廣田 誠 先生 京都大学医学部口腔外科主任教授
【抄録】
外傷による歯の喪失は上顎前歯部に多く,審美部位であるためインプラント治療がしばしば選択されます.しかしながら,著しい顎骨の吸収・萎縮がある場合や受傷前の上下顎間関係に異常がある場合には欠損部のインプラント治療のみでは治療が十分ではない事があります.顎骨の吸収には古くから骨造成が広く用いられており現在も予知性の高い術式であると考えられますが,骨の高さを増やしたい場合は軟組織の状態も含めて考えると容易な治療ではありません.歯槽骨延長術は軟組織の延長も期待できる術式ではありますが,術式が煩雑であり且つ延長方向の調節が難しいです.また上下顎間関係に異常がある場合にはこれら骨造成術を実施してもインプラント埋入が困難である場合が少なくありません.上顎骨形成術や歯槽骨骨切り術は骨量の造成には寄与できないものの,上下顎の咬合関係を改善できる治療であり,特に外傷後のインプラント治療においては埋入を比較的容易にするための一工夫として適応を考慮しても良い術式と考えられます.本講演では外傷により上顎前歯を喪失した症例において,高度の顎骨萎縮に加えて生来あるいは外傷による骨格性の問題を有する症例に対して骨造成手術と骨切り手術を併用したインプラント治療を紹介し,外傷による前歯部欠損症例に対するインプラト治療について考え,近年発展しているデジタルインプラントロジーとの併用についても考察を加えて紹介させていただきます
【略歴】
1998年 日本大学松戸歯学部卒業
2002年 横浜市立大学大学院医学研究科修了
2002年 横浜市立大学医学部口腔外科助手
2004年 同講師
2006年 ドイツ、エアランゲンーニュルンベルク大学歯学部口腔顎顔面外科 留学
2007年 横浜市立大学医学部口腔外科准教授
2012年 アメリカ、カリフォルニア大学ロサンゼルス校歯学部ワイントロープ再建生体工学研究所 留学
2019年 横浜市立大学附属市民総合医療センター 歯科・口腔外科・矯正歯科 部長
2024年 京都大学医学部口腔外科主任教授