アサリ

Ruditapes philippinarum (Adams & Reeve, 1850) 

レア度:いつでも見られる

形態:二枚貝代表。貝殻は長卵型で、表面には細い放射肋が密に並ぶ。放射肋は、成長線と交わって顆粒状となる。色彩の個体間変異がたいへん多い。似たような貝にヌノメアサリオニアサリウチムラサキなどがある。本種を基準として覚えておきたい。

生息域:サハリン、北海道から九州に分布し、潮間帯から水深10mの岩礁に砂礫底に生息する。葛登支では特に護岸壁沿いの砂底に多い。

生態:濾過食者であり、捕捉した海水中の粒子状有機物を鰓で漉し取って食べる (Defossez & Hawkins 1997; Kasai et al. 2004)。成熟サイズは、北海道では2–3㎝前後 (山元・岩田 1956; 五嶋ら 1996)。雌雄異体であり、体外受精をおこなう。産卵期は北海道では1回 (夏)、本州では春と秋の年2回ある (伊藤 2002)。函館湾では6月下旬から9月中旬、とくに8月が盛期である (清水ら 2006)。受精卵はトロコフォア幼生期~ベリジャー幼生期を経て着底し、稚貝となる。1cm前後までは足糸で砂粒などに体を固定しているが、成長に伴って足糸を放棄する。しかし、そのタイミングは生息地の物理的特性によって変動し、例えば礫環境では大型個体も足糸を使う (吉田 1961)。礫環境といえば、函館湾舘野のアサリ漁場では礫がアサリの潜砂行動を制限し、個体の定位性、摂餌効率、成長率に負の影響を与えているらしい (田村ほか 2016; 岩城ほか 2016)。葛登支もアサリが十分に潜れる環境は岸壁沿いの一部に限られており、岩棚上では波に洗いだされた (?) 個体がどうしようもなく横たわっている。そしてそのような個体は、大抵オウウヨウラクなどの肉食性巻貝に捕まっている。それに対し本種は、足で海底を蹴り上げる動きを繰り返して逃げることもできる (小菅 1967)。

その他:おいしい。

2020年6月 青木
2021年3月 山上オウウヨウラクに襲われる
2021年4月16日 りったヒメエゾボラに襲われ、絶体絶命2
2021年11月6日 りった多分ヒメエゾボラから逃げているところ
2021年11月6日 りったがんばれ!
2021年11月6日 りったもう、ちゅかれた……

引用文献:

  1. 吉田裕. 1953. 浅海産有用二枚貝の稚仔の研究. 農林省水産講習所研究報告, 3: 1–106.

  2. 小菅貞男. 1967. 生態観察あれこれ. ちりぼたん, 4: 137.

  3. Defossez, J. M. & Hawkins, A. J. S. 1997. Selective feeding in shellfish: size-dependent rejection of large particles within pseudofaeces from Mytilus edulis, Ruditapes philippinarum and Tapes decussatus. Marine Biology, 129: 139–147.

  4. 伊藤博. 2002. アサリとはどんな生き物か: アサリの生態, および漁業生産の推移. 日本ベントス学会誌, 57: 134–138.

  5. Kasai, A., Horie, H., & Sakamoto, W. 2004. Selection of food sources by Ruditapes philippinarum and Mactra veneriformis (Bivalva: Mollusca) determined from stable isotope analysis. Fisheries science, 70: 11–20.

  6. 清水洋平・大津秀夫・蛭子彰・多田匡秀. 2006.上磯町茂辺地地区におけるアサリの産卵期について. 北水試験報, 70: 99–104.

  7. 岩城里奈・田村亮輔・五嶋聖治. 2016. アサリの定位方向が摂食効率に与える影響. 北海道大学水産科学研究彙報, 66: 63–68.

  8. 田村亮輔・戸田拓磨・竹下文雄・五嶋聖治. 2016. 潜砂制限がアサリの成長に及ぼす影響. 日本ベントス学会誌, 70: 83–90.