1.開催日時 :2020年 1月 18日(土) 13:30~16:40
2.会場:静岡商工会議所 401 会議室
3.出席者:参加者総数 41名
4.シンポジウム内容 (要旨)
(1) 13:30 開会 :司会 松村皐月(SOVA)
*開会挨拶:SOVA 会長 原 義廣
SOVAとして市民の皆さんとジェンダーの実情を共有し、議論を通して、その方向性が絞られていければと期待しています。
*JICA中部所長:長 英一郎 様
静岡県の皆様が、東海地区においてもJICAに対する理解が深く、その活動が活発であることにJICAを代表して、感謝しております。日本のジェンダーギャップ指数が世界において、121位(151か国中)であることをふまえ、このテーマは国連のSDGsでも注目されている問題で、今日の議論を楽しみにしております。
*静岡県地域外交局参事: 栗田直尚 様
静岡県から現在200名のJICAボランティアがさまざまなテーマで世界各地で活動しています。静岡県民にとって、ジェンダーの問題点は理解されているとはいえず、改善への取り組みは十分であるとは思えません。この問題が正しく認識され、県民の皆さんにも進むべき道がどうあるべきかということを勉強する良い機会になってほしいと思います。
(2)基調講演(概要): 日本大学講師 川口 さつき氏
-その変容と “何が問題になってきたのか” を考えるー
前近代の概念: 家という単位 (職+住) と考えられてきた
近代の概念: 公共領域(職域・・・Economy の原理で動く)
男:Paid Workー家庭領域(住域・・・Life の原理で動く)
女:Unpaid Work 第2の性(ボーボワール) 2級市民
*大学生と接してきて(2010年代)
男女平等への偏見のなさを実感
行き過ぎたフェミニズムへの抵抗。 サイレントマジョリティーの意見尊重。
性別役割分業の意義と合理性
*ジェンダーギャップ 世界 121位
政治、経済、教育、健康 などの指標として評価されたものであるが、教育、健康などの分野においては、そんなに下位ではない。
*歴史的に日本では:1970年代は女性が一番家庭に入った。
高度経済成長の担い手として
男: 日本型雇用 100% 労働者
女: 日本型福祉 100%家事労働者
2000年前後:フェミニズム離れ、 ジェンダーフリーの考えが台頭
*性別役割分担の問題点
男: 男らしさ・・・・・・
女: 女らしさ・・・・・・
これが、社会のさまざまな分野で社会通念として、暗黙のコンセンサスがあり、社会隅々まで浸透してきた。
Q&A:
Q:ジェンダーとは何か?
A: Sex: 生物学的特徴をもって、男、女が区別される。
ジェンダー:社会的、文化的に作られた性のありよう。男らしさ、女らしさ、性規範、性役割
ジェンダーに対する人々の受け止め方:
求心型: 規範に対して肯定的態度
遠心型: 規範に対して否定的、反発的態度
日和見型: 規範に対してケースバイケースの対応で、日本人に多い
(3)パネルディスカッション(要旨)
*大石(コーディネータ)
国連SDGs の理念から、このセッションの方向付け
長友佑都選手の海外(トルコ)で家庭を持ってからの変心と家庭への愛情
元国連UNHCR代表・緒方貞子氏の挑戦 女性だからできた国連改革
*児玉 氏(トルコの場合)
イスラムの教え、宗教的規範に由来する男女の役割分担はあるものの、子供は社会で育てるという通念に何の抵抗もなく、日常生活の中に、定着している。
バスの中で、幼児が乗客に抱きかかえられ、乗客皆の席を一周した。
弱いもの(子供、女性、老人)を守ろうとする生活習慣は学ぶべきものがある。
*パルマ・パメラ 氏(フィリピンの場合)
女性の社会的進出(政治、経済)では日本より女性の役割が大きい。
教育の分野でも、女性の方が、高学歴者が多い。
子供は家庭で親族がケアしてくれるし、家政婦に面倒を見てもらうことに抵抗がない。
従って女性が外で働ける
*木下 氏(モンゴルの場合)
元々遊牧民族として家族(職と住)は一体化して、男が家業(遊牧)を継いだ
女性(次男以下も)は職を求めて都会に出るので、学歴や職域での地位は高い。
現在私は子供の父親として主夫をしている。
モンゴルで男女の差を感じない環境を見てきたこともあり、ごく自然に主夫をこなしている。(役割分担している)
*齋藤 氏(フィンランドの場合)
便利な技術(IT技術)はふんだんに使われていて、男女の差なくオ-プンである
子供、女性、老人へのケアー、公共的場所での国際化、ITの利用、リラックスした場の提供(福祉の充実)
男女を意識することなく、男女平等が社会に定着し、ジェンダーギャップを感じさせない社会環境が大事だと思う。
教育投資の充実
*堀澤 氏(ラオス・ミャンマーの場合)
敬虔な仏教徒の国であるが子育ては社会で・・・が定着
ラオスはグローバルジェンダーギャップ指数で43位と高い
ミャンマーは軍事政権から民主化国家に転換後間もない国であるが、グローバル
ジェンダーギャップ指数83位と日本より高い。
女性指導者(スーチー女史)の国であり、新国立博物館の館長も女性。
Q&A:
Q: 各国のジェンダーギャップは日本より上位。 アジアの発展途上国でも日本より、上位にあるのはなぜだろうか?
A: 日本の政治、経済、社会、文化における考え方が長く続き、また成功してきた面がある。
Q 極端な例として、男は早く死んだ方がいい。
長年役割分担してきて、急に介護の仕事をやれといわれてもできない。
A: ジェンダーギャップ指数の問題はあるかもしれないが、もっと身近な問題として、とらえたらどうだろうか。
ジェンダーギャップを具体的に私たちがどんなところで感じているのか。私自身はあまり男女の差を感じていないし、不自由していない。
Q:フィリッピンではいつごろから女性の政治的、社会的進出が進んだのか。
A:家政婦が家にいても違和感がないというという社会的文化的面があると思う。また教育面や女性のリーダー(政治家)が多く出てきたこともあると思う。
A:教育の問題は大きい。 もっと教育投資また社会環境の 違いは大きい。
A:発展途上国のいい面が出されたが、不都合な実態もたくさんある。
ジェンダーギャップ指数にあらわされない要素もたくさんあると思う。Role Model を考えて日本のこれからの在り方を考え、キャッチアップしていくことがいいのではないか。 例えば、緒方貞子さんのような生き方。
(4)総括コメント: 川口 氏
日本の福祉問題が個人単位から、福祉政策単位に代わってきたという社会的背景の変更はこれから、大いに日本が変化していくことになるだろう。それに伴い、ジェンダーギャップの問題もおのずと変化していくと思います。今日の議論で私自身もたくさんのヒントを学ばせてもらいましたことを感謝いたします。
ありがとうございました。
以上 (文責:事務局 池田)