岩城式
岩城農場は省力化につながる新たな栽培技術の開発を進めています。
【水稲】岩城式乾田直播(かんでんちょくは)
移植水稲は育苗に多くの手間がかかります。育苗を必要としない栽培技術として直接ほ場に種をまく直播(ちょくは)栽培があります。直播には湛水(たんすい)直播と乾田(かんでん)直播があります。これまでの技術ではどちらも専用の農機が必要でした。
岩城農場は専用の農機を必要とせず、地域の土壌(黒ボク土)に合わせた乾田直播を考案し、2024年より試験栽培を行っています。
岩城式乾田直播の作業手順(2024年版)
【4月中旬】 代かき(荒代・中代・植代)(代かきにより黒ボク土の保水力を向上させ田面の均平を行う・大豆跡のほ場のため代かきを3回行う)■2024/4/10~4/20済
【4月下旬】 田面乾燥後、ロータリーで深さ5cm程度で浅耕(なるべく代かき層を壊さない)■2024/4/28済
【4月下旬~5月上旬】 麦などで使用する一般的な播種機を使用し浅耕しながら条間24cm播種深度2~3cmで播種 ■2024/5/6済(とちぎの星種子6kg/10a・乾田直播用肥料同時施肥)
【5月下旬】 ハイクリブームで初期除草剤散布 ■2024/5/21済(マーシェット乳剤500mL・100L/10a)
【5月下旬】 苗が2葉期程度になったら入水開始 ■2024/5/28済
【6月中旬~6月下旬】 雑草の状況を見て中後期茎葉処理型除草剤をハイクリブームで散布 ■2024/6/19済(バサグラン液剤500mL・100L/10a)
【6月下旬~7月中旬】 病害虫予報を確認して予防の殺虫殺菌剤を散布(ハイクリブーム、または、ドローン)
【7月下旬~8月上旬】 穂肥(ハイクリブーム、または、ドローン)
【8月下旬】 病害虫防除(ハイクリブーム、または、ドローン)
【9月下旬~10月上旬】 収穫
岩城式乾田直播のメリット
直播専用の農機を必要としない
黒ボク土でも保水力を維持できる
ほ場が固いため、播種後もトラクターでほ場に入り畦畔の草刈りができる
代かき後、田面乾燥したほ場(植代後8日目・30a・水田雑草対策として大豆跡のほ場を選択)(2024/4/28)
乾燥した田面をロータリーで浅耕(2024/4/28)
浅耕したほ場(2024/4/29)
一般的な播種機で播種(条間24cm・種子6kg/10a・直播専用肥料同時施肥)(2024/5/6)
播種時も浅耕(2024/5/6)
播種深度2~3cm(2024/5/6)
キヒゲンR-2フロアブルで種子塗抹(品種はとちぎの星)
直播専用肥料を播種同時施肥(30kg/10a)(基肥に食品リサイクル肥料200kg/10a)
播種したほ場(2024/5/6)
出芽(2024/5/19)
出芽後、初期除草剤をハイクリブームで散布(2024/5/21)
入水開始時の苗の様子(2024/5/28)
入水開始(2024/5/28)
入水中(2024/5/28)
入水完了(入水開始当初は、水を入れ続けないと半日で水が切れてしまった)(2024/5/28)
トラクターでほ場に入りスライドモアで畦畔の草刈りが可能(2024/6/1)
播種後1カ月頃の苗(2024/6/3)
播種後40日頃には朝止水しても、夕方まで湛水が維持できるようになった(移植栽培同様に毎日入水しているのみで特別なことはしていない)(2024/6/16)
スライドモアでの畦畔草刈り2回目(2024/6/17)
1年生雑草が目立ってきた(2024/6/19)
梅雨入り前にバサグラン液剤をハイクリブームで散布(2024/6/19)
1年生雑草は枯れた(2024/6/21)
湛水を再開(2024/6/22)
稲の様子(2024/6/26)
左:2024/5/6 直播・とちぎの星
右:2024/5/19 移植(4/28播種)・コシヒカリ
根の様子(2024/6/26)
左:2024/5/6 直播・とちぎの星
右:2024/5/19 移植(4/28播種)・コシヒカリ
【大豆】無培土狭畦栽培(むばいどきょうけいさいばい)
一般的に大豆は、6月に条間70cmで播種をし、7月に中耕培土(ちゅうこうばいど)という作業をします。中耕培土は除草や倒伏防止などの効果がありますが、作業に多くの時間がかかります。
岩城農場は作業負荷軽減のため、大豆播種時の条間を狭くし中耕培土を行わない「無培土狭畦栽培」という方法で大豆を栽培しています。
2019年と2020年の2年間試験栽培を行い、ハイクリブームによる茎葉処理除草剤の効果や倒伏状況、収量の結果から条間を50cmに決定し、2021年から無培土狭畦栽培に全面移行しました。
この栽培技術は近隣農家より多くの問い合わせがあり、地域で普及が拡大しています。
無培土狭畦栽培のメリット
作業負荷の大きい中耕培土を省略することができる
中耕培土によって生じる畝がないため、薬剤散布や収穫がしやすい
中耕培土した場合と収量も品質も変わらない
条間を50cmとした理由
50cmより広いと雑草が生えやすい
50cmより狭いと、生えてしまった雑草の除草時に条間を歩きにくい
10条の播種機(ニプロ製・作業幅240cm)のシャッターを一つ飛ばしで閉じて利用すると、種子ホッパー1つにつき1条で播種できる
大豆コンバインで3条刈りできる(条間70cmにすると2条刈りになる)
播種(6月下旬~7月上旬)
7月
8月
9月
収穫(11月~12月)