橋梁ケーブル異音の解明(1996-1998)
橋梁ケーブル異音の解明(1996-1998)
明石海峡大橋架設時に約50cmの間隔で張られたキャットウォークケーブルが風で衝突し「ヒュオーン」と聞こえる異音がアンカ部で観測された。ケーブル製造企業の振動音響技術者として現場に駆り出され、この異音の発生機構の解明を任された。
異音発生時にケーブルを掴むと振動伝搬を感じたため、2点マイク法に倣って2点加速度センサで振動を測定し、伝達関数の周波数応答の測定した。測定した周波数伝達関数のピーク間隔は周波数の平方根に比例しており、大学の振動学の講義で学習したはり振動の理論式を当てはめると、理論計算でも同じ結果を得ることができた。
はりの曲げ波は、その伝搬速度が周波数の関数となる分散波である。そこで、ケーブル衝突点でインパルス状の初期変位を仮定し、分散波の伝搬速度に従って300m離れた点の変位を計算したところ、高周波数成分が先着し低周波数成分が遅れて到達する波形が計算され、測定値と類似する傾向が得られた。土木構造物という長大構造のため、曲げ振動が定在波ではなく、過渡振動として現れる貴重な体験であった。