音響複素変数(音響則)
音響複素変数(音響則)
音響複素変数の解釈
長らく頭の整理がつかなかったことがある.複素固有角振動数って何だろう,その場合のモードは実数か複素数か,強制振動の加振角振動数は実数しか無いのか,強制振動の場合のモードは実数か,複素数か,等々ずっと疑問に感じていた.
密度と体積弾性率を複素数として,吸音材を充填した両端閉の音響管を例題に取ると,少しは頭の整理ができる.密度と体積弾性率が複素数なので音速 は複素数となる.振動数方程式から固有角振動数 は複素数で,その複素固有角振動数における波数と波長は実数となる.粒子速度の固有関数も実数となる.
初期変位に固有関数形状を与えて自由振動させると,固有関数の形を保ったまま減衰振動する.初期変位が任意波形の場合も教科書通りに固有関数の線形和で表した上で,それぞれの固有振動モードの減衰自由振動を求めて,その和で表すことができる.
強制振動の場合も同じようにモード解析で表すことは可能である.しかし減衰が大きな状況の粒子速度分布や音圧分布を固有関数の線形和で表現することは,冗長になるだけでなく直観的な理解を阻害する.減衰が大きく反射波が小さくなる状況では,モード解析より進行波の表現の方が,距離減衰の現象を直観的に理解できる.この場合,加振角振動数は実数で,波数と波長は複素数となる.モード解析で使用した実数の波数や波長とは全くの別物となる.
Rayleigh減衰と同じことを連続体でやっているだけだが,吸音材を例題に取ると音速や波数,波長も含まれるので波動現象としては頭の整理がつきやすい.