1888年(明治21年)
東京市区改正条例 制定
日本で最初の都市計画法制として、「東京市区改正条例」が制定されました。当時は都市の近代化に対応するインフラ環境(道路、上水道など)の整備が重視されていたため、現代の都市計画マスタープランのような都市全体の将来像が描かれておらず、土地利用の規制制度等もありませんでした。
1919年(大正8年)
旧都市計画法 制定
現在の都市計画法の前身である旧都市計画法が制定されました。人口の急激な増加や都市の拡大に対応するため、都市計画区域や用途地域など、都市環境を管理する制度が導入されました。一方で、当時は都市計画の策定が中央官庁の事務として位置づけられ、国主導の画一的な計画を招く側面もありました。
市街地建築物法 制定
現在の建築基準法の前身である市街地建築物法が制定され、旧都市計画法と共に人口増加や都市拡大をコントロールする制度として定められました。当時はまだ容積率制限の規定がなく、高さ制限や建蔽率制限によって建築物のボリュームが管理されていました。
1920年(大正9年)
市街地建築物法施行令 制定
市街地建築物法の施行令が制定され、採光・通風等の衛生環境を確保する観点から、住居地域では65尺(約20m)、それ以外の地域では100尺(約30m)という絶対高さ制限が設けられました。例外規定として、周囲に公園、広場、道路等の広い空地があって、行政官庁が交通上、衛生上、保安上支障がないと認めた場合は高さ制限の緩和が可能とされました。
1938年(昭和13年)
空地地区制度 創設
市街地建築物法が改正され、日本で最初の容積率制度となる空地地区制度が創設されました。本制度は、特定の地区に対して建物の延べ面積の敷地面積に対する割合と敷地境界線からの壁面の距離に関する制限を設けるものでした。戦時下だった当時の創設目的は、郊外の住宅地環境の維持と延焼の防止と防空にあったため、現在の容積率制限のように用途地域に応じて建物高さとインフラのバランスを図る考え方とは異なる制度でした。
1950年(昭和25年)
建築基準法 制定
市街地建築物法が廃止され、建築基準法が制定されました。これにより建築主事による建築確認制度が導入され、行政が個別の建築計画に関する法令の適合性をチェックする体制が整えられていきました。
1961年(昭和36年)
特定街区制度 創設
当時、建築物のボリュームは絶対高さ制限によって管理されていましたが、その一方で階高が低く延べ床面積が極大化された建物の出現や都心の空地不足が懸念されていました。また、建築技術の進展によって超高層建築の実現を求める機運も高まっていたことなどから、高さ制限を解除する代わりに容積率規制と壁面後退位置を定める「特定街区制度」が創設されました。現在の特定街区制度は、容積率のボーナスを受けられる都市開発手法の一つとして捉えられていますが、当時は全面的な容積率制度がない時代で、特定の地区を指定して容積率規制を設ける制度として導入されていました。
1968年(昭和43年)
都市計画法 制定
人口や産業の集中に伴う市街地の無秩序な拡散を抑制することを目的として、旧都市計画法を全面的に見直した現在の都市計画法が制定されました。区域区分制度や開発許可制度が導入され、都市計画決定主体の地方分権化などが推進されました。
1969年(昭和44年)
都市再開発法 制定
土地の合理的かつ高度利用を図ることを目的として、都市再開発法が制定されました。当時市街地では狭小な敷地に小規模な中高層建築物が乱立するなど、不合理な土地利用による都市環境の悪化や人口集中に伴う都市機能の不足が懸念されていました。都市再開発法で定められた権利変換手法によって、土地や建物の所有者等の権利を担保しながら、土地の集約化や建築物と公共施設の一体的整備を図ることができるようになりました。
1970年(昭和45年)
用途地域細分化
容積率制全面導入
