日本モンキーセンターについて

公益財団法人日本モンキーセンターは、霊長類学を専門とする京都大学の教員が中心となって運営する、世界に類を見ない動物園・博物館です。スタッフ全員が、霊長類の生息地を訪れて霊長類本来のくらしを体感し、「自然への窓」としての動物園を目指しています。

緑豊かな犬山市の丘陵地帯に位置し、世界中の霊長類約60種、800個体が、緑に囲まれて、のんびりくらしています。ワオキツネザルが放し飼いになっている「WAOランド」や、ボリビアリスザルが木々の間を自由に動き回る「リスザルの森」では、サルたちを間近で観察することができます。

フクロテナガザルが15mの高さのビッグ・ループを二本の腕を使って自由に動き回り、ジェフロイクモザルが吊り橋を手と足と尻尾を使って素早く移動する。園内のあちこちに、霊長類のすばらしい能力がみられる施設が用意されています。

ボリビアリスザル(リスザルの島)
ボリビアリスザル
ジェフロイクモザル
ワオキツネザル
フクロテナガザル

霊長類の福祉に配慮した動物園

チベットモンキー

園内を歩くと、飼育する動物たちのくらしを、より複雑で自然な環境に近づけるため、飼育スタッフが行っているさまざまな工夫が目に入ります。限られたスペースでくらす霊長類が、できるだけ広く歩き回れるように、止まり木を用意し消防ホースを吊るす。水場を作り、床面におが粉をまく。近隣の農家やスーパーからご寄附をいただき、旬の果物や野菜など、多くの種類の食べ物を用意する。単独飼育をできるだけ解消するために、群れ飼育や混合飼育を試みる。霊長類の野生の姿を見て、そこから学んだことを、飼育する動物たちの福祉に役立てるという基本方針が、スタッフの日々の仕事の中に生かされています。

保全の取り組み

日本モンキーセンターでは、ペット目的で密輸されたレッサースローロリスを保護する施設、スローロリス保全センターを立ち上げました。保護された彼らのくらしの向上を図るだけでなく、野生の霊長類が置かれている現在の状況について、多くの方々に知っていただくための活動をしています。

「緑の回廊プロジェクト」は、西アフリカ、ギニアのボッソウとニンバ山の間のサバンナ地区に、幅300m、長さ4kmにわたって木を植えるというもので、ボッソウに住むチンパンジーとニンバ山に住むチンパンジーとの往来を可能にすることを目的としています。

霊長類を知ることはヒトを知ること

私たちヒトも霊長類の一種です。最も近縁な動物であるヒト以外の霊長類を知ることは私たち自身を知ることにつながります。

園内をめぐりながらの「スポットガイド」(2022年2月現在休止中)やオンラインガイドでは、担当の飼育員が、さまざまな情報を提供しています。学校などの団体向けには、約200人収容のホールで行われる、学芸員によるレクチャーをはじめ、さまざまな学習プロブラムを用意し、幼稚園から大学生や教員まで、多様な学習目的に対応しています。

毎年、土日に開催される、プリマーテス研究会では、研究者や大学生、中高生や一般の方々の研究発表の場を提供します。その他、学生実習の受け入れや研究者との連携研究も行っています。

博物館資料

設立当初から、日本モンキーセンターでは、霊長類を知るために資料の収集を続けています。園内の霊長類が死亡した場合、必ず解剖し、骨格標本や脳や内臓、剥製など、多数の標本を作製し、保管してきました。これは、飼育霊長類のコレクションとして、世界最大級を誇ります。さらにGAIN(大型類人猿情報ネットワーク)と呼ぶ個体情報データベースも作成しています。こうした資料は、ただ保管しているだけではありません。研究や教育、博物館の展示に活用することで、新しい発見につながります。

京都大学との連携

京都大学の霊長類学:ワイルドサイエンス・リーディング大学院(PWS)は霊長類をはじめとする、絶滅の危機に瀕した野生動物について、研究、教育、社会貢献を行っています。日本モンキーセンターは、PWSの実践の場としても活用され、大学院生の動物園・博物館実習を日本モンキーセンターで行ったり、PWSの生息地研修に日本モンキーセンターのスタッフが参加したりと、相互交流が実現しています。

モンキーキャンパス、日曜サロンなど、研究者による講演も定期的に行われており、一般向けに科学的に正しい知識を伝えるアウトリーチの実践の場としての役割も果たしています。

雑誌 モンキー

霊長類学からワイルドライフサイエンスへ

創立60周年の記念事業として2016年に復刊した雑誌「モンキー」。新たに副題をつけて「モンキー: 霊長類学からワイルドライフサイエンスへ」というタイトルで生まれ変わりました。山極壽一博物館長の自伝「ぼくはこうしてゴリラになった」の連載をはじめ、子供にも伝わる、わかりやすく面白い誌面作りを目指しています。1-4巻の電子版は、無料公開中です。

国際誌 Primates

世界に向けての情報発信

日本モンキーセンターが発行している学術誌 Primates (プリマーテス)は、霊長類学の分野で最も歴史の長い国際学術誌です。1957年に京都大学の今西錦司が中心となって創刊して以来、世界の霊長類学をけん引してきました。日本霊長類学会の準機関誌であり、国際的にも高く評価され、現在、Springer Natureとの協力により出版を行っています。