第7話:生成AIによる翻訳のメリット・デメリット
第7話:生成AIによる翻訳のメリット・デメリット
今回は、過去1年半にわたって毎日、そしてトータルで千時間以上(2024年6月現在)使ってきた上で気づいた、生成AIによる翻訳・リライトのメリットとデメリットについて綴らせていただきたいと思います(※1)。
まず、生成AIのメリットとしては下記のようなものが挙げられます。
1) 非常に速い。
2) 要望に応じて文章のスタイルや言い回しを自由に変えられる。
3) プロの翻訳者・ライターでさえ、すぐには思いつかないような単語や言い回しを使った文章を提案してくることがよくあり、アシスタントとして重宝出来る。
しかし、現状として生成AIは、まだ機械翻訳にしか過ぎないと感じており、それは、あくまでも「ところどころ参考にできるアシスタント」という位置付けで、プロのネイティブだからこそ使いこなせるものだと思っております。
そこで、生成A Iのデメリットを詳しく解説させていただきたいと思います。以下は日本語から英語への翻訳において、日本語と英語の根本的な違いにより起きてしまう誤訳を説明いたします。
1)日本語には大文字・小文字がありませんが、英語の大文字・小文字の使い分けには厳格なルールが存在します。例えば、タイトルでは単語の頭文字を大文字にしたり、固有名詞は頭文字を大文字にする必要があります。そして、固有名詞(頭文字が大文字)なのか、一般名詞なのかによって、冠詞の使い方も変わってきますが、生成AIは大文字・小文字を適切に判断し、正しく使い分けることができません。それに伴い、冠詞の使い方を間違えることもよくあります。
2)日本語の名詞には、単数形・複数形が存在しませんが、英語の名詞のほとんどには単数形・複数形が存在します。しかし生成AIは、文脈から適切に単数形・複数形を判断することが出来ない場合が多いです。これは特に、参考資料の画像や映像を見ながら翻訳を行う場合、生成AIには不可能な作業となります。しかも、英語では名詞の単数形・複数形を変えただけで、文章全体の言い回しが変わります。簡単な例で説明しますと、「これはリンゴです」には下記 二通りの英訳があります。
This is an apple.(単数)
These are apples.(複数)
ご覧の通り、この短い文章でも、全ての単語が変わってしまいます。
This → These
is → are
an → 複数形の場合は省かれます。
apple → apples
3)英語では全ての文章が主語を必要とします。しかし日本語は、主語を必要としない言語です。従って、簡単な和文でも主語が抜けていると、AI が勝手に間違った主語を入れてしまうことがよくあります。
ごく簡単な例で説明すると、店内放送で「お客様に申し上げます」→ "I would like to inform our customers" と訳してしまいします。この英文の主語は “I (私)” で、確かに喋っているのはアナウンサー自身ですが、アナウンサーが店内放送で「私から、お客様に申し上げます」と言うのは不適切です。ここでは、「お店側からのアナウンス」として、英語で使う適切な主語は “We” となります。
4)生成AIは、原文にあるタイプミスや漢字の変換ミスなどを見抜き、適切に訳すことが出来ません。
5)日本の人名、地名、本のタイトルなどのローマ字変換には多くのミスが見られたり、ローマ字の形式を統一できません。
6)英語の自然な語順は、日本語の語順と真逆に近い場合が多いですが、生成AIは日本語の語順をそのまま直訳してしまい勝ちで、訳文が不自然・読みづらくなる傾向が強いです。
7)単語を直訳してしまったり、原文に和製英語が使われていると、そのまま使ってしまうことが、よくあります。また、文法的には間違っていなくても、ネイティブは、あまり使わない、「日本人好み」の単語や言い回しを使うこともあります。
上記6番と7番の理由は分かりませんが、もしかしたら生成A Iのトレーニングに使われたデータに、日本人の手が加えられた、日本国内に存在する英語の資料が多く使われたのかもしれません。真相は開発者にしか分かりませんが、事実として、このような不自然な訳が、かなり多く見受けられます。
その他にも下記のようなデメリットが見られます。
8)映像翻訳には対応できません。映像翻訳(ナレーションや字幕翻訳)は、訳文の尺合わせが不可欠です。また、映像の展開やテロップ表示のタイミングに合わせて訳文の語順も調整する必要があります。しかし生成AI には、そこまで細かい作業はできません。
9)生成AIは、かなりの頻度で、しかも自信満々に、嘘をついたり、知ったかぶりをするため、生成AIの答えを鵜呑みにしたり、過剰に評価・信頼してしまうのは極めて危険なことです。
10)機密性の高い文書の取り扱いには、セキュリティー上の問題があります(※1)。
11)かなりの頻度で誤訳が見られます。
12)文法ミスも、ちょこちょこと見受けられます。
13)想像力に長けているため、原文に無いような要素(特に形容詞)を勝手に入れてくることが、よくあります。
14)もう一方では、かなりの頻度で訳抜けが見られます(長文翻訳では、文章の一部が丸ごと抜けてしまうことも)。
結論
結論を言いますと、生成AIは、一見、完璧に見えるような文章を、瞬時に出してきますが、よく見てみると、不自然な単語、直訳、読みづらい言い回しや、回りくどい言い回しなどが多くみられます。しかし、英語がある程度わかる日本人であれば、英→日 翻訳においては、アシスタントとして十分に使えると思えます。それは、日本語を母国語とするからこそ、不自然な言い回しなどを見抜けるからです。
同様に、日→英 翻訳においては、プロのネイティブ翻訳者でしたら、アシスタントとして十分に使えると思います。しかしそれは、ネイティブのプロだからこそ文法ミス、直訳、和製英語、誤訳、訳抜けなどを見抜けるからです。
現時点で生成AIによる 日→英 翻訳は、『経験の浅いアシスタントが、用語や固有名詞の裏付けをキチンとせず、読みやすさ、誤訳、訳抜けや、ケアレスミスのチェックもせずに、仕上げた翻訳』といったレベルの出来栄えで、そのまま「商品化、出版、収録できる」プロレベルの英語とは程遠いのが現状です。チェックとリライトは不可欠となり、それはネイティブだからこそできることで、英語を母国語としない人が使いこなせるものではありません。逆の立場で考えると分かりやすいと思いますが、生成AIを使っても、日本語を母国語としない外国人が完璧な(収録、出版、商品化できる)日本語を書き下ろすことは出来ません。立場は逆でも、それと同じことなのです。なお、生成AIによる 日→英 翻訳は、大幅なチェックとリライトを必要とするため、そのようなものを、騙し騙し修正するよりも、再翻訳してしまった方が、効率良く、より良いものが出来上がるケースが殆どです。
(※1)国内外で、使用を禁じている企業(かなり限られておりますが)からご依頼いただく翻訳には、一切使っておりません。原稿に機密情報(個人情報、公開前の情報など)が含まれている場合は、必ずお客様から事前に指示をいただいておりますが、当然それらの訳に使うことも一切ございません。
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