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目次
環境水中のレジオネラ属菌を計測する方法として、令和元年9 月 19 日薬生衛発 0919 第 1 号厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生課長通知の別添「公衆浴場における浴槽水等のレジオネラ属菌検査方法について」が示された。その中に、検査には「信頼性確保のため、精度管理を実施することが求められている」と記載されている。また、内部精度管理の一例として回収率の確認方法について示されている。この手引きではその確認方法を具体的に示した。この手引きを参考にして、自施設で内部精度管理標準作業書等を作成し、精度管理を遂行することが望ましい。
入浴施設の環境水におけるレジオネラ属菌検査の信頼性を担保するため、検査精度を確認し、検査担当者の技術水準を維持、向上させることを目的とする。
レジオネラ属菌を添加した内部精度管理用試料水(以下、試料水)について、レジオネラ属菌検査(培養定量)を自施設の検査標準作業書に従って行い、検査結果と添加菌数から回収率を算出して評価する。合わせて、検査手技の安定性を確認する。
(1)準備する試薬・器具等
自施設のレジオネラ属菌の検査標準作業手順に必要な器具、試薬、培地に加え、次に示す内部精度管理のために必要な品目を準備する。
① 滅菌した蒸留水、生理食塩水、PBS など 1000 mL。
② レジオネラ属菌、例えばLegionella pneumophila Serogroup 1
(Serogroup 1 である必要はないが、BCYEα寒天培地に十分に発育する L. pneumophila を使用すること)
(病原体の取り扱いに習熟した試験者が、安全キャビネットを使用して操作すること)
(2)添加菌液および試料水の調製
培養したレジオネラ属菌を接種し、試料水を作製する。
① 添加菌液の調製
レジオネラ属菌を BCYEα寒天培地に画線し、30±1℃で 3 日間培養する注1。この発育菌を滅菌生理食塩水に懸濁し、MacFaland 2.0 もしくは吸光度 0.320 程度(波長 625nm)に調整する(レジオネラ属菌数はおよそ 109 CFU/mL:添加菌原液)。これを滅菌生理食塩水にて 105倍希釈し(104 CFU/mL:添加菌希釈液)、よく混和したのち、2 mL を 9 mL の滅菌生理食塩水に接種しよく混和する(添加菌液)。
注1 添加するレジオネラ属菌は 30±1℃で3 日間培養して使用するのが基本であるが、BCYEα寒天培地上のコロニーの大きさなどにより、発育不十分と判断した場合は再度 BCYEα寒天培地に画線し、30±1℃で 3 日間培養した菌を使用する。
② 添加菌数の測定
この添加菌液から 1 mL を分取し、その 100 µL を BCYEα寒天培地注2(2 枚以上)に接種後、直ちにコンラージ棒を用いてソフトタッチで均等に広げ、試料が吸収されるまで静置する。その培地を 36±1℃4~7 日間培養後注3、菌数を数える。この菌数を添加菌数(A)注4,5として回収率の算出に用いる。
注2 同様の操作を自施設で使用している選択分離培地でも実施し、使用培地の選択性について把握することが望ましい。
注3 菌数、コロニーの大きさなどにより、7 日間培養すると菌数測定が困難になる場合があることから、自施設の培地でのコロニーの発育状況を観察し、培養 3 日目以降毎日菌数を測定することが望ましい。
注4 回収率を計算する場合の基本となる「添加菌液」の菌数について、自施設内で一定の範囲内に収まることがポイントとなる。この菌数が平板によってばらつく時は、コンラージによる試料の塗抹技術の検証が必要となる。一定の範囲に収まるようになるまで、塗抹する平板数を増やして CV や Zスコアなどで管理状況を判断する。
注5 添加菌の菌数は培養平板上に 200 CFU 前後となるように菌液を調整することが望ましい。菌懸濁液の濁度は、目視で標準液の濁度に合わせる場合だけでなく、濁度計で調整してもその菌数にはある程度の多少が生じる。必要に応じ、自施設で菌懸濁液の濁度を調整(設定)する。
③試料水の調製
滅菌した採水容器に滅菌生理食塩水等を 990 mL 採取し、①の添加菌液 10 mL を接種後、よく混和して試料水(レジオネラ属菌はおよそ 2×103 CFU/100 mL)とする。
(3)レジオネラ属菌検査
直前の3(2)③で作製した試料水を用いて、レジオネラ属菌検査を行う。検査方法は、自施設の検査標準作業書に従い、レジオネラ属菌数を測定する(B)。検査標準作業書の中で、選択培地のみ使用する場合は、BCYEα 寒天培地を用いたレジオネラ属菌数を測定することで選択培地によるレジオネラ属菌の発育抑制を除外した手技の確認ができる注6。
注6 BCYEα寒天培地を併用した場合、選択分離培地に比べ高い回収率となることが推測されるが、本手順では夾雑菌のない検体を用いていることから、実際の水検体におけるレジオネラ属菌の検出率と相関しない。
(1) レジオネラ属菌定量検査 回収率の確認
レジオネラ属菌を添加した試料水について、検査標準作業書に基づく検査を実施し、回収率を算出する注7。
自施設の検査標準作業書において100倍濃縮する場合の計算式
回収率(%)=B/A×100
注7 ここで求められる回収率は施設内で安定的であることが望ましい。複数でレジオネラ検査を担当する場合、担当者間においても安定した回収率となることが肝要である。
(2) 手技の安定性の確認
添加菌数(A)、菌数(B)の平均値、標準偏差及びzスコアなどにより平板培養時の手技のばらつき度合を確認する。
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本研究は、厚生労働科学研究費補助金 健康安全・危機管理対策総合研究事業「公衆浴場におけるレジオネラ症対策に資する検査・消毒方法等の衛生管理手法の開発のための研究(研究代表者:前川純子、令和元年~)」の一部として実施しました。入浴施設や研究協力者ら多数の関係者からご協力頂きました。
最終更新日、2023/8/4