都市計画法及び建築基準法の改正により、用途地域が4種類から8種類に細分化されました。また、各用途地域に対して容積率が指定されたことで、それまで個別に指定された特定の地区にのみ適用されていた容積率制度が全面的に導入されることとなりました。
1971年(昭和46年)
総合設計制度 創設
許可準則・技術基準 通達
敷地内に一定規模以上の公開空地(歩行者が日常自由に通行、または利用できる空間)を確保することで、容積率制限や高さ制限などの緩和を受けることができる総合設計制度が創設されました。
建築基準法は、制定当初から防火規定や構造規定などによって建築物や人々の安全を守るための最低限の基準として定められおり、例外規定に関しては消極的に扱われる場面が多いものでした。一方で、総合設計制度の創設を機に、容積率等のボーナスを付与することで、都市にオープンスペースを創出するという新たな例外規定の運用方法が導入され、積極的に運用されることとなりました。
それまでも市街地再開発事業や特定街区といった民間誘導制度は設けられていましたが、大規模な街区単位の開発を対象としたことや、都市計画決定など大きな手続きを要することから適用事例はあまり多くありませんでした。総合設計制度では、特定行政庁の許可事務として位置づけられたことで、比較的簡易な手続きで補助金を投入せず民間事業を誘導する代表的なインセンティブ制度として確立されていきました。
総合設計制度の創設と共に特定行政庁が許可する上の基準を定めた許可準則と技術基準が通達されました。その後、各特定行政庁が地域の特性を反映して、自主的に許可基準を設けるなど弾力的に運用されていきました。
1973年(昭和48年)
建築基準法 改正
建築基準法が改正され、第一種低層住居専用地域における総合設計制度適用の敷地規模要件が緩和されました。
1977年(昭和52年)
制度集約化
それまで各制限(容積率、高さ制限、絶対高さ制限)の例外規定として定められていた総合設計制度が法第59条の2の規定として集約整備されました。(建築基準法 改正)
1983年(昭和58年)
市街地住宅総合設計制度 創設
大都市地域における敷地の細分化や職住の遠隔化による通勤時間の長時間化等の課題に対処するため、市街地の居住機能の改善を促進する「市街地住宅総合設計制度」が創設されました。創設された背景として、当時の政権がアーバンルネッサンス構想を標榜し、民間活力の導入による内需拡大と経済成長を図ったことが挙げられています。
歩道状空地 追加定義
許可準則・技術基準が改正され、公開空地の種別として歩道状空地が追加定義されました。こうした公開空地の多様化は、東京都や大阪市で先行運用されていた内容が国の基準に反映されたもので、自治体ごとに定められていた運用基準の有効性が評価され、全国的に適用された経緯がありました。
1986年(昭和61年)
再開発方針等適合型総合設計制度 創設
通常の一般型総合設計制度より高い容積率の割増のインセンティブが付与される「再開発方針等適合型総合設計制度」が創設されました。
アトリウム空地 追加定義
容積率割増の引上げや公開空地の評価方法の詳細化が行われ、公開空地の種別としてアトリウムが追加定義されました。(許可準則・技術基準 改正)
1987年(昭和62年)
総合設計制度の活用推進 通達
国から各特定行政庁に対して総合設計制度をより積極的に活用するよう通知されました。
必要空地面積の引き下げ
容積率のボーナスを受けない高さ制限緩和のみの総合設計制度を適用する場合について、必要空地面積を引き下げる緩和規定が設けられました。(建築基準法施行令 改正)
1990年(平成2年)
自動車車庫に対する緩和制度 導入
モータリゼーションの進展に伴う路上駐車問題を背景として、一般公共の用に供される自動車車庫を設置する建築物に対して容積率の割増を行う緩和規定が導入されました。(許可準則・技術基準 改正)
1995年(平成7年)
都心居住型総合設計制度 創設
三大都市圏の都心地域において良好な住宅供給を促進するため「都心居住型総合設計制度」が創設されました。大都市地域における職住の遠隔化に伴う通勤時間の長時間化や、人口の空洞化による地域のコミュニティの衰退等の問題が時代背景として挙げられています。
