vol.2 細川光洋先生(国際言語文化学科教授)


第2回目の今回メッセージをいただいたのは、国際言語文化学科教授の細川光洋先生です。

細川先生は、日本近代文学や国語科教授法を専門分野とされている先生です。

普段お聞きできないプライベートなことから、先生の研究分野の魅力まで…

さまざまなことをお話しいただきました。ぜひご覧ください!


細川光洋先生】

1. 大学時代の思い出を教えてください
「学部時代はずっと混声合唱団にいて、Bach(バッハ)を歌っていました。大学院に入ってからは歌舞伎にのめり込んで歌舞伎座に通い詰めていました。学校終わりに行ったりして、月5回は通っていました。この2つが大学時代の思い出です。」


2. 大学時代にやって良かったことを教えてください
「一番の思い出は、シベリア鉄道で友人とソビエト旅行をしたことです。どうしてもシベリア鉄道に乗ってヨーロッパに渡ってみたかった。初めての外国がソビエトでした。ツルゲーネフやゴーゴリなどのロシア文学の聖地に行ってみたいなと思っていました。冒険でしたね。もう一つは、歌舞伎の大向こうをやったこと。大向こうの会の方たちに、声を掛けてもらって、地方巡業で掛け声をかけたりもしました。あんまり芝居に夢中になりすぎて、指導教授から真面目に研究しろと言われたこともありました(笑)。演劇博物館でアルバイトをしていたので、自分の興味・関心のあることに打ち込めたことは良かったです。」


3. 大学時代にやり残したことを教えてください
「いっぱいやり残したことはあると思うけれど、これをやりたいなと思ったことには飛び込んでしまうところがあるので、そっちの思い出の方が強烈に残っているのかもしれないですね。強いて言えば、就活をしなかったことかな。もともと教育学部で教職の勉強はしていて、県の高校教員の試験は受かっていたのですが、大学院に合格したのでそちらに進みました。でも後悔しているというわけではないかな。」


4. 趣味や休日の過ごし方を教えてください
「毎週土曜日に奥さんと一緒に畑仕事をすることです。これが一番の心の潤いで毎週の楽しみ。なかなか大変だけれど自分の育てた野菜を食べるというのはいいですね。あとは温泉巡りも好きです。そのほか休日には本を読んで、書きものをしています。仕事じゃないのと言われますが……。全然関係のない分野の本を読むというのも好きです。」


5. 静岡で好きな場所やおすすめの場所があれば教えてください
「一番好きな街は焼津。カツオが好物なのと小泉八雲記念館があることが訪れるきっかけとなりました。焼津ではいまも八雲作品の朗読会やレクチャーコンサートを続けています。おすすめスポットでいうと鷹匠にある書店、「ひばりブックス」。文芸書、特に詩歌が充実しているので、文学好きの方は一度訪ねてみるといいですよ。」


6. 県立大学の好きなところを教えてください
「よい意味で大学自体がコンパクトで、やりたいことをすぐに実現できる点ですね。県大の学生発で動こうという試みもいっぱいあって、お互いが声を掛けられる距離感にあるということがこの大学のよさだと思います。あとは、キャンパスの開放感。各棟がつながっていたり、小まわりが利く校舎の作りもいいなと思います。反面、小さくまとまりやすいので、そこが課題かな。」


7. 学生に人生のアドバイスをお願いします
「実際に人に『会う』ことがやはり重要だということです。「謦咳に接す」という言葉がありますが、会いたいと思う人には会いに行き実際にその人に接することですね。学生時代にとても好きな評論家がいて、手紙をいただいたあとで電話をしていたんですが、話が終わらないからこれから行ってもいいかと言って、神奈川から千葉まで会いに行き、朝まで文学の話をしたこともあります。人に会いに行くこと、出会うこと、それが自分の財産になると思います。自分から一歩踏み出すことは、とても度胸のいることだとは思いますが、やはり一歩動かないと何かが動き出さない。その人のことが知りたいと思ったら実際に生身のその人に会ってみる、これは大事だと思います。身近なところでいうと、興味のある分野の先生の研究室を訪ねてみるのもよいと思います。あとは、こうなりたいという憧れを作ることも大事だと思いますね。」


8. おすすめの書籍を教えてください
1.     「ぜひ大長編に挑戦してほしい! 学生時代に読んで感激した本がいくつかあります。現実ともう一つ別の物語の時間や世界があるような、終わってほしくないと思いつつ大団円に向かう、大長編でしか味わえない感覚を味わってみてほしいです。」
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★長編作品のおすすめ
・アレクサンドル・デュマ・ペール『モンテ・クリスト伯』

・トルストイ『アンナ・カレーニナ』

・マーガレット・ミッチェル『風と共に去りぬ』
・シャーロット・ブロンテ『ジェーン・エア』

✩細川先生の書いた文章が読める本

細川光洋(2021)『吉井勇の旅鞄』, 短歌研究社

・千葉俊二・細川光洋選(2016)『寺田寅彦セレクションⅠ』『寺田寅彦セレクションⅡ』, 講談社文芸文庫

・『伊豆文学散歩』(2023) 長倉書店



9. 細川先生の研究内容の魅力を教えてください
「私の専門は、明星派の歌人、特に「ゴンドラの唄」で知られる、静岡にもゆかりがある歌人・吉井勇の研究です。自分が面白い・知りたいと思ったことをとことん突き詰められるところが研究の魅力。さまざまな研究のスタイルがありますが、私はフィールドワークや文献調査を大切にしています。実際の草稿、日記や書簡にふれていると、この人はなんでこんな風にしか生きられなかったんだろう? とか、なぜこういう詩や短歌が生まれたんだろう? というその人の生きざまにふれる瞬間がある。そこが一番の魅力です。もう一つ研究のテーマとしているのは、地域と文学――「地域資源としての文学」です。文学は地域の記憶を留めるタイムカプセルだと思っています。いろいろな記憶が文学の中に残っているので、その地域を描いた作品を読むことで、地域の文化や魅力を再発見し、それが次代に継承されていくことに繋がると考えています。」