橋梁ケーブルの張力同定(1996-1998)
橋梁ケーブルの張力同定(1996-1998)
一度仕事で関りができると、お互いに発展の可能性を探ることは企業技術者の常である。橋梁部門からは斜張橋のケーブル張力を手軽に測定する手法の開発を打診された。基礎方程式は、ロープの曲げによる復元力と張力を受ける弦の復元力がロープの慣性力と釣り合う運動方程式である。橋梁ではロープ両端は固定端とされている。振動数方程式では、通常は双曲線関数が現れるが、ロープ長が十分長いことを前提にexp(-kL)を無視すると三角関数だけ残る。その解を変形すると振動数方程式は曲げ剛性と張力を係数とするモード次数の多項式となる。双曲線関数項を無視しているが導いたモード次数の多項式の振動数方程式は極めて高精度である。
橋梁ケーブルでは常微動でも容易に高次迄共振周波数が励起される。共振周波数とそのモード次数を測定し、最小2乗法を適用すると、張力Tと曲げ剛性EIを一括して同定できることになる。ロープの曲げ剛性は張力の関数ともされ、見積もりが容易ではないため、一石二鳥の手法である。大型引張試験機を使って精度検証も行ったが、極めて高精度に張力を測定する手法である。非常に短期に美しい結果が得られた研究であった。