中庭・屋上空地に対する評価方法見直し
中庭や屋上に設ける空地を「公開空地に準ずる有効な空地」として認める評価方法の見直しが行われました。また、共同住宅に附属して地下に自動車車庫を設置する場合に容積率を追加で割増する緩和規定も追加されました。(許可準則 改正)
1996年(平成8年)
仙台市総合設計制度取扱い基準 制定
平成8年8月1日付で仙台市における総合設計制度の取扱い基準が制定されました。
1997年(平成9年)
敷地集約化に対する緩和制度 導入
バブル期以降の大都市地域を中心に発生した低未利用地・遊休地の存在や、用途混在地域・密集市街地の存在、緑地減少、宅地の細分化などの課題に対処するため、敷地集約化の促進を目的として、敷地規模に応じて容積率の割増を行う緩和規定が導入されました。(許可準則・技術基準 改正)
2001年(平成13年)
保育所等に対する緩和制度 導入
保育所の待機児童問題等の社会課題に対する対策として、駅や駅前のビル内において保育所等生活支援施設を設置する建築物に対して容積率を割増する特例制度が導入されました。(許可準則 改正)
2002年(平成14年)
都市再生特別措置法 制定
急速な情報化や国際化、少子高齢化等の社会経済情勢の変化に対応した、都市機能の高度化および都市の居住環境の向上を図ることを目的として、都市再生特別措置法が制定されました。
2003年(平成15年)
確認型総合設計制度 創設
総合設計制度の適用審査手続き迅速化のため、一定の敷地規模や空地確保等の基準を満たす住居系建築物に対して、特定行政庁による許可手続きを経ずに建築確認のみで容積率を1.5倍以下まで緩和する「確認型総合設計制度」が創設されました。
2006年(平成18年)
公開空地の特例基準 通達
建築基準法上床面積に算入されるような空間でも、特的行政庁が開放性や利用形態等を総合的に判断して公開空地として評価し、総合設計制度を柔軟に活用するよう国から各特定行政庁に対して通達されました。広場等に屋根をかけて一時的にイベント等に利用されるものは、建築基準法上屋内的用途として床面積に算入されますが、総合設計制度の許可判断においては、計画内容を総合的に判断して開放性を損うものではなければ、公開空地に評価してよいことが明記されました。
2008年(平成20年)
環境配慮型建築物に対する緩和制度 導入
建築物総合環境性能評価システム(CASBEE)等でAランク以上の評価取得といった高度かつ総合的に環境に配慮した建築物に対して容積率を割増する特例制度が導入されました。(許可準則・技術基準 改正)
2011年(平成23年)
街区型設計総合設計制度 創設
エネルギー効率の悪い老朽化したオフィスビル等の建替えを促進するため、街区単位で共同の建替え事業を行う建築計画に対して容積率割増のインセンティブを付与する「街区型設計総合設計制度」が創設されました。
2014年(平成26年)
マンション建替型総合設計制度 創設
マンション建替法の改正により、同法よる認定を受けた建築物に対して容積率の割増を適用する「マンション建替型総合設計制度」が創設されました。
2017年(平成29年)
保育所併設型マンションの促進 通達
各特定行政庁における総合設計制度の許可条件において、大規模マンションの開発に対して保育施設の設置を促進するような許可基準を検討するよう通達されました。
2020年(令和2年)
災害対応型建築物に対する緩和制度 導入
災害時等における地域住民の一時滞在施設等や雨水貯留施設等を設置するなどの災害対策を講じる建築計画に対して容積率の割増のインセンティブを付与する特例制度が導入されました。(許可準則・技術基準 改正)
2021年(令和3年)
長期優良住宅型総合設計制度 創設
長期優良住宅普及促進法の改正により、同法の同法よる認定を受けた建築物に対して容積率の割増を適用する「長期優良住宅型総合設計制度」が創設されました。