海底熱水鉱床の探査

日本近海において,海底熱水鉱床という次世代型の金属資源が発見されております。金属資源の国産化を目指して,海底熱水鉱床の開発・利用に注目が集まっております。海底熱水鉱床は,電気をよく通す金属鉱物を多く含むため,海底下の電気の流れやすさの情報を得ることができる電気探査・電磁探査が鉱床分布の把握に有効です。私は電気探査・電磁探査を用いて,沖縄トラフのイヘヤ熱水域やイエヤマ熱水域の海底下比抵抗構造を解明し,この比抵抗構造をもとに海底熱水鉱床の賦存域およびその発達メカニズム解明を行ってきました。
イヘヤ熱水域ではIshizu et al., (2019) GRLにも報告した通り,海底熱水鉱床の存在形態・発達メカニズムに関する新たな発見を行いました。イエヤマ熱水域では3D比抵抗構造を取得することに成功し,海底熱水鉱床域を特定できました。

図:Ishizu et al., (2019) GRLより

地熱資源の探査

地熱資源の中でも特に超臨界地熱資源に着目しております。超臨界地熱資源とは超臨界状態にある流体を示し,高いエネルギーを持っています。そのため,超臨界流体を利用した地熱発電は,350℃以下の熱水を利用する通常の地熱発電に比べて大規模な出力が行えると期待されております。超臨界流体だまりが東北地方の火山・地熱地域の地下に存在すると考えられており,現在,超臨界地熱発電の実用化に向けて,超臨界地熱資源の賦存域を調査している段階です。私は,MT法と呼ばれる電磁探査法を用いて,超臨界流体だまりを探査しております。超臨界流体だまりが存在していると期待されている秋田県湯沢地熱地域で実際に電磁探査を行い,取得したデータを解析することにより地下3D比抵抗構造を推定しました。明らかとなった地下比抵抗分布と温度検層データなどを組み合わせて,超臨界地熱資源の分布・発達メカニズムの解明を行いました。

図:Ishizu et al., (2022) JGRより

・火山体の探査

火山流体研究センターという組織に属していることもあり,火山に関連した研究を行っております。 私の主な研究対象地域は,草津白根火山です。水蒸気爆発による噴火が,草津白根火山では発生しています。1805年の噴火記録以降,マグマの流出を伴う噴火は観測されず,水蒸気爆発による噴火が起こってきました。水蒸気爆発は,マグマから間接的にもたらされた熱によって地下水が沸騰して起こり,大きな噴石を飛ばします。水蒸気爆発は,一般的に地震活動などの前兆現象が発現しにくいため,予知が難しいです。近年では,2018年に草津白根火山の本白根で,水蒸気爆発が起こり,噴石により一名の命が失われました。 私は,水蒸気爆発の予知に向けた地下構造モニタリング技術に関する研究を行っています。水蒸気爆発は前兆が乏しいため,その発生予想は難しいという課題があります。また,水蒸気爆発が地下のどこで発生し,どのようなメカニズムで発生しているかということも詳細に分かっておりません。そのため,水蒸気爆発の発生メカニズムを解明し,地下構造モニタリングをしてその発生を予測できれば,火山防災に大きく貢献できます。

・電磁探査データ解析ソフト開発

電磁探査法では,地表や海底面で電磁場データを観測します。観測された電磁探査データは地下比抵抗に関する情報を含んでおり,観測データを逆解析して地下比抵抗構造に変換します。逆解析では,地下比抵抗構造を10万〜100万程度のモデル格子に分割します。モデルパラメータ数が多いため,電磁探査データ逆解析では計算コストは高く,計算効率の良い逆解析ソフトウェアが必要です。既存の電磁逆解析ソフトウェアでは,計算効コストが高いという問題がありました。そこで,私は,「データスペース変換」というアプローチを用いた計算効率の良い逆解析ソフトウェアを開発しました。
加えて,既存の海底電磁探査ソフトウェアでは,
既存の探査装置で取得したデータ以外を取り扱うことができないという課題がありました。私はこの課題を解決するため様々なデータ取得に対応することができる電磁探査逆解析ソフトウェアを開発しました

図:Ishizu et al., (2022) Geophysicsより