読んでいないよりも、読んでいるほうが学力が高いという結果が公的機関で行った調査で認められています。

しかし、学力向上を求めることも大事ですが、新聞を読んで知識を増やし、その内容に対して興味・関心れば、学ぶ意欲は自然と向上することは容易に想像できます。また、ペアやグループでコミュニケーション活動をすることで、コミュニケーション能力が格段にアップすると思います。

研究成果や科学的根拠が必要な方は、以下のサイトをご覧ください。

【NIE】:「調査が示すNIEの教育効果

【朝日新聞:「本当に学力は上がるのか? 全国学力テストを分析

【南日本新聞】:「池上彰さんに聞く

【北日本新聞】:「お子様の学力に不安はありませんか?

【新聞科学研究所】:「新聞を読む子どもの学力が高いのは、なぜ?

4.何かいい資料はないの?

日本新聞協会や各新聞社が発行・配信している資料や活用事例集を読んで作戦を練るのもいいと思います。おすすめかつ無料の資料を示しておきます。

【日本新聞協会】:「これならできる!新聞活用―NIE入門ガイド」が無料でダウンロードできます。

【読売新聞】:「新聞タイム」動画DVD&リーフレット、「道徳に新聞活用」、「新聞たんけん隊」、「深める新聞活用」、「だれでも新聞活用」を郵送料のみで配布、またはダウンロードできます。

【朝日新聞】:「朝日けんさくくん」の「活用事例」では、活用事例が12本、各学校の事例紹介が20本以上見ることができます。

5.NIE実践指定校になるのもいい!

是非なることをお勧めします。一人でコツコツやるのもいいですが、実践指定校になることで、校内の仲間で情報をシェアしたり、活動を進めるための組織が生まれたりします。また、校外ではNIE推進員会で活躍されている実践者との交流が生まれ、必要な情報が定期的に供給されます。

NIE実践指定校には、以下のような特典があります。

1.一般日刊紙を一定期間無料で提供されます。英字新聞や子供新聞に変更も可能です。

2.全国大会へ無料で派遣されます。実践指定校一年目は全国大会へ1名派遣されます。

3.新聞記者が優先的に派遣されます。探求学習や平和学習に関する講師として活用できます。

4.活動費が支給されます。年間数万円が支給されます。

いかがでしょう。NIE実践指定校に応募しませんか?

2023年度NIE実践指定校                                           

【小学校】仙台市立生出小学校 石巻市立大谷地小学校 塩竈市立第二小学校 女川町立女川小学校          

【中学校】石巻市立桃生中学校 登米市立南方中学校 宮城学院中学校                       

【高等学校】宮城県泉高等学校 宮城県一迫商業高等学校 宮城県仙台第三高等学校 尚絅学院中学校・高等学校