制振鋼板成形品の騒音低減効果(1991-1995)
制振鋼板成形品の騒音低減効果(1991-1995)
2枚の鋼板の間に粘弾性体を挟んだ構造の制振鋼板は、騒音を低減する材料と考えられていた。制振鋼板の減衰性能は損失係数ηで表されるが、温度依存性と周波数依存性があり、騒音低減効果を予測することは困難で、制振鋼板をプレス成型した試作品を作らないことには騒音低減効果は分からない状況であった。
普通鋼板製のプレス成型品の振動特性は、FEM解析もしくは実験モード解析で容易に求めることができる。制振鋼板製のプレス成型品の幾何形状は、当然だが普通鋼板製の成型品と同じである。そこで普通鋼板の曲げ剛性EIを制振鋼板の曲げ剛性EI(1+jη)に置き換えてモード剛性を見積もることで、制振鋼板製のプレス成型品の振動特性(周波数応答関数)を計算可能となる。この周波数応答関数を逆フーリエ変換すると、制振鋼板製のプレス成型品のインパルス関数を求めることができる。DSPにこのインパルス応答の係数を持たせ、例えばエンジンシリンダブロック振動の時間波形を入力してFIRフィルタに畳み込むと、あたかも普通鋼板を制振鋼板に置き換えた時の騒音を試聴することができることになる。
以上のような制振鋼板の効果試聴システムを作成し、制振鋼板の拡販に乗り出したが、折からのバブル崩壊で、手間がかかり儲けも少ない制振鋼板は、全鉄鋼メーカが製造を中止することとなった。