あさひかわデザインウィーク 

まちなかキャンパス2023

Asahikawa City Center Campus(ACCC)

Learning SDGs together in the middle of UNESCO Creative City of Design, Asahikawa


ユネスコデザイン創造都市

あさひかわ。

その誇りを、みんなで、

あしたへ、未来へ、

まちの真ん中から。

(1)前史:家具のまち・デザインのまち

旭川の開拓は、1898年の鉄道開通、1901年の第七師団進駐により、本格的な都市作りからはじまりました。たくさんの建築物、家具などの需要に応えるに十分な森林資源があり、それを河川によって切り出してくることにより、旭川は木工の街として知られるようになりました。

やがて貿易自由化と円高が進行し、外国から木材が大量に輸入され、国産材を用いた家具は割高になり、その販売は長期にわたり低迷することになります。しかし、旭川家具は持ちこたえ、現代でも、日本5大家具産業集積地のひとつです。それを支えたのがデザインの研究でした。旭川家具工業協同組合が「旭川デザインセンター」を常設しているのはその典型的な見本と言えます。

デザインにおける進取の気性は、やがてその興味を家具デザインからデザイン全般へと拡大し、1997年には「旭川デザインビジョン」という刊行物を発刊しています。巻頭言には「さまざまな分野を調整し具体化するデザインの考え方を取り入れる」と明記し、具体的な対象として「自然との共生」「冬の暮らし」「誰もが暮らしやすいまち」「美しく活気のあるまち」の4つの方向性を掲げ、その実現のために「自然環境」「生活文化」「地域産業」へのデザインという考え方の導入について述べ、そのために必要な行政システム、市民参加のあり方、協議会の設立などを網羅的に記述しています。街の暮らしやすさを競い、有能な人材を招くということが全国で流行していた時代に、横浜市や名古屋市などでも同様の動きがありました。

JR旭川駅の高架化に伴う都心部の再開発プロジェクトである「北彩都」は都市計画の専門家から高い評価を受けています(日本都市計画学会・学会賞計画設計賞, 土木学会デザイン賞最優秀賞、都市景観大賞国土交通大臣賞)。「旭川家具産地展」は2015年に「あさひかわデザインウィーク」に名前を改めます。「国際家具デザインフェア旭川」などのイベントも熱心かつ活発に開催するようになりました。

近年では、ものづくりをデザインの観点から考え、創造力豊かな人材を育成すべく「ものづくり大学」を開学しようという機運が生まれ、2022年に実現した市立大学に「地域創造デザイン学部」の設置構想が掲げられました。2018年以降特許庁が掲げた「デザイン経営」はそれなりのブームを引き起こし、旭川市もChefi Design Officerを採用しました。

(2)「ユネスコデザイン創造都市」

 このような背景のもと、2019年、広い意味でのデザインで地域をより盛り上げようという地方創生の動きについて国際的な認証を得ようとの機運が芽生え、旭川市に「あさひかわ創造都市推進協議会」が設置されました。

 あさひかわ創造都市推進協議会は設立後直ちに、国連教育科学文化機関(UNESCO)の「ユネスコクリエイティブシティーズネットワーク」(UCCN)という都市認証の取得を目標とし、所与の提案をすることにしました。文部科学省における書類審査を受け、日本国としての推薦を得て、2019年5月に提案書をユネスコに提出。他の加盟都市によるレビューを経て、今後デザインで存在感を発揮できると認められ、2019年10月30日に旭川市の加盟が認められました。

(3) ユネスコ認定の価値

UCCNには文学、映画、音楽、クラフト&フォークアート、デザイン、メディアアート、食文化の7分野で350の加盟都市があり、デザイン分野には2024年4月現在で次の49都市があります 。

ベルリン(ドイツ)、ブエノスアイレス(アルゼンチン)、モントリオール(カナダ)、神戸市、名古屋市(日本)、深セン市、上海、北京(中国)、ソウル(韓国)、サンテティエンヌ(フランス)、グラーツ(オーストリア)、ビルバオ(スペイン)、クリチバ(ブラジル)、ダンディー(英国)、ヘルシンキ(フィンランド)、トリノ(イタリア)、バンドン(インドネシア)、ブダペスト(ハンガリー)、デトロイト(アメリカ)、カウナス(リトアニア)、プエブラ(メキシコ)、シンガポール(シンガポール)、ブラジリア(ブラジル)、ケープタウン(南アフリカ)、ドバイ(アラブ首長国連邦)、グレータージロング(オーストラリア)、イスタンブール(トルコ)、コルディング(デンマーク)、コルトレイク(ベルギー)、メキシコシティ(メキシコ)、武漢(中国)、旭川市 (日本)、バクー (アゼルバイジャン)、バンコク (タイ)、セブ市 (フィリピン)、フォルタレザ (ブラジル)、ハノイ (ベトナム)、ムハッラク (バーレーン)、ケレタロ (メキシコ)、サンホセ (コスタリカ)、コビリャン(ポルトガル)、ドーハ(カタール)ファンガヌイ(ニュージーランド)アシガバード(トルクメニスタン)ツェティニェ(モンテネグロ)チェンライ(タイ)重慶(中国)

