バイオリンのスティックスリップ振動
バイオリンのスティックスリップ振動
教科書では通常は素通りするダランベールの解を利用することで,非常に上手く解を求めることができた.波を進行波と後退波の和で表すと,進行波と後退波はそれぞれ形を保って進む.状態量を速度とすると,端部では状態量は符号を変えて反転する.スティック部でも状態量の速度は符号を変えて反転するが,弓の速度が加算される.スリップ部では状態量の速度は反射せずそのまま全透過するが,動摩擦力から定まるブレーキ速度だけ減速される.以上の加減算の伝搬則だけでスティックスリップ振動を解くことに成功した.のこぎり波もヘルムホルツの運動も再現できた.また定式化までに非常に時間を要したが,固有関数で展開する従来手法でも完全に一致する計算結果を得ることができた.波動方程式を基礎式として,弦のスティックスリップ振動をダランベールの解を意味する伝搬則の加減算だけで解いた研究は世界初と思う.固有関数展開でゴールに辿り着いた研究も初めてのはずである.