モードひずみエネルギ法
モードひずみエネルギ法
拡散音場の式とモードひずみエネルギ法
拡散音場を前提に部材の吸音率と表面積から吸音力や室定数を定義し,球面波伝搬を仮定して閉空間の音圧を概算する式がある.
企業勤務時代は約20年間この式にたいへんお世話になった.境界要素法などを使って厳密な解析をすることも不可能ではないが,加振部の振動の詳細情報,音場空間の幾何形状データ,吸音部材の吸音特性を必要とし,計算には多大な手間を要する.計算して予測精度が高ければ良いが,入力データ次第であり,どの程度あっていると言えるか,はなはだ疑問であった.それなら3分程度の概算式を割り切って使うことも有用であり,20年間の企業勤務経験からは十分に見通しが得られる式と感じていた.ただし,波動方程式に準拠せず,エネルギの釣り合いを検討しただけの式には,すっきりしない違和感を感じていた.そこで部屋の体積を合わせれば,モードの個数はそれなりに対応するので,どのような形状の部屋でも直方体音場と見なし,非減衰の空気だけの場合の固有関数に対して,吸音材部分に上記の複素密度と複素体積弾性率を持たせて,散逸エネルギを評価するモードひずみエネルギ法を適用し,全空間を一様な吸音媒質に置き換えて計算した値と,上記拡散音場の式と実験値を比較した.一計算例に過ぎないので,普遍的に成立するとは言えないが,3者はそこそこ対応が取れており,少しは安心して拡散音場の式を使っても良いように感じている.