ベルリン、イスタンブール、ブタペスト、北京、上海、バンコク、シンガポール、ソウルなど各国の首都級の大都市がひしめいています。日本では名古屋と神戸に次ぐ3番目で、道内ではメディアアートで札幌が加盟認定されています。

旭川がこのようなネットワークの一員に認められたたと言うことは、旭川にはこのような著名都市に匹敵する力があると国際的に認められたことを意味します。UCCNは未来志向の枠組みで、デザインによるまち作りを行う都市相互の結びつきを強化し、ベストプラクティスを共有することを目的とし、同時に国連全体の目標であるSDGsも共有することになります。

すなわち旭川は、デザインという文化の力で街を豊かにし、持続可能な未来を拓くことを国際的に約束し、その模範となる責務を担うことになったわけです。


(4) デザイン創造都市に向けて何をなすべきか?

ところで、デザインという言葉は誰でも知っていますが、その意味するところは何でしょう。デザインの力で街を拓くってどういうことでしょう。何よりも、それでは私たちは具体的に何をすればいいのでしょう。大人はいろいろなことを知っている。市場、コスト、自分の能力など、いろいろと考え込んでしまいます。2023年、旭川のユネスコ創造都市は更新審査を迎え、現在審査を待っています。デザインによる持続可能なまちづくりについて任せきりではなく、市民の主体的な活動が求められます。

これに対し、子どもは余計な先入観を持たず、無限の想像力を持っています。デザインとまちづくりとSDGsのような大人にとっては一見脈略のないような言葉も、それなりにつなげて理解する力を持っています。


そして、今時の高校生や大学生は、ずいぶんとSDGsを学んでおります。高校生なら誰でも知っている「探求」です。やらされ感は拭いきれません。大学入試にでません。野球のようにコンテストもありません。多くの場合、それを語る場校内の発表会に限定されてるのです。長期的なモチベーションの低下は避けられません。


(5)「まちなかキャンパス」構想

ここで、街の真ん中にみんなが集まり、高校生、大学生のお兄さん、お姉さんが、わかりやすく自分たちの取り組みを紹介するという子どもはそれを吸収し、やがて問題意識を持った大人としてみんな成人していく、そんな機会があったらいいのでは?これが「まちなかキャンパス」構想の始まりです。


そんなことを願って、街全体をキャンパスにしてしまおう!と考えました。旭川市中心部には買物公園という歩行者天国があり、ここにみんなが集い、教え合い、学び合う(互学互修)の場として、幸せを象徴する黄色いフラッグを立て、まちなかキャンパスと名付け、9月18日・19日に30のテントにおよそ300人の高校生たち、3000人の子どもたちが出会う予定でした。

(6) コロナ禍によりオンライン開催へ

2021年の夏は猛暑でした。オリンピックをやる、やらないで国民の意見が分断されたまま、無観客で行われましたが、「公園飲み」などモラルが低下した夏でした。残念ながらコロナ禍はデルタ株の猛威により各地で医療崩壊が発生、過去最悪の状況にあり、まちなかキャンパスにもさまざまな懸念が寄せられるようになりました。


中止は簡単ですが、それでは何も生まれません。SDGsのゴールである2030年まであと9年しかありません。「まちなか」への物理的な植樹はできませんでしたが、それならせめて種をまこうと考え、場所をサイバースペースに移し、映像制作会社「イマージュ」のスタジオから、高校生等による子ども向けYoutubeライブ中継を行うことに決めました。

(7) まちなかキャンパス2021

かくして「ADWの大半のイベントが中止となった今、まちなかキャンパスに注目」と「メディアあさひかわ」に書かれたのは9月号でした。15日発売で、その週末には浜田、定居はイマージュ社のスタジオに詰めていました。株式会社コンピュータ・ビジネスの西館さん、旭川ユネスコ協会会長の林朋子先生・・・・非常に多くの仲間と一緒でした。9月になってすぐ、夏休み明けの小中学生(5年生以上)にリーフレットを配布、14時間分のシナリオを書いて、ユネスコデザイン創造都市の13都市に動画提供を呼び掛けるなど、やれるだけのことはやりました。


スタジオを借り、スタッフに来て頂く、アナウンサーも必要だ。そういうことで経費を集めるため、株式会社うぶごえの全面協力に基づきクラウンドファンディングにも挑戦しました。


