剛体ピストン(音響則)
剛体ピストン(音響則)
相反定理と音響放射効率
次に納得できない課題は、弾性振動板からの音響放射効率だった。次の次のpdfに示すように高周波では放射効率が1となり、低周波は音になりにくいと言われても、理論的に導かれた式ではなく、実験式に近いので納得はいかなかった。
ここでの大転換は相反定理である。板が振幅u(x,y)で振動すると、各点が点音源となり、評価点までの距離に応じた伝達関数Hと掛け合わさって、その点音源から評価点までの音圧H*uが計算される。板は全面が振動しているので、積和を取ったΣH*uが評価点で観測される音となる。uは振動モードからある程度はイメージ可能であるが、伝達関数Hをイメージすることは私には不可能であった。ここで、評価点に点音源を置くと、その場合は板面上の音圧分布p(x,y)はある程度イメージ可能である。相反定理では、荷重点と評価点を入れ替えても伝達関数は変わらないので、板振動分布のu(x,y)と音圧分布p(x,y)を面積積分することで、評価点の音の大小をイメージ可能となる。
剛体ピストンの音響放射効率
試しに相反定理を剛体ピストンに応用する。ピストン直径は音波の波長より短く、ピストンは管路端部に配置され、管路は細いので音波を反射しないとする。ピストンを点と見なして距離λ離れた点に点音源を仮定すると、点音源の位置にかかわらず伝達関数Aは同じとなる。ピストン速度vにAを乗じれば、距離λ離れた点の音圧が求まる。当然だが、点音源による球面波である。次に管路をなくして、点音源位置を12時とするとピストン表面の伝達関数はA+ε、裏面はAであろう。点音源位置を 3時とするとピストン表面も裏面も伝達関数は同じAである。vは表と裏で符号が異なるので、3時と9時方向の音圧はゼロとなる。12時と6時方向の音圧はεvと-εvとなる。双極子は単極子より音になり難いことが容易に理解できる。ピストン直径が音の波長より長くなるとピストン上に進行波の音圧分布が生じるが、一定速度vを乗じるので、相殺され指向性が生じることも容易に類推できる。