(2022年12月更新)
名古屋大学で教員をしております藤井慶輔と申します。
現在はスポーツなど複雑な運動を対象とした機械学習などの情報処理技術について研究しています。
読みやすい記事では、以下のものがあります。
【名古屋大学】データサイエンスで集団スポーツの解析に挑む(データサイエンス百景)
サッカー戦術分析で起業へ 名大准教授、自動運転も応用(日本経済新聞、日経MJ)
部活動の指導者不足の問題を解決へ 集団スポーツの「戦術」を科学的に評価する研究(中日新聞、記事は転載許可を得ています)
スポーツ戦術の巧みさを、情報科学で魅せる(名大URAの方による記事)
(YouTube)選手はAIより上手い!? スポーツ戦術の巧みさを情報科学で魅せる(名大URA)
生物集団の軌跡から相互作用の規則を学習(プレスリリース)
サッカーにおけるチームの守備評価(ログミー)
(2019年12月作成)
これまでと現在の研究のまとめ
元々はスポーツの動作解析(バスケットボールなど)の研究を行っていましたが、近年は計測技術が発達してきて、実際の試合の身体運動データを計測できるようになってきました。そこで最近は、集団スポーツなどの身体運動データを用いて、コーチや選手などの専門家の頭の中にあるような、
・動きのパターンの分類
・未来の動きの予測
・良い動きを実行するための制御
などを計算機上で実行できる情報処理技術について研究しています。そのことによって、複雑な動きを専門家でなくても理解できるようになったり、より良い動きを実現するためのヒントを得られる可能性があります。
特に、相手がいる状況での巧みな動きやチームワークは、状況の変化に臨機応変に対応するため情報処理やモデル化が難しく、(一般の)科学においても興味深い研究対象になり得ます。そのため、情報工学や制御工学、生物物理学などの考え方を用いて、様々な分野の研究者の方々と一緒に明らかにして/実現していきたいと考えています。
研究分野: スポーツ行動情報処理、集団運動情報学
研究分野としては、情報工学(機械学習と信号処理)に基づく、集団運動・スポーツ科学であり、短く言うと「スポーツ行動情報処理」もしくはより一般化した「集団運動情報学」という(新しい)分野になります。
研究内容
大まかに分けると、主にヒトの(集団)身体運動に関する、
1. 動きのパターンの自動分類・評価
2. 未来の動きの予測、結果を動きから説明
3. 良い動きを実行するための制御
について研究しています。特に、バスケットボールやサッカーなどの相手がいる状況で臨機応変に対応する、巧みな動きやチームワークは未解明な点が多く興味もあるので、研究の中心となっています(他にも、ゴルフ[論文18]、子どもの遊び[論文24]、移動運動[論文19など]や立位[論文21など]などの基本的な運動にも興味があり、共同研究を行っています)。上記は厳密な分け方ではありませんが、これら以外のことも興味はあります。以下に大まかに説明しますので、詳しい方法論などについてはリンクの論文を参照してください。
最近の研究について読みやすい記事では、以下のものがあります。(2021年12月追記)
生物集団の軌跡から相互作用の規則を学習(プレスリリース)
サッカーにおけるチームの守備評価(ログミー)
2. 未来の動きの予測、結果を動きから説明 スポーツなどの身体運動データから、最終的に求められる結果(勝敗、得点など)を予測したり、動きから結果を説明する方法を開発しています。そのことによって、その結果に貢献する重要な動きを、根拠をもって明らかにすることが期待できます。さらに、これまで経験のあるコーチなどの専門家しかわからなかった重要な動きの要素が明らかになる可能性があります。
例えば、スポーツの1対1の結果を運動や力学の観点から説明したり[論文11, 論文10]、移動方向を相手の姿勢から予測する研究[論文7]、集団スポーツにおける得点予測[論文26]やシュート後にボールを獲得する選手を予測する研究[論文29]をしています。
3. 良い動きを実行するための制御 上記で良い動きの特徴がわかった上で、実際にそのような動きを実現するためには必要な観点です。ヒトはたくさんの筋や関節を巧みに制御して適切な運動を実現しますが、特に対人スポーツのような臨機応変な運動に関しては未解明な点が多く残されています。この運動が計算機上でも実現できるようになれば、その仕組みの一部を明らかにできる可能性があります。また、上記で明らかになった動きの特徴の有効性を確かめたり、調べにくい未知の動きについてもシミュレートすることができます。
例えば、1対1で重要な要素である準備状態を組み込んだモデルを作成して検証した研究[論文13]や、それを運動制御の観点から実装して柔軟に方向転換を実現する研究[論文20]を行いました。今後は多人数の集団モデルを用いて、チームワークなどを研究したいと思っています(例えば[論文23])。