Youtube中継(初日2日目)は終わった後も数字が増え、最終的に3000アクセスほどになりましたが、さて、誰が見てくれたのか。インターネット上には非常に多くの人がいますが、真面目なコンテンツばかりだし、ものすごく長いし、Youtuberとしては初めてだから冷やかそうにもスキがないし。荒らしとかネガティブコメントはほとんどなかったです。一方で、各学校の先生方、子育て中の教職員などから聞きました、あれがおもしろかったです、そういう証言が多数寄せられたので、どうやら旭川の子どもたちに伝わったらしいという確信を得た次第です。

(8) まちなかキャンパス2022を実施

 その後デルタ株は収束し、北海道にも観光客が帰ってきました。そんな頃でどうにかなるかな、来年は対面だと考えて旭川平和通商店街振興組合を訪ね、6月18・19の土日に1条から7条まで(延長1km)を全部貸してくれと申し入れ、快諾を得ました。しかもそれだけでは飽き足らずアッシュアトリウムICTパーク、まちなか交流館北海道中小企業家同友会道北あさひかわ支部 など屋内会場も次々に予約。それと並行して市内の高校13校を全部回り、出展を呼びかけました。日頃の探求学習の成果をまちなかキャンパスで存分に発表しよう!という提案は好意的に受け止められ、最終的に9校1高専4大学10団体の541名がテント25基、屋内展示11を実施する計画が出来上がりました。子どもたちにはスタンプラリーを実施、お兄さん、お姉さんのところでお勉強や体験をしたら、景品がもらえる仕組みを作りました。リコージャパン株式会社とコンピュータ・ビジネス株式会社によるデジタルサイネージの提案を受けたのもこの頃です。


一方で、オミクロン株は過去最多のペースで猛威を振るい、旭川市内でも学級閉鎖が相次ぎました。しかし、計画を立てたからにはやり抜こうと考え、飲食禁止、音楽演奏禁止、テントの横幕なし(換気のため)などのルールを作りました。旭川信用金庫が同時開催した「まちなか賑わいSTREET」との相乗効果も期待しました。


リーフレットは27000部を印刷、旭川市内のすべての小中学生に配布し、当日来た人にはスタンプシートと共にもう1回配りました。そして迎えた当日、まずまずの晴天に恵まれ、子どもたちは保護者を放り出してスタンプラリーに熱中し、テナントには当初の予定をはるかに超えた数のお客さんが押し掛けることになりました。景品を獲得したのは550名、うち小学生は304名でした。しかし実際にはスタンプラリーと無関係な親子がたくさん来ていました。旭川市が数取り器でサンプリング調査を行い、エリア数と時間を乗じて計算した結果総来場者数63,000人と判定されました。親イベントの旭川デザインウィークの参加者数の8割、創業2年目、ストリートで初開催でありながらこの数字は驚異的です。


なお2022年の事業では、旭川青年会議所「ナナカマド基金」のご支援300,000円を受領し、その成果物をYoutubeにて公表しています。

(9) まちなかキャンパス2023(23年6月17日-18日)

 この話はちょっとした話題になりました。動員数もすごいが、似たコンセプトの催しが見つからないということを理由とします。

 ユネスコデザイン創造都市の国際会議が対面で再開し、10月にリトアニアのカウナスで、23年3月にオーストラリアのジーロンで、旭川でやったことを少し説明したのですが、ほぼすべての人から初めて聞く話だと言われました。どうも、世界中どこにもないようなのです。当日までの準備と運営に奔走した旭川工業高等専門学校の4年生(大学1年生相当)6名が公益財団法人日本デザイン振興会が初めて開催した「グッドデザイン・ニューホープ賞」に「仕組みのデザイン」というカテゴリで入賞いたしました。


 グッドデザインニューホープ賞
 22年受賞作一覧
 「まちなかキャンパス」が提出したポスター


 この学生たちが中心となり23年度には学生委員会が発足、旭川高専、市立大学、教育大学、旭川北高校、旭川明成高校の学生からなり、2023年のまちなかキャンパスの企画に参与しました。「学生委員会」が発足しています。また事業においては公益財団法人太陽財団の助成金を頂いております。飲食禁止、音楽演奏禁止は「静かでいいお祭り」を維持するために堅持しました。旭川信用金庫が同時開催した「まちなか賑わいSTREET」も姉妹イベントとして昨年と同様に共存しています。


リーフレットは33000部を印刷、旭川市内のすべての小中学生よ高校生に配布し、当日来た人にはスタンプシートと共にもう1回配りました。当日は晴天に恵まれ、子どもたちスタンプラリーに駆け回りました。8校1高専7大学13団体の581名がテント43基、屋内展示7,イベント数55を出展し、参加者数は68,000名でした。