質量則(防音則)
質量則(防音則)
板の透過損失と質量則
板の振動では高次の共振周波数が存在するので、1質点系のような質量支配領域は顕著には表れないはずである。しかし板材の透過損失では質量則がなりたつことは良く知られている。そこで2つの直方体音場が板で隔てられた場合を理論解析で考える。部屋1の内部に点音源を配した直方体音場の理論解析は容易で、板面上の音圧分布も計算可能である。その音圧で加振される周辺支持の板も理論解析可能で、振動分布が求まる。もう一つの部屋2の評価点に点音源を仮定すると板面上の音圧分布は前回同様に計算できる。ここで相反定理を使うと、部屋1の点音源による部屋2の評価点の音圧が求まることになる。残響室を意識した直方体音場では、20Hzから1kHzの間に20432個の固有振動数が有り、固有振動数が密集した状況である。相反定理で面積積分を行うと、高次の固有振動数では励振係数がかなり小さくなり、低次のモードの質量支配領域が現れていると解釈できる。さらに板振動から受音室への音の伝達も、同じ励振係数を使うことになるので、2重に面積積分の効果が織り込まれることになる。以上より、板振動の低次のモードが支配的となり、高周波数では質量則としてその寄与が計算できる。高次モードも励起されるが、減衰があるので振幅は有限で、励振係数が相対的に小さいので、その寄与は低次の質量則の成分より小さくなる。
以上が現時点の解釈である。今思うと、板振動から受音室への伝搬をもう少し定量的に詰めるべきだったと思う。