心理学科生のスキル

心理学を学んだ後に就職する場合、どのような選択があるでしょうか? 
心理学科を卒業したからと言って、その専門性が直結する仕事は限られています。心理臨床の現場であれば、臨床心理士、公認心理師が資格認定されているので、分かりやすい専門職と言えます。目指している人も多いことと思います。ただし、狭き門であることに加え、適性があります。

 大多数は一般就職になります。心理学がダイレクトに活かされる仕事、言い換えれば心理学科卒に限定して募集する仕事はほぼありません。いわゆる文系の学科においては似たりよったりです。そこで、心理学の学びを将来の仕事に結び付けるためには、心理学を専門として学びながら社会人基礎力を高める必要があります。社会人基礎力はどんな仕事にも転用可能な力の事です。

 では、心理学を専門として学んでも仕事に関して直接的な意味はないのでしょうか?

そんなことはありません。心理学には、心理学ならではの専門性があります。他の学問分野にはない特徴とは、構成概念を扱うことです。心理学以外の科学は物理的に測定可能な現象を扱います。一方で、心理学は人格、動機、記憶、思考、知覚、感情など人の心の中で起こる現象を扱います。これらは物理的実態として捉えることはできません。

 そこで、このような構成概念は、質問紙を作って調査したり、刺激を提示して反応をみる実験を行ったりすることで調べられます。このような心理測定技術と、これを評価に結びつけるスキルは心理学が最も専門性を表していると言えるでしょう。計測したい心の働きについて、質問紙を作ることができる、実験プログラムを組むことができる、得られた結果を統計処理できる、それらを概念に照らしながら解釈できる、これらが身につけられれば専門的な能力として誇ることができます。
 良い問題に着眼し、これらのスキルを駆使して解決できれば、自ずと仕事に結び付くことでしょう。心理臨床の現場に限らず専門性の活かし方は、問題設定するあなた次第で変わってきます。

※構成概念

観察可能な行動から推論したもので,事象を統合的に説明したり予測するのに用いられる。つまり構成概念それ自体は観察できないが,観察できる行動をそれによって説明できるという理由で想定されているものである。たとえば「心配」はそれ自体は観察できないが,悩み,不安感のような情動の高ぶりを生じさせる心的メカニズムと想定される。