――それは、天まで届かん、こくこく続く階段と「幸せ」への世界。
記憶を失った青年が、気付いたら螺旋階段の最下層に立っていたので、とりあえずのぼる話。
まだない
塔があった。塔内に部屋は見当たらない。あるのはただ上へ上へと続く、螺旋状の階段。気がつけばその最下層にいた。
他に行くべき所もない。僕は一歩一歩、足場を確かめていくように階段を登り始めた。
階段を登っていると、途中、蒼白色の、長い髪をした少女に出会った。
彼女はこちらに気付くと一気に階段を駆け降り、その勢いで僕の体に飛び付いてきた。
思わず後ろへ転がってしまいそうになったが、何とか持ちこたえる。
視線を落とすと、碧く透き通った少女の瞳がこちらを見つめていた。
どうしたの。僕が問いかけると彼女は、この階段の上を目指しているのか、というような趣旨の疑問を投げ掛けて、首を傾げる。
僕は少し考えて、とりあえずは、と答えた。
すると少女は僕の背後に回り込み、背中をよじ登っていた。別に払う理由もないので好きにさせておく。
僕の頭に顎を置いて、肩車状態になった少女は次に、自分も同じだから一緒に行こう、と手をぱたぱたさせた。
そんな勝手に決めつけられるのは少々気に食わないが、やはり断る理由もない。
僕は明らかに寛いでいる少女を肩に乗せ、再び階段を登り出した。
カルステス
僕/男/22?
気づけば階段の最下層にいた青年。
とにかく階段を昇るしかない、と本能的に感じ、段を上がる。
ソプレ・エスカレラ
自分/女/外見7
カルステスの前に現れた少女。行く場所が同じだから、と勝手にカルステスに同行。