研究計画
2020年度(1年目)
1年目は、学修成果の可視化や大学教育改革の成功事例として挙げられる大学数校の学生を対象に、全研究委員が分担して「大学の何が学生自身の学びを深めたか」を大きな問いとして、学生の学びを対象とする学習研究の視座からインタビュー調査や行動観察等を用いたマルチサイテッドエスノグラフィーを援用した質的研究を行います。この研究方法を用いることによって、複数の調査地である大学に埋もれてしまった大学教育の効果や、学生の学びに関する事実を明らかにすることを試みます。同時に、分析の視点を洗練させる目的から、大学教育を広く扱う学会(大学教育学会、日本高等教育学会、日本教育工学会、大学行政管理学会等)の論文、学会発表等における質的研究事例を網羅的かつメタ的にレビューします。2020年度課題研究集会では、これまでに明らかとなっている大学教育における構造化された質的研究の実践知に関する知見をメタレビューの成果とあわせて報告し、研究委員会と学会員でディスカッションを行う予定です。
2021年度(2年目)
2年目は、1年目に得られた成果を踏まえ、複数の大学で調査して得られた知見同士をつきあわせて、どのようにして知見が具体的に活用し得るのかに焦点化し、調査・分析を進めます。これにより、大学教育分野における学習研究への応用可能性が探られ、大学教育を対象とした構造化された質的研究の実践知の活用可能性が検証されるものと考えます。さらに引き続き、近接する教育学、心理学、社会学の学問領域における質的研究の議論の整理も行います。以上の成果を、2021年度課題研究集会で報告する予定です。
2022年度(3年目)
本課題研究の最終年度は、これまでの成果を、大学教育学の学習研究としての学術的知見へと位置づけて総括します。また過去2年間に収集・実践した大学教育を対象とする質的研究法に関する「調査手法」と「分析手法」について、本学会員の質的研究ニーズ(森・山田・上畠, 2019)に合わせてワークショップ型研修を通して還元していきます。2022年度課題研究集会では、当該研修の成果の報告とあわせて、2年9か月に渡る本課題研究の成果報告を行う予定です。
※本研究計画は、課題研究に申請した段階のものであり、研究の進捗状況に応じて変更することがあります。