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Germline β−1,3-glucan deposits are required for female gametogenesis in Arabidopsis thaliana
Pint et al., Nature Communications 15: 5875 (2024) DOI: 10.1038/s41467-024-50143-0
カロース(β-1,3-グルカン)は植物細胞で細胞板形成時や原形質連絡など時期・場所特異的に作られるポリマーの一種です。カロース分解酵素を高発現させカロースを減らすと原形質連絡の隙間が大きくなって分子量の大きな物質が通過できることが知られており、つまりカロースは細胞間の分子のやりとりを適切に制御する役割を果たします。私たちは雌性配偶体発生過程において、大配偶子母細胞と周りの細胞とのコミュニケーションにカロースが重要な役割を果たすことを発見しました。
この研究では、大配偶子母細胞をマーカー遺伝子で光らせ、その細胞だけを単離して発現している遺伝子を調べるという実験をしています。しかし大配偶子母細胞は胚珠の真ん中にあり、それだけを取り出すのは容易ではありません。そこで私たちは、レーザーマイクロダイセクションや細胞壁分解酵素処理など試行錯誤を繰り返しました。最終的には、ある条件で細胞壁分解酵素処理して、ピコピペットという特殊なピペットを使うことで、目的の細胞のみを集められるようになりました(Fig. 1)。金岡は当時名古屋大学に留学していた筆頭著者のSaraさんを指導して、この細胞単離の条件を検討しました。