研究内容 (神経チーム)

研究の概要

意志決定や記憶といった脳の機能は、神経のネットワーク構造に依存しています。神経細胞は、信号の入力に必要な樹状突起と出力に必要な軸索を持ち、シナプスと呼ばれる細胞間の接続を介して信号のやりとりをしています。

情報の分散や統合のため、軸索や樹状突起は複雑に分岐し、多数の細胞とシナプスを形成するため、ネットワークの構造は非常に複雑になります。個人ごとにネットワークは少しずつ異なり、これが私たちの個性を決めているとも言えます。

脳内の神経ネットワーク(中央)と組織像(右)

どのような仕組みでネットワーク構造が制御されるのでしょうか?

ヒトの遺伝子数が約3万に対し、神経細胞の数は1000億以上、シナプスの数は100兆以上あることから分かるように、個々の遺伝子の調節的な機能だけでは説明できません。ネットワークの構築は1つの受精卵から発生が進む過程で自律的に進行します。さらに外界からの刺激に応じて変化しながら長期間維持されます

個々の神経細胞内では、様々な機能を持つ分子が相互に作用し合って全体として調和のとれたシステムを構成しています。このような細胞内のシステムと細胞外からのシグナルによって、神経細胞が持つ多様な機能が制御されます。さらに細胞間相互作用を介して神経回路などより高次の構造が調節されます

脳の研究は飛躍的に進んでいますが、個々の神経細胞の構造や機能がどのように調節されるかという基本的な原理について、未解明な部分が多く残されており、その理解を目指しています。

研究項目

神経細胞を制御するシステムについての研究

神経ネットワークは自律的かつ柔軟に構築され成体の脳においても部分的に変化しながら生涯にわたって維持されます。このような神経ネットワークの特性は細胞内のどのような機構によってもたらされるのでしょうか? 極性を持ち、複雑に分岐した神経の形態がどのように制御されるかを理解するためには、どのようにして細胞内の特定の部位において分子の機能が調節されるのかを理解する必要があります。特にこのような神経細胞内の空間依存的な制御に関わるシステムについて研究し、その一端を明らかにしてきました 。細胞骨格、オルガネラ、シナプス終末などが軸索内の特定の部位おいてどのようにして制御されるのかについて研究を進めています。

・脳の老化や疾患の理解にむけた研究

神経細胞の形態や機能を維持するシステムが破綻すると、シナプスの異常や軸索の変性、さらには神経細胞死が引き起こされます。多くの神経変性疾患においてその病態の進行は複雑なネットワークを介して起こるため、全体像の理解は難しい現状があります。神経細胞のシステムの異常と疾患がどのように関連するのかを研究することで、新しい視点から病態の進行機序の理解に貢献することを目指しています。

・神経細胞の機能調節のための研究

神経の形態制御についての研究を推進するため、軸索の形態や機能を調節する分子の探索や技術の開発をを進めています。このような研究は神経の機能改善や再生にも貢献する可能性が考えられます。

所在地

福井大学


工学部 物質・生命化学科

大学院工学研究科 産業創成工学専攻 


〒910-8507

福井県福井市文京3-9-1

工学部4号館 S214室 (小西居室)

                              S205A室 (宮田居室)

